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ハンサムな男

※画像は友人です

隣の席に座る彼を、こっそり盗み見する。
40代前半と思われるが、実年齢はもっと若いかもしれない。光沢あるストライプの黒ジャケットを纏い、袖口には瀟洒なカフス。台襟ボタンははずされ、開かれた頸筋から麝香とも思しき雄の臭いがする。

四角い輪郭の顔は少し大きめだ。凛々しい太眉にぱっちりした二重瞼の大きな瞳が物憂げに伏せられ、一際目を惹く。唇は一文字に固く結ばれ、形の良い鼻が顔全体を引き締めて見せている。男前ともハンサムとも形容できる、端正な顔立ちだった。

スマートフォンを操作する手背は黒々とした毛に覆われて、強い男性の性を感じさせた。こういう武骨な手が好きだなと思う。上背もある。

抹茶ミルクを少しずつ飲み、肩甲骨をストレッチしながら漏れる溜息が、喘ぎ声のようで艶めかしい。新大坂駅構内のドトールはスーツ姿のリーマンが多い。彼も仕事の休息に来たのだろうか、鞄も持たずに身軽だ。

思いがけず肘が当たってしまい「すみません」と謝ると、「こちらこそ」と返してくる。その柔らかな声のトーンが心地よく響いた。小説のようにここから会話が弾めばよいのだが、そんなことはなくまた淡々と抹茶ミルクを飲んでいる。

10分ほど隣で過ごしていたが、グラスが空になると帰り支度を始めた。もう帰るのかと何となく名残惜しく思っていると、「では」と声をかけられて会釈を受けた。

ついていっていいのですか?と尋ねる前に、颯爽と返却口にトレイを持って向かっていく。
期待を持たせる男は罪だ。

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