今週のSaaSニュース!🌞-Vol.12(8/2週)

8月に入って暑い日が続いていますが、今月も張り切ってSaaS関連のトピックをお伝えしたいと思います。

今週は、SaaS上場企業のQ2決算祭りウィーク。日米合わせて、26社の決算がありました。Q2は、特にコロナの影響が各社の業績に出てるので、成長率、収益性、リテンションの観点でSaaSセクターによってどのような影響が出ているのか、をみていきたいと思います。また資金調達では、Farmers Business NetworkとRipplingの大型調達の他、Yotpoや国内のheyなどEC関連のSaaSの調達が目立った週でした。

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今週の注目SaaS資金調達ニュース

◆[農業SaaS] Farmers Business Network シリーズF $250M調達 （LINK）

Farmers Business Network(FBN)は、農業に特化したデータ収集・分析するSaaSを提供。ユーザーである農家に対して、農地の地質分析から農作物の収穫高予測など、データに基づいた意思決定を支援する。共同創業者の1人、Charles Baron氏は、General Catalyst、Kleiner Parkins(旧KPCB)のVC出身の起業家としても有名。 FBNは、既に全米の1万2千人の農家がメンバーになっている。本ラウンドは、BlackRockがリードの他、新規投資家でBaron Capital Groupなど、既存投資家の Temasek、GV、Kleiner Perkinsも参加。

◆[HR・IT管理 SaaS] Rippling シリーズB $135M調達 （LINK）

Ripplingは、従業員データ管理を起点に、従業員のオンボード、給与や福利厚生の管理からPCなどのデバイスやSaaSのようなソフトウェア権限管理まで一括して行えるSaaS -従業員データ版Salesforce-を提供。共同創業者兼CEOのParker Conrad氏は、HRtechユニコーンで有名なZenefitsの元CEO。本ラウンドは、Founders Fundがリード投資家で、Kleiner Perkinsなどの既存投資家も参加。SaaSのシリーズBながら$145Mの大型調達で、評価額は$1.35B。

◆[ECマーケティング SaaS] Yotpo シリーズE $75M調達 （LINK）

Yotpoは、EC運営者向けに顧客管理・マーケティングのSaaSを提供。ShopifyがECビジネス構築のSaaSである一方、YotpoはECの顧客管理に特化したSaaS。コロナ前の昨年時点でも、ユーザー数は300％増、ARRも250％増と急成長しており、2021年早々にはARR $100Mに到達する見込み。本ラウンドは、既存投資家のBessemer Venture Partnersがリード投資家。

◆[ECサイト構築・決済SaaS] hey シリーズE 70億円超調達 （LINK）

heyは、キャッシュレス化やECサイト構築のデジタルストアプラットフォーム「STORES」を提供。本ラウンドの調達額は非公開だが、Bain Capitalから70億円を調達した他、Anatole、Goldman Sachs、PayPal、YJキャピタル、及び既存株主であるWiLも参加。今回の調達資金で、ヘアサロンなどのサービス業向けオンライン予約ソフトウェア「Coubic」を完全買収して子会社化。

Eコマース運営などを手掛けるheyがオンライン予約システム運営のクービックの全株式取得、hey本体も70億円以上を調達 | TechCrunch Japan

◆[営業資料作成・締結 SaaS] PandaDoc シリーズB $30M調達 （LINK）

PandaDocは、営業の資料・見積作成をドラッグ&ドロップで作れて、送信、トラック、電子サインまでできるSaaSを提供。Salesforce、HubSpotのようなCRMともちろん連携可能。既にユーザー数2万人を突破。本ラウンドは、One Peakがリードの他、マイクロソフトのCVC M12も参加。今回はエクステンションラウンドながら、当初ラウンドの2倍の評価額で調達。

◆[営業パートナー連携SaaS] Crossbeam シリーズB 25億円調達 （LINK）

Crossbeamは、リセラーなどのパートナー企業とCRMデータを共有し、クロスセルや営業連携を強化させるためのデータ統合・分析を行うSaaSを提供。既に900社以上に導入され、わずか創業2年で売上$60M(70億円弱)を達成。本ラウンドは、Redpoint Venturesがリードの他、Salesforce Ventures、Slack Fund、Okta VenturesなどSaaS系CVCも多数参加。

◆[Insurtech SaaS] Duck Creek Technologies IPO申請（LINK）
Duck Creek Technologiesは、企業向けに保険の請求や支払いなどを管理するall-in-one型のSaaSを提供。累計で$357M調達し、直近ではPEファンド Apex PartnersがM&A。直近9カ月の売上は$153MでYoY+20%で成長。8/14に予定されている上場時の時価総額は、$2.6Bになる見込み。

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今週の主要SaaS上場企業決算

今週発表あった26社の決算について、セクター別に分けてQ1との成長性、収益性、リテンションなどの観点で、コロナがSaaS企業の業績にいかに影響があったか見ていきたいと思います。

■IT管理+C&C(ｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝ&ｺﾗﾎﾞﾚｰｼｮﾝ)分野：10社

IT管理やC&Cは、コロナによるWFH/リモートワークが、特に追い風になった分野です。実際に売上成長率を見ると、Datadog(+68%)、fastly(+62%)、Cloudflare(+48%)、Twilio(+46%)のように高成長を維持している企業が多い結果です。しかしfastlyを除く、全ての企業で、Q1よりは成長が鈍化しています。一方、収益・キャッシュフロー観点ではtalendを除き、Q1並みか、それ以上の結果が出ています。リテンション(NRR)もこの分野に全体的に高水準を維持していますが、New Relic(100%)、Twilio(132%)の2社はQ1に比べ、10pt以上数字を落としています。

■ FMS・HCM（財務会計・HR）分野：7社

いわゆるバックオフィス分野のSaaSは、コロナの向かい風を受ける分野と言われてます。実際に、各社成長は維持しつつも、Q1に比べて成長が鈍化しました。唯一Q1より成長して見えるSquareも、本業のモバイル決済の総取引額(GPV)はSMBの解約等で▼15％の大幅減。ビットコイン売上が+600%成長のおかげで成長を加速できています。一方、収益・キャッシュフローはBlacklineなど早期からコストコントロールをした企業は、Q1より改善しました。リテンション(NRR)も元々高くない分野ですが、悪化傾向にあります。

■ CRM他＋インダストリーSaaS分野：9社

CRMも比較的コロナの向かい風を受ける分野として語られてますが、20%以上の成長率は維持。一方で成長率はQ1より鈍化しています。インダストリーもヘルスケア分野のLivongoが成長を加速してる一方、他は成長が減速気味でした。収益・キャッシュフローは、HubSpotやSurveyMonkey等は向かい風の中でも改善しました。

今週のSaaSおすすめ記事

★Fintech Scales Vertical SaaS（LINK）

昨今米国では、高成長のShopifyやWixなどを例に、SaaS企業のFintech(トランザクション課金)化を唱える意見が増えています。この記事は、ソフトウェアのビジネスモデルの変化と、SaaS企業、特にバーティカルSaaS企業がFintech化することの利点（例.ARPA 2-5倍増）や分野について、a16zが丁寧に解説しています。SaaS起業家の方、VCの方には必読とも言っていい程、おすすめな記事です。

Fintech Scales Vertical SaaS

★Finance As A Service (FaaS)— Tech Stack for Modern Finance Teams （LINK）

日本でも財務・会計などのファイナンス部門向けのSaaSが増えていますが、SaaSが普及する米国でもファイナンス部門はまだまだエクセル依存が抜けてないのが、現状のようです。この記事は、FaaS(Finance as a Service)と呼ばれる決済、給与計算、予算策定などの主要分野のSaaSプレイヤーと勝ち組企業をまとめた記事です。加えてCRVのAnna Khan氏が書いたFaaSの進化と、Exitの魅力を解説した、以下の記事も併せて読むことをおすすめします。
関連記事
● Moving FaaSt （LINK）

Finance As A Service (FaaS)— Tech Stack for Modern Finance Teams

★Growth+Sales: The New Era of Enterprise Go-to-Market（LINK）

昨今のZoom、Slack、Atlassianなど高成長のSaaS企業は、伝統的なハイタッチ営業モデルではなく、Product-ledを起点としたハイブリット営業モデル(Growth+Sales)によって高成長なモデルを作り上げています。この記事は、伝統的な営業モデルの短所とGrowth+Salesモデルの長所、Growth+Salesモデル採用の良くある失敗について解説している記事です。日本では、まだ伝統的な営業モデルが中心かつ有効ですが、今後SaaSが普及する中でより高成長を目指すには、検討に値するモデルだと思います。

Growth+Sales: The New Era of Enterprise Go-to-Market

★Be a Painkiller AND a Vitamin （LINK）

SaaSのMust haveとNice to haveに関するLinkedIn創業者 Reid Hoffman氏のPodcast(Master of Scale)の内容をまとめた記事。トップクラスのSaaSは、顧客の現在のバーニングニーズを解決するMust have(薬)に加え、顧客にとって将来Must haveになる、Nice to have(サプリ)の要素を両方を兼ね備えていることを解説しています。要はMust have/Nice to haveは二元論ではなく、料率するという視点です。前回ご紹介したUB Ventures 岩澤さんの記事にも関連しますが、非常に面白い視点の記事だと思います。（無論、Must haveを必要最低限満たしている前提ですが）

★20VC: LOOM FOUNDER JOE THOMAS ON WHETHER TO TAKE MULTI-STAGE MONEY AT SEED...（LINK）

現在米国で最もホットなSaaS企業の1社である、非同期ビデオコミュニケーションSaaSのLoom。同社創業者Joe Thomas氏の生い立ちやリモートワークの成功の秘訣、Loomを使っていかに効率的にSequoia Capital等から資金調達をしたかを語っていて面白いPodcastです。

※その他 今週のSaaS/スタートアップ関連記事は、こちら

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