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【著作権02】どんなものに「著作権者」が存在するのか?パブリックドメインとは?

著作権者が存在する創作物、というのはどんなものでしょうか。

自由に使ってよい画像を探して、「パブリックドメイン」と言う言葉にたどり着いた人もいるでしょう。「この画像は、自由に使っていい『パブリックドメイン』画像だから、著作権者はいない!」...本当でしょうか? 

実は、パブリックドメインかどうかは関係なく、基本的には「人間が作った全ての創作物には著作権者が存在」します。(パブリックドメインの解釈にはいくつかの立場がありますが、今の日本では基本的にはこう言ってよいと思います。)

全ての創作物に自動で生まれて消えない権利

整理していきましょう。

前回の記事で、「日本ではベルヌ条約に加盟していて、無方式主義をとっている」ということをチラッとだけ書きました。この詳細は長くなるので書きませんが、大事なポイントは、このことによって、「創作意識を持って何かを作った瞬間、申請など手続きを行わなくても、その作者に著作権が生まれる」ということです。例えば、スケッチブックに簡単に描いたスケッチでも、そこに創作意識とオリジナリティさえあれば、描いた人には、描いた瞬間、自動的に著作権が生じるわけです。

著作権(広義)には、大きく、財産権(狭義の著作権)と著作者人格権が含まれます。財産権は手放すことができますが、人格権は、創作者そのものに結びつき、完全に手放すことはできません。その人が作ったという歴史的事実は変えられない、ということもあります。

(著作者人格権の一身専属性)
第五十九条 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。

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財産権は、複製する権利(いわゆる「copyright」の語源ですね)、上演・上映・放送・展示する権利、貸与する権利や、翻訳・編曲・映画化などで二次著作物を作る権利、その二次著作物の利用に関する権利...などなど、とにかく利益とかお金に関係ありそうな権利です。

人格権は、公表権(公表するかどうか、するとしたらいつどうやってするか決める権利)、氏名表示権(名前を出すか出さないか、出すとしたら実名かペンネームかなど決める権利)、同一性保持権(無断で改変されない権利)、名声・声望保持権(作者の名誉を害するような使い方をされない権利)などです。

パブリックドメインとは

権利がなくならないとしたら、じゃあ、「パブリックドメイン」とはなんなのか。

「パブリックドメイン」とは、著作権(特に狭義の著作権:財産権)が消滅している、または主張されない状態にあることをいいます。(加えて氏名表示権など人格権の一部も同じ扱いになることも多いが、この辺は議論もある)。パブリックドメイン化するのは、主には、以下のいずれかの理由によります。(他もあり得ますが、多くは以下だと思ってよいです。)

1. 保護期間の満了
日本の場合は、著作者の死後70年をもって、保護期間が満了する。(2018年末に法律変わってるので微妙なとこですが、新しい法律では70年です。)

2. 著作権者による権利の放棄
権者が「権利を主張しません、だれでも自由に使ってください」と宣言している場合。

Wikipediaの画像には、ほぼだいたい、ちゃんと権利情報が載っているので、参考にしてみましょう。

例えば、この松尾芭蕉の絵は、17世紀に作られた、と書いてありますね。古い作品なので、パブリックドメインになっている(それもちゃんとここに書いてある)のですが、「作者のMorikawa Kyoriku (1656-1715)さんが亡くなってからどれくらい経っているか」ということが大事なんですね。(ちなみに作者がわからない時は、作品が発表されてから70年で保護期間満了になります)

ではこちらはどうでしょう。

これは、同じパブリックドメインでも、権者が権利の放棄を宣言している場合ですね。

創作者の「心」を永遠に守る

上記のようなパブリックドメイン画像は、基本的に財産権としては放棄または消滅しているものですので、自由に使って大丈夫ですが、先述のように、著作権の中には著作者人格権という、そのすべてを放棄することができない権利があります。財産権は「お金」、人格権は「心」を守る権利です。お金が創作者に還元されなくなっても、心を守る権利は完全にはなくなりません。

(著作者が存しなくなつた後における人格的利益の保護)
第六十条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

その人が、自由に使う権利を周りに与えても、亡くなって何年経とうとも、創作者としての意や人格を害するような使い方をしてはいけない。悪意ある改変を行ったり、作者名を偽ったりしてはいけません。創作者の尊厳は永遠に守られるべきである、ということを忘れてはいけないのです。

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ちなみに、ある作品の著作権者がわからなくなっても、その作品は自動的にパブリックドメインにはなりません(その場合、発表後70年経てば、パブリックドメイン化しますが)。自分の手元にある画像の著作権者が分からなくなった場合どうなるのか、という話は、また今度します。

表示しなくてもいい、だけど、表示してもいい。

余談ですが、私は、パブリックドメインの画像でも、作者が分かっている場合は、可能な限り著作者表示をします。それには2つ理由があります。パブリックドメインの作品は、慣習的に著作者を表示しなくてもよしとして扱われることも多いですが、表示しないことによって著作者人格権を損ねている可能性がないとは、言い切れないと思うからです(実際これは議論のあるところです)。そして何よりも、表示することが、私なりの、「創作をする人」に対するリスペクトだからです。





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