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幼稚園時代の思い出2 ヒロミちゃんの耳血と靴の中の小石              

幼稚園には、近所の同い年のヒロミちゃんといっしょに通っていた。
ある日の帰り、ヒロミちゃんのお母さんが迎えに来られなくて、
私の母が家まで送ることになった。
母は、教室から出てきたヒロミちゃんの耳から血が出ているのを見つけた。
担任の西村先生にそのことを告げると、先生も心配して、
家の近くの小さな医院までいっしょに行くことになった。
幼稚園を出て間もなく、私の靴の中に小石が入っていることに気がついた。
痛い。気になる。
立ち止まって石を出したい。
しかし、母と西村先生は、ヒロミちゃんのことを心配しながらずっと話をしている。
ここで言えば、私が気を引こうとしていると思われないか。
耳血に比べたら大したことじゃないし、笑われないか。
そう思って、我慢して歩いた。

裏通りにある小さな医院に着いた。
母と私は外で待ち、西村先生とヒロミちゃんだけが中に入った。
間もなく診察が終わって、先生とヒロミちゃんが外に出てきた。
ヒロミちゃんの耳血は奥からのものではなく、おそらく自分でひっかいたのだろうということで、ホッとした空気が流れた。

そこで私はやっと母の手を引き、靴に石が入っていることを言った。
母は私に向かって、「それくらい家まで我慢しなさい」といい、西村先生と笑った。

幼稚園からの道のりは遠く、葛藤の中、
ここまで我慢してきた幼児心も知らないで。
悔しくて悲しい思い出である。

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