マインドワンダリング部副部長

ふーわふわふーわふわ

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卒業文集

 「おい,隆信。卒業文集出してないの,あとお前だけだぞ。」  クラス委員を名乗る男が俺にそう告げた。卒業文集とは,中学校3年間を通して最も思い出に残るエピソードについて書く作文のことである。とはいえ,俺は中学校3年間の思い出なんてない。全て忘れてしまったのだ。  時を遡ること1週間,俺は記憶喪失となった。起きた瞬間,自分が何者であるのか,自分がどんな奴とつるんでいたのか,まるで忘れてしまっていた。俺が生きてきたこの15年間は,俺の中でなかったことになったのである。2月の下旬に

    •  これは,就職活動で渋谷にきていたときの出来事である。  私はこの渋谷という街が好きだ。髪の毛,服装,メイク,所有物などに工夫を凝らして,思い思いに自己を表現している。そのように外見的な多様性が溢れる中でも誰かが誰かに突っかかるということはなく,各々が自らの生活に没頭することに必死だ。このように,皆が他者に無関心で,個人がどこまでも自由な状態でいられるのが,渋谷という街である。  そんな渋谷のシンボルの一つであるハチ公銅像は,巨大で迷宮と呼ばれる渋谷駅にて人と落ち合うための手