夏と先輩と油

高校生になったら、ずっと暗くて面白みのなかった自分から脱却して、素敵な人と恋をして毎日を謳歌したいと思っていた。

最初のうち、その変身願望は随分とうまくいってクラスメイトにも3枚目キャラで接したり、とことん自由でいたことでいじめなどにも合わず、適当にクラスメイトに紹介された男の子と付き合ったり、ひととおりの経験もした。正直言って初めてのエッチはただ痛いだけだったし、その時の彼のことをほんとに好きだったのかと言われたら疑問符しか出ない。好きだよ好きだよと言われながら腰を振られる度、私はいつも白けていた。彼からも肉欲うえの好きしか感じ取れなかったから。

私の心にいつもいたのは、アキラ先輩だけだった。アキラ先輩と恋ができるなら何を失っても良いと思っていた。

中学時代の幼なじみに誘われて入部した美術部にアキラ先輩はいた。緊張する私に、俺と髪型似てるねとか、妹のように可愛がってくれる先輩に私はあっという間に恋に落ちた。もちろん明るくてカッコいいアキラ先輩を狙ってる女の子は他にもたくさんいて、私は肉食ばりなアタックをしていたから憎まれてハブにあったりもした。でも、私は女子のハブよりアキラ先輩とのじゃれあいを取った。

この恋が終わったとわかったのはあっけない理由だった。朝早く美術室に行ったときに顔を赤らめた地味だけど美人な女の先輩とアキラ先輩がキスしていたから。

油絵具の匂いにまみれながら、2人は仲睦まじく密着し、私を見つけた途端、少し焦りでも彼女を守るように照れ臭そうに内緒な!とアキラ先輩に言われたとき、私は泣くのを堪えながら分かってますよーう。もうラブラブですね!と言って静かに去った。

アキラ先輩。勇気がなくて好きと言えなかったけど、大好きでした。

あなたは私の青春そのもの〜♫

涙しながら口ずさんだユーミンの、卒業。

アキラ先輩からの卒業はまだ遠そうだなあ。


#2000字のドラマ

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