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進化するセルフ・コンパッション(MiLI通信より転載)

MiLI通信読者の皆さま、カリフォルニアからこんにちは!
木蔵(ぼくら)シャフェ君子です。

7月帰国の際には、SIY会場開催(東京)、SIY福岡同窓会など、9周年を迎えたSIYの素晴らしさ・ありがたさを、ご参加の皆さまと改めて全身で感じる経験をさせていただきました。そして、去る7月15日には監訳させていただいた『自分を解き放つセルフ・コンパッション』(クリスティン・ネフ著、英治出版)が出版の運びとなりました。


前作『セルフ・コンパッション』からさらに進化

彼女の前作『セルフ・コンパッション』は、まず自らの苦しみに向き合うことの大切さを見事に伝え、自己犠牲を尊ぶ日本でも大きな反響を呼びました。
私も一読者として大変感銘を受け、彼女の十週間プログラム「マインドフル・セルフ・コンパッション」も受講したほどです。
ですから「セルフ・コンパッションについては、これ一冊で事足りるのでは」と思いながら、新書『Fierce Self-Compassion』がアメリカで出るとすぐ読んで、またまた大きな気づきを得ます。

そこには、セルフ・コンパッションをより持続可能にそして本来パワフルな心のエネルギーとしていく、いわば「セルフ・コンパッションの進化系」が示されていたのです。
すぐにつてを辿ってネフ博士に連絡し、『自分を解き放つセルフ・コンパッション』として、日本での出版の橋渡しと監訳をさせていただくことになったのです。

真のセルフ・コンパッションは「優しさ」と「強さ」を併せ持つ

ベトナムの名僧ティク・ナット・ハンも「コンパッションは動詞である」と言い、MiLIとのつながりも深いコンパッションの世界的指導者ジョアン・ハリファックス博士も、Strong Back, Soft Front(しっかりとした背中、柔らかな前側)とコンパッションの在り方を表現しています。セルフ・コンパッションにもこれらはそのまま当てはまります。
本当の優しさには、揺るぎのない強さが根底にあり、本当の強さには人を傷つけず守る優しさがあり、私たちは直感的に、コンパッションの本質が優しさと強さの統合であることをわかっているのです。
ネフ博士は科学者であると同時に長年の仏教実践者でもあるため、本書では強さと優しさの非二元的アプローチを、①具体的なストーリー、②科学的裏付け、③さまざまな実践法の3つ巴で読者をしっかりとサポートしてくれます。(音声ガイドによる実践は、日本語でもご準備しました)


MiLIの願いーセルフ・コンパッションは小さな、着実な社会改革

本書では特に、社会にあるバイアス、特にジェンダーバイアスに対して優しさと強さのセルフ・コンパッションを活かすことが提言されています。
「女性は不公平や理不尽に際して、怒ってはならず、いつも感じ良く穏やかでいること」「男性は怒ることは許されても、悲しみや涙などを見せてはならない」「女性は本来は男性リーダーの補佐が向いている」「女性リーダーの補佐をしている男性は弱い」など、改めて文字化すると、ジェンダーバイアスの不条理や有害さがより明らかになりますね。
社会が変わるのを待っていては遅すぎます。このペースでは私たちや子供の世代までも間に合いそうにありません。
しかし、女性、男性のみならず押し付けられた性役割のために自分の価値観を抑圧されているすべての人が、セルフ・コンパッションの強さと優しさ、両方によってエンパワーされれば、個人が自分のために状況を変える勇気が芽生え、本来の力が発揮でき、社会にも公平性や寛容さが可能になってきます。
セルフ・コンパッションは個人の問題であると同時に、その影響は周囲やコミュニティ、ひいては社会や文化に浸透していくのです。
強さと優しさのセルフ・コンパッションを培うことは、この点において着実な社会改革なのです。

まずはご自身の生きづらさを変容するためで良いのです。強さと優しさのセルフ・コンパッションで自らの苦しみを成長へと変容させていただけることを心から願っています。

木蔵シャフェ君子


『自分を解き放つセルフ・コンパッション』
木蔵による序文を含め、0−48ページをこちらでご覧いただけます。


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