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知り合い以上、友人未満

「知り合い以上、友人未満の人に譲っていただくのは、ちょっと気が引けますよね」
馴染みのお店のオーナーの一言と、それに頷く常連達の表情を見て、やっぱりここが好きだなぁって思った。

ここ2〜3年、月に何度か訪れる趣味のお店というか、サークルというか、そういう空間がある。
基本的に社交性が低いもので、趣味を見つけたいなぁと思っても、
「え?一人で来たの?ぼっち?」
って思われないだろうかとか
「初心者歓迎って言ってるけど…本当に初心者きちゃったよ」
なんて思われるんじゃないかとか、
とにかくありとあらゆる自虐的な思考と被害妄想じみた考えが邪魔をして、一歩を踏み出せないタイプだ。

で、その葛藤を乗り越えて踏み出した一歩があまり良い結果にならないと、
あぁ、やっぱりやらなきゃよかった…って、自虐的な気分になり、そんな自分がひどく腹立たしくなる。

そんな私が奇跡的に出会えた空間が、冒頭のオーナーのお店だ。
年齢性別、容姿、仕事、既婚か未婚か、子供はいるかetc.
そういったもの一切関係なく、ただ共通の趣味だけで繋がっている人たち。

付き合いの深さによるけれど、基本的に皆Twitterのアカウントと、お店での呼び名くらいしか知らない。

でも、それでいい。
日常的に纏わりつくあれやこれやを全部忘れて、ただ趣味を満喫する。
そんな空間が好きだ。

なんて言うか、故意にプライベートを明かさないわけじゃなくて、
そんなのここには関係ないでしょ、って関係性が心地よい。

それでも、そんな感じ過ごしていても、長く通っていると顔見知りもできるし、Twitterで連絡を取り合ってお店で落ち合うような関係の人たちもチラホラできてきた。
この人たちとの関係は、一体なんなんだろうなぁ、とぼんやり考える。
趣味友達?まぁ、そうなのだろうけれど。なんかしっくりこない。
そんな風に過ごしていた。

そんなある日、常連の一人が、諸事情で趣味の道具を手放すことになり、譲り先を探している…みたいな話を耳にした。
そこで、冒頭のオーナーの発言である。


『知り合い以上、友人未満。』

なんて的確な表現なんだろうと思った。

もう少し若かったり、趣味作りや友人作りに躍起になっている時期だったら、
「え!オーナー冷たくない?ショック…」
となっていたかもしれない。
でも今の私にとってはそのくらいの距離感がちょうどいい。


来週も仕事は山盛りで、平日は嫌なことも多いかもしれない。
一週間頑張ったら、オーナーと皆に会いに行こう。

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