生成AIについて、私が思っていること

まず始めに。私は推進派でも、規制派でもありません。
ある部分では規制派ですが、その他の部分で推進派です。

この生成AIという分野は、そういう一つの部分のみでは語れません。

この記事では、日頃私が生成AIについて、そして生成AIに対するインターネットの反応について考えていることを、振り返りながらまとめたものです。

一部結論が出ていないところもあります。
できる限り中立であることを意識していますが、後述する私の立場上中立になりきれていない部分もあります。

何かが変わってくれれば、なんて大層なことは言えませんが、少しでも良い方向に向かえば良いなと思っています。

私について

生成AIを語るうえで、語り手の立場は非常に重要だと思うので(この記事もそうですが、ほとんどの批判はポジショントークだと思うので)まずは私の立場を明らかにします。

本業はウェブアプリなどを作るエンジニアですが、幼少期から趣味で創作活動をしています。
インターネット活動も映像制作から始め、クリエイターが集まるコミュニティの運営などもしていました。

ちょっと前までは、依頼を受けて作品を制作するクリエイター事務所や、VTuber事務所を運営する会社を立ち上げ、運営していました。

つまり、筆者は「クリエイター寄りの人間」となります。

この記事は、その前提を認識したうえで読んでいただけると、立場がわかりやすいと思います。

生成AI推進派であるか、規制派であるか

冒頭で述べた通り、どちらでもあるし、どちらでもありません。

正直言って、イラスト生成AIとか、映像生成AIとかは害悪だなって思います。
はっきり言って、規制してほしいと思います。

でも私は、仕事で普通にChatGPTやClaudeを使います。Github Copilotも使います。
これらのAIは、理解して使うととても便利だし、ソフトウェア開発って結構パターン化されたコードを書くことが多いです。
(余談ですが、私の働いている会社には、生成AIの料金を会社が払ってくれる制度があり、会社の許可の元利用しています)

既にアルゴリズムが頭にあって、あとはそれをコードに起こすだけ、とか、一般的なパターン化されたことを書き起こすだけ、とか、あんまり考える必要がないところで時間を食うのってもったいないので、ささっと生成させる時は普通にあります。

コードが読めるエンジニアなら、AIが生成したコードが意図したものかなんてちゃんとわかってるし、意図通りでなければAIに伝えたり、自分で直したりできます。

「自分が今何をしているか」がちゃんとわかっていれば、危険はそこまでないし、自分の責任に基づいて使う分には、エンジニアがAIを使うのは良いと思っています。その分プロダクトのことを考えたり、もっと頭を使うことに時間を割くことができますしね。

さて、話を戻すと、私は「イラストや映像の生成AIは害悪だ、規制してほしい」と言いました。
しかし、私は前述した通り、コードの生成AIを使っています。

もちろん、私はコードのほとんどは自分で書きますが、一部であっても使っていることに変わりはありません。
基本的には単純なコードにしか使いませんが、それでも使っていることに変わりはありません。

そして、そこには「学習元になったデータ」が必ず存在するわけです。

それでいて、イラストや映像などのクリエイティブ生成AIは批判する。これはおかしな話です。

まさにポジショントーク、自分はいいけど、お前はだめ。それはあまりに横暴な話です。
これが私が、推進派、規制派、どちらにもなれない理由です。

規制派に対する違和感

SNS上では、#NOMORE無断生成AIといったハッシュタグや、それに関連するキャンペーンが多く存在します。

気持ちはわかります。最近では、マクドナルドが公式で生成イラストを利用した広告を使ったり、ゲームのイラストや動画のイラスト、映像に至るまで多くの媒体で生成AIが利用されています。

生成AIがなければ、ここにはクリエイターが作ったイラストが使用され、そこには仕事や対価が発生していたはずです。
つまり、「仕事が奪われた」という現象が、実際起こっているわけです。

前述した通り、クリエイターとの関わりが多いため、自分の周りでも「仕事が奪われた」話をよく耳にします。実際それで引退を考える声も聞きます。

しかし、規制派のキャンペーンには、違和感を感じることもあります。

まずは、私と同じように、違う分野の生成AIは使っているのに、自分の分野の生成AIは批判する、といった人です。
自分がよければそれでよいのでしょうか?それはちょっと違うのではないですか?

そして、手放しに主に日本政府や企業に対して生成AI規制を望む人です。

先ほども言った通り、気持ちはわかります。ですが、日本が規制したとしても、海外が足並みを揃えなければ意味がありません。
日本企業が使わなくても、どうせ海外がやります。

であれば、日本企業などにはもっと研究してもらって、海外にも対抗できるほどの技術を作ってもらい、クリーンなAIを推し進めるようにしてもらったほうが良いのではないかと思っています。
規制を進めることは、対抗策を失ってしまうことになるのではないかと危惧しています。

実際、日本企業では、クリエイターに配慮したクリーンなAIを作っても、それを批判されて取りやめる、といったケースがあとをたちません。

クリスタがその代表例です。

自分たちで自分たちの首を締めていませんか?
海外には、著作権?なにそれおいしいの?といったAIが乱立しています。そんな中、金を投じてクリーンなAIを研究してくれる会社を大事にするべきではないですか?

はっきり言って、生成AIの研究を止めるのはもう不可能です。ここまで研究が進んでしまった分野を、完全に規制することはできません。
いくら規制を望んだところで、その声が届くことはありません。

ならせめて、海外のダークなAIに戦ってくれる企業を、大切にするべきではないでしょうか?
まだ自分たちの批判だけでこの生成AIという分野を抹殺できると考えているのなら、それは楽観的であると言わざるをえないと思います。

「日本は生成AIを研究するな」という声を耳にしますが、それで海外に遅れを取って、日本に、国民に、クリエイターにどんなメリットがあるのでしょうか?

推進派に対する違和感

もちろん推進派に対する違和感もあります。

まずは、不必要に煽りすぎてはないですか?ということです。

規制派のほとんどの発言の理由は「自分の仕事、アイデンティティが奪われるのでは?」という恐怖のはずです。
その恐怖をきちんと理解できていますか?

自分の仕事が失われるかもしれない。自分が大切にしてきたアイデンティティが奪われるかもしれない。自分が今までの人生の経験を通して培ってきた大切なものの集大成を、感性も感情もないただのプログラムに、ただの「情報」として吸収される恐怖を理解できていますか?

そういった恐怖を理解したうえで煽っているのだとしたら、相当性格が悪いと思います。

SNS上では、規制派の投稿に対して、推進派が煽りまくっている投稿をよく見ます。
本当に胸糞悪いです。腹が立ちます。

生成AIを活用して、新たなクリエイティブの世界を作っているんだ!という投稿も見ますが、そうならそうで黙ってそのクリエイティブをやっていればいいんです。煽る必要なんかないはずです。

生成AIが新しい表現を可能にする。これは否定しません。実際、人間が作れないものを生成AIは作れます。生成AIを活用して新たな表現をしている人も多く見ますし、それは個人的には認めます。

だからといって、人間のクリエイターを否定する権利なんてないし、煽る権利なんてありません。

人間のクリエイターが作ったデータを学習して作られたAIなんです。むしろリスペクトするべきではないですか?誰がその元データを作ったんですか?元データなしにあなたのそのクリエイティブは成し得たんですか?

それにそのAIのプログラムを作ったのも人間です。あなたが作ったわけではありません。すごいのはそのプログラムやアルゴリズムを作った人です。

もちろん、そのAIを活用して新たな表現をするあなたも、すごいかもしれません。でも、リスペクトは必要ではないですか?

既にリスペクトを持っている人は良いです。これはあなたに向けた言葉ではありません。しかし、一部の推進派の煽りは、本当に目立つし、腹が立ちます。

あとは元も子もないですが、あなたが使っているAIはクリーンですか?という疑問はありますが、これはChatGPTやClaude、Github Copilotを使っている自分にも言える話なので、この話題は後述します。

AIは今後どうやって活用されるべきか

これは私は一つの結論を持っていて、「人類をより後押ししてくれるように使う」のが、活用のされ方の最適解だと思っています。

つまり、AIに頼り切るのではなく、AIの力を使って、自分を高めるのが大切だと思います。

AIに創作活動のすべてをさせる、これはクソだと思います。なんのクリエイティビティもないし、学習データ以上のものは作れません。

ただ、例えば作品にAIが作ったものを組み込むとか、自分の作品を学習させてAIを作るとか、そういった面白いことをするのは、良いと思います。

クリエイティブAIに限ったことを言ってしまいましたが、例えばコード生成AIなら、自分のように、単純作業になる部分をAIにやらせるとか、いちいち作ると割とめんどくさいConfigやREADMEなどの土台部分をやらせるとか、あとは相談しながらディレクトリ構成や命名などを決めても便利だと思います。

AIは「一般的にはこうだよね」をいっぱい知っているので、ベストプラクティスを聞くのはかなり重宝します。

単純なチャットに対して回答するような生成AIも、情報を整理したり、一緒に考えるといった、自分を高める使い方が良いと思います。
調べ物をすべてAIで済ませたり、なんでも考えさせるといった活用は、自分の能力を低下させる一方で、自分を高めてくれる活用方法とは言えないと私は思います。

昨今の生成AI(特に推進派)の言説に思うのは、自分の能力を低下させてはいないか?ということです。

人間は考えられる生き物です。自分の過去の経験から、感情から、いろんなことを考え、学ぶことができる生き物です。

それを、最大公約数的なAIの思考に頼り切りになって、平均化されたクリエイティビティで武装して、自分を低下させてはいないか?と思ってしまいます。

AIはツールです。AIに生成させてそれで満足、だと、同じようなクリエイティブで世界が氾濫します。
私はそういう世界になってほしくないし、そういう人が増えてほしくないです。
もっと、人間の思考で考えられた、ユニークで心躍るものが世界に蔓延っていてほしいし、そういうもので楽しみたいです。

クリーンではないAIにどう対処するか

前述した通り、私はChatGPT、Claude、Github Copilotを使っています。

Github Copilotについては、すこし解釈が難しいのですが、ChatGPTとClaudeについては、クリーンなAIではありません。

つまり、私は「クリーンではないAIを日常的に活用している人」ということになります。

クリーンなAIの実現は、特定分野に限った話で言えばできると思います。

実際、自分の撮影した写真だけ学習させたAIで、存在しない写真を生成するクリエイターや、自分のイラストだけを学習させて、自分だけのイラストAIを作れるサービスも存在します。

ただし、ChatGPTやClaudeなどの、膨大なインターネット上のデータを学習して、質問できるAIをクリーンで作るのは、不可能だと思います。
完全にクリーンなAIだけを使いたい人は、諦めるしかないでしょうね。

こういった、文字生成AIについては、Webの情報を人間が見て学習するのとそう意味は変わらない、といった言説もありますが、これについては、学習元に一切利益が入らないのが問題だと思っています。

学習元と契約を締結して、学習させてもらう代わりに収益を分配するとか、一定額支払うとかも考えられますが、OpenAIも赤字ですし、現実的ではなさそうです。

これに関しては、自分でも結論が出せていません。

最近のWebは、Google検索でもあまり良い記事が上位にこなかったり、長ったらしい説明をする記事ばかりだったり、AIに慣れすぎてしまったのもあるかもしれませんが、サクッと調べたいときにAIが便利なのも事実です。

長いことネットをやってきた自分でさえそう感じるので、若い人はより、AIで調べることが増えていくのだと思います。
そうすると、より収益確保が厳しくなり広告が増え、より見づらくなって、よりAI検索が加速して…..

自分はAIによる検索をあんまり信用してないので、ダブルチェックで調べたりしますが、そういったことも若い人はしないでしょうし、Webはよりカオスになっていきそうです。

話を戻して、「クリーンではないAIにどう対処するか」これはまだ結論が出せていません。そして、人類はこれに対する対抗手段はまだ持っていないと思います。
自分もこれからもChatGPTやClaudeは使っていくでしょうし、これに関しては、元データのおかげで成り立っているのだ、という気持ちは忘れないようにしたいし、AIに頼り切りにならないようにしよう、とは認識していきたいです。

生成AI時代にどう立ち回るか

生成AIは便利です。そしてこれからも進化していくと思います。

今度、iPhoneにはApple Intelligence、Google PixelにはGemini(Gemini Live)が搭載されます。
これらの生成AIはスマートフォン内部の個人情報やアカウントに紐づく情報などを処理して、秘書のように自分の身の回りのことをいろいろやってくれます。

こういった、人生を後押ししてくれるような夢のツールが生成AIです。

一方で、生成AIで自分の作品が盗まれたり、仕事を奪われたりする人がいるのも事実です。
生成AIの進化によって、働き方が変わって、なくなる仕事が増えるのも事実でしょう。

これについては、どれだけ言っても仕方がないことだと思います。
生成AIに限らず、近代化によって、昔あった仕事がなくなったことなんて、いままで人類が繰り返してきたことです。

だからこそ、生成AIや新しい技術を活用して、自分を高めるしかないのだと思います。

今はありがたいことに、エンジニアという仕事をさせていただいています。これは近代化がなければ生まれなかった仕事です。エンジニアがなければ、自分は体力もないし、頭も悪いし、とても苦労していたと思います。
Twitterで「たまたまこの時代にエンジニアという仕事があって、ギリギリ仕事ができているだけのPCオタク」という投稿がありましたが、ホントその通りだと思います。

しかもコード生成AIもありますし、自分もいつ仕事を失うかはわかりません。だからこそ、単純なことはAIに頼って、より考えられて、より価値のある人間になれるよう、自分を高めるしかないと思っています。

要するに、AIとは仲良くするしかないと思っています。

そしてクリエイティブAIについて。自分は自分の力で作品を作るのが好きなので、AIを活用することはあっても、生成してはい終わり、はしません。

見る側について。私は創作物を見るのが好きで、イラストも映像も、音楽も見ます。
私は、AIイラストは見ません。AIイラストレーターは見つけ次第ミュートにしてますし、pixivも除外設定をしています。
どうしてもAIイラストは気になってしまうし、好きになれないからです。

でも、それで良いと思います。AIイラストでも好き!って人も、それでいいと思います。私は合わないからミュートする。私はAIイラストも作らない。イラストの依頼も私はAIを使っている人にはしません。それでいいと思います。

やりたい人はやっていればいい。私は攻撃しないし、そっとミュートするだけ。もちろん無断で学習された人は怒るべきです。でも当事者以外は攻撃しない。不毛すぎるし、誰も幸せになりません。

もちろん、私はイラストレーターじゃないのでこれはポジショントークです。万人に理解してもらえるとも思ってません。
ただ、AIイラスト反対派のクリエイターを見ていると、作品を見たいだけなのに批判に熱心で、ノイズが多くて作品に集中できないな、とたまに思ってしまうことはあります。

生成AI時代、焦ったり、恐怖するクリエイターさんは多いと思います。なので、クリエイターのファンのみなさんは、今まで以上に熱心に応援してほしいです。自分も良いなと思ったFANBOXやFantiaはたくさん入ってます。入りすぎてクレカの請求がやばいです。

自分は、自分なりのやり方で、この生成AI時代にクリエイター活動をするみなさんを応援していきたいと思っています。生成AIを攻撃せず、自分で作品を生み出すクリエイターさんを応援するというやり方で。
こうやって、「生成AIあるからクリエイターやーめた」という人を生み出さないようにしたいです。

なんども書いている通り、消極的だと思われてしまうかもしれませんが、生成AIの進化を止めるのはもう無理だと思います。
だからこそ、ファンの底力も求められてくる時代になったのだと、感じています。

さいごに

生成AIは、生まれて間もないながらも、世界に大きなインパクトを与え続けています。良くも悪くも。

そんな中、インターネット上での議論や、その活用に疑問を感じ、この記事を書きました。

正直、私もまだ立ち回りを理解していません。矛盾を抱えながら使っています。それでも一旦は、現状の立ち回りに落ち着いています。

もしもこの記事についてなにか感じることがあれば、コメントを残してほしいです。みなさんが生成AIについてどう思っているかに非常に興味があります。

最終的に、生成AIと人類が歩む未来がどうなるか、まだわかりませんが、人類の助けとなることを切に願っています。


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