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今週のSaaSニュース! Vol.31(1/10週)

2021年最初のSaaSニュースレターです。今年もSaaSを中心としたテック業界のニュースをお届けします。今年もよろしくお願い申し上げます。

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注目!資金調達ニュース

エンタープライズ向け決済SaaS Checkout.com $450M調達@$15B

オンライン決済SaaSというと、評価額 10兆円($100B)のStripeを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?Stripeが個人/SMBターゲットに対し、Checkout.comは、エンタープライズに特化した決済ソリューションをall-in-oneで提供する英国発、世界を代表するSaaS/Fintech企業の1つ。Grab、Revolut、Klarnaなど大手コンシューマテック企業が顧客。2012年創業から今日に至るまで黒字を達成しており、現在のEBITDAは2桁億円を超える。従業員数も2020年1月 440人→12月 940人の大きく成長。2019年 シリーズA@評価額$2B、2020年シリーズB@評価額$5.5Bを経て、本シリーズCラウンドは評価額$15Bで、Tiger Globalをリード投資家に迎え、$450M調達。

Checkout.com紹介動画

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プライバシーデータ管理SaaS OneTrust $300M調達@$5.1B

欧州のGDPRや米カリフォルニア州のCCPAなど、企業の個人情報の取り扱いに関する法規制が世界中で強化されており、企業はこれらの法規制への対応に苦慮している。OneTrustは、企業がこれらの法律に遵守するためのプラットフォームを提供する、創業4年のSaaSスタートアップ。既に7,500社の顧客がを抱え、4半期毎に1,000社の新規顧客が増えている。以前は、年間700以上の展示会を中心に営業していたが、コロナ以降オンラインに営業戦略を切り替えたことで成長を維持。本シリーズCは、評価額$5.1BでTCVがリード投資家で$300Mを調達。

OneTrust紹介動画

ワークフロー自動化SaaS/iPaaS Workato $110M調達@$1.7B

Workatoは、iPaaS(integrated Platform-as-a-Service)、いわゆる自動化系SaaSの大手スタートアップの1社。社内で自動化したいワークフローを目的から選び、50万をこえるレシピから自動化ソリューションを作ることができる。対象部門は、マーケティングや営業などのフロント部門から、HR、財務などのバックオフィス部門まで多岐に渡る。毎月顧客やパートナー企業によって500以上の新しいレシピが作成される。現在の顧客はSlackやBoxなど7,000社に渡る。直近2年で売上も顧客数も約3倍に拡大。本シリーズDは、Altimeter CapitalとInsight Partnerが共同リード投資家。

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デジタル契約SaaS Ironclad $100M調達@~$1B

Ironcladは、契約ライフサイクル管理(CLM)領域のリーガルテックSaaS企業のメジャー企業の1つ。社内の契約書を一括管理し、契約の進捗状況や契約の更新時期を簡単に管理することができる。世界のCLM市場は年間+13-20%で成長しており、2024年には約3,000億円になると予測されている。直近の2020年には、ARR $10Mから$20-25Mと約2倍に成長している。Google Cloudと戦略提携し、Google CloudベースのAIプロダクトの開発を進める予定。本シリーズDは、元KPCBパートナーのMary Meeker率いるVC BONDをリード投資家に迎え、評価額約$1Bで$100M調達。

Ironclad紹介動画

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営業エンゲージメントSaaS SalesLoft $100M調達@$1.1B

コロナにより、企業はリモートを前提とした営業活動に大きくシフトし、"デジタル営業"に進化することが求められるようになりました。SalesLoftは、この企業のチャレンジを支援する、営業支援SaaSです。営業のパイプライン創りから商談のフォローアップ、クロージングまで、SalesLoftがバーチャルコーチとして、営業の目標達成を支援するツールです。Google、LinkedIn、IBMなどの大手企業を顧客に抱える。本ラウンドは、Owl Rock Capitalがリード投資家の他、既存投資家のEmergence Capitalなども追加投資。

SalesLoft紹介動画

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データレーク特化型BIツール Starburst $100M調達@$1.2B

機械学習やビッグデータ解析が、多くのエンタープライズ企業にとって一般的に活用されるようになる中、Snowflakeに代表されるデータウェアハウスに加え、構造データと非構造データを一元管理できる「データレーク」も普及が進んでいます。StarburstはFacebookのオープンソースプロジェクトから派生した、データレークを活用するエンタープライズ向けデータビジュアル化ツール。本シリーズCは、Andreessen Horowitzがリード投資家。

Starburst紹介動画

クラウドセキュリティSaaS Lacework $525M調達 : Laceworkは、2020年華々しいIPOをしたSnowflake同様に、米VC Sutter Hill Venturesパートナー Mike Speiser氏が創業したクラウドセキュリティSaaSの雄。直近2年間で連続して、300%の売上成長を達成。本シリーズDは、Sutter Hill VenturesとAltimeter Capitalが共同リード投資家。

ノーコード・デザインCMS SaaS Webflow $140M調達@$2.1B : Webflowは、Airtableなどと並んでノーコードブームを牽引しているSaaS企業の1社。主にWordpressやSquarespaceなどのCMSと競合。ユーザー数は、200万人、有料課金ユーザーも10万人を超える。本ラウンドは、AccelとSilversmithが共同リード投資家。

マニュアル検索SaaS Zoomin $20M調達 : Zoominは、自然言語処理により、ソフトウェアの技術マニュアルから人が欲しい情報を簡単に見つけることができるSaaSを提供している。主な用途は、ソフトウェア企業のカスタマーサービス向けのため、SalesforceのService CloudやHubSpot、Zendeskとも連携。本ラウンドは、Bessemer Venture Partnersがリードの他に、戦略投資家としてSalesforce Venturesも参加。

VisaによるPlaidのM&A白紙に1年前に発表されたVisaによるPlaidの$5.3Bの大型M&Aは、米司法省が昨年11月に独占禁止法違反で提訴したため、買収を白紙に戻した。Plaidはスマホ向けアプリとユーザーの銀行口座をAPI経由で安全に接続するSaaSを提供するFintech系SaaSスタートアップの代表格の1社。2020年もデジタル決済の進展により、顧客数は60%増加。

マーケットトレンド

デスクレスワーカー向けテクノロジー最新動向

DXが世界中に叫ばれる一方、世界の労働力の80%(27億人)を占めるデスクレスワーカー(机で仕事をしない働き手)は、デスクワーカーのようにテクノロジーの恩恵を受けていない。本稿は、ソフトウェアの大きな市場可能性がある"デスクレスワーカー"の現状のテクノロジーに関するサーベイ結果をまとめたものです。コロナにおいても、医療従事者や店舗のスタッフ等のデスクレスワーカーは大きな影響を受けており、SaaSの今後の拡大を考える上でも、多くのインサイトがあります。

本サーベイ結果からの主なインサイト
・労働時間の75%はテクノロジーに触れている
・デスクを使わないのに83%がPCを付与されており、スマホは57%
・彼らの60%は、現状のテクノロジーに満足していない
・不満で多いのは、遅い、機能が不十分、スマホ/タブレットで使えない
・改善されない理由は、予算による制約や管理者の理解不足
・78%はテクノロジーが職業選択の要素になっている など

未来のソフトウェアは誰がコントロールするのか?

Andreessen Horowitz ブロックチェーン担当パートナー Chris Dixon氏による、インターネット史から考えるソフトウェアの未来に関する考察記事。ソフトウェアは、1980-2000年のオープンソースから2000年-現在に至る、特定の企業(例. Google、Facebook)が中央集権的に管理するソフトウェアに移行した。これにより爆発的にソフトウェアが普及した一方、近年では、ソーシャルメディア企業独自の判断によるユーザー排除や、一方的に変わる検索アルゴリズムなど、多くの物議を醸している。故に今後は、ブロックチェーンに代表されるような「オープンなコミュニティによってコントロールされたソフトウェア」が回帰するとの予測。確かに欧米でのオープンソースSaaSの増加や、Notionや今回紹介したWorkatoなど、ユーザーコミュニティによって進化するSaaSも同じトレンドと言えるかと思います。

2100年に文明はどう変わるのか?

元WIRED編集長による2100年の未来予測。現在の世界は、主に18世紀に発明された"文明"(例. 代議民主主義、金融資本主義、化石エネルギーなど)によって動いています。しかし、2020年は、グローバルでこの旧来からある文明の限界が露見した年でもあり、2020-2050年は新たな文明に大きくシフトしていく、という話。筆者が提言する、米国/世界の現在の文明→2100年の文明のシフトは以下の通り。

現在(2020)→2100年の文明シフト
・機械式エンジン→デジタルコンピュータ
・化石エネルギー→クリーンエネルギー
・産業革命→バイオ革命
・金融資本主義→持続的資本主義
・代議民主主義→デジタル民主主義
・連邦制→グローバルガバナンス

成長戦略

Okta 創業者/CEOの起業における10の学び

Okta創業者/CEOのTodd McKinnon氏による現在に至るまでの、Okta起業における10の学びと題したSaaStrの記事。私個人の学びとなったことをピックアップすると以下の通りです。

Okta起業における学び(抜粋)
・Oktaは機能ではなく、エンタープライズに特化することで勝てた
・顧客は初期からOktaを信じてくれたが、多くの投資家や採用候補者はOktaの可能性を信じてはくれなかった
・全てでA+を取る必要は無い。1つの大きなトレンドに対してA+を取れ
・スケールするには、「ブランド作り」が欠かせない
・オンプレではニッチだったID管理は、クラウドで100-1000倍に市場が拡大した

米主要テクノロジー企業のPMに求められるスキルは何か?

PM(Product Manager)は、ビジネスサイドとプロダクトサイドをまとめるテクノロジー企業にとって中長期の成長を牽引する重要な役割と言えます。本記事は、SalesforceやApple、Microsoftなど米国の主要テクノロジー企業のPMに聞いた「PMに求められるスキル」についてのサーベイ結果。下図にある通り、全体では"コミュニケーション能力"、"業務遂行能力(=やり切り力)"、"プロダクトセンス"がトップ3になっている。この記事で面白いのは、分野によって求めるスキルに傾向が見られる点。例えば、CRM系(Salesforce、HubSpot)ではコミュニケーション能力、Fintech系(Coinbase、Stripe)では戦略思考など。

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マネジメント

Calendly創業者のARR $70Mに至るまでの生い立ち

Product-Led Growth型SaaSの代表企業の1つ、Calendly創業者 Tope Awotona氏の生い立ちから、VCに頼らずに現在のARR $70Mのビジネスを作り上げるまでのインタビューをまとめたTweetstorm。

Tope Awontona氏は、ナイジェリアに4人兄弟の3番目に生まれた。12歳の時、彼の目の前で父親がカージャックにより殺害され、人生が一変した。父親の兼ねてからの夢は、「起業家として成功すること」。父親の夢と死が、彼が起業家を志すきっかけになる。米国での苦学の末、IBMやスタートアップに入ったが、起業がしたくて、まずはプロジェクターやBBQグリルの販売で起業。しかし儲からず、現在のCalendlyを創業。Calendlyもマネタイズに苦労し、何度も倒産しそうになったが、現在のARR $70M、従業員200名の会社まで成長させた。

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ファイナンス

2020年通期の米SaaSマーケットの振り返り

米ソフトウェア特化調査会社のSoftware Equity Groupによる、2020年の米SaaS上場企業のマルチプル、売上成長率、EBITDA%の推移をまとめたレポート。面白い点としては、コロナ禍で大きくマルチプルが拡大(4Q19 9.1x→4Q20 12.5x)した一方、TTM(過去12ヶ月)の売上成長率を見ると、全体としては成長率は鈍化傾向であることがわかります。

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SaaS起業家向けテンプレート集 by Emergence Capital

SaaSスタートアップが、シリーズA/Bの資金調達の際に準備するべき、データやピッチデックのフォーマットをまとめたリンク集。SaaS/エンタープライズ向けソフトウェアに特化した米VC Emergence Capitalらしい、非常によくできたコンテンツです。アーリーステージのSaaSスタートアップの方はもちろん、シードステージの方にも、どういうデータや内容を仮説検証する必要があるかを知る上で参考になるかと思います。

SaaS資金調達ピッチデックテンプレート(リンク)

SaaS KPIデータExcelフォーマット(リンク)

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