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今週のSaaSニュース! Vol.6(6/21週)

今週は金融特化バーティカルSaaS nCinoのIPO申請、Canva、Checkout.comのSaaSユニコーンやa16zのCadar、Rasaの新規投資、MastercardのFinicityのM&Aなど、数多くの注目ニュースがありました。今週は、米国トップVCから米国外SaaS(欧州/豪州)への投資のニュースが多かったです。

国内のSaaS起業家向けにおすすめの注目ニュースをピックアップします。

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今週の注目SaaS資金調達ニュース

◆[金融機関向けSaaS]nCino IPO申請:「銀行向けOS」を謳う金融特化型バーティカルSaaSの雄nCinoがIPO申請。ユニシス等の30年以上金融ITの経験を積んだPierre Naudé氏らによって、2011年後半にCommunity bankからスピンアウト。S-1によると、2019年の売上は$138M、過去3年の年平均成長率は+54%。既存顧客へのアップセル力を示すNet Revenue Retentionは、147%とDatadogなどSaaS上場企業のIPO時の数値としてもトップクラス。Insight Partners, Salesforce Venturesなどから累計で$213M調達。

◆[デザインSaaS]Canva $60M調達:言わずと知れたオーストラリアを代表するSaaSユニコーンの1社 Canva。デジタルコンテンツのクリエイティブ作成のコラボレーションツールを提供。現在までに3,000万人が利用し、Canva上では1秒ごとに80個のデザインが作成されており、コロナ禍においても急成長。2019年10月にシリーズEで評価額$3.2Bで$80M調達したばかり、わずか8カ月で評価額は約2倍の$6.0B。今回、Sequoia China/Blackbird Venturesが共同リード投資家として$60M調達。

[決済SaaS]Checkout.comシリーズB $150M調達:Checkout.comは、オンラインコマース事業者向けに、世界各国の通貨、カード決済などの主要決済手段をAPIを通して提供する、欧州を代表する決済SaaSユニコーン。既に黒字化を達成し、成長を継続。約1年前のシリーズAでは$230M調達し、今回のシリーズBは、評価額$5.5Bにて$150Mを調達。本ラウンドは、ヘッジファンドのCoatue Managementがリード他、Insight Partners、DST Globalなど既存投資家も参加。

[バーチャルイベントSaaS]HopinシリーズA $40M調達:Hopinは、ウェビナーやフォーラムなど、様々な形態のオンラインイベントを開催できる、英国SaaSスタートアップ。コロナショックによるロックダウンにより、月次売上成長率60%以上で急成長している、正にコロナの追い風を受けているスタートアップ。この6ヶ月間で8人だったチームは、60人まで拡大。本ラウンドは、IVPがリード投資家の他、Salesforce Ventures、Slack Fundなどの主要SaaS系CVC、米国Accelや英国Seed Campなど名立たる投資家が参加。

[医療費決済SaaS]Cedar シリーズC $102M調達:Cedarは、患者の医療費の管理/決済をシンプルに行えるSaaSを提供するNY発スタートアップ。本ラウンドはAndreessen Horowitzがリード投資家で、「Secrets of Sand Hill Road」の著者であるScott Kuporが社外取締役に就任。

[経費管理/決済SaaS]Swile シリーズC $78.7M調達:Swileは、それまで紙ベースだった従業員向けランチのバウチャーをデジタル化し、Swileカードとして提供しているスタートアップ。ランチ以外にも、従業員が経費として使う、ギフトや交通費などを決済できるall-in-one型のソリューション。本ラウンドは、欧州トップVCであるIndex Venturesがリード投資家として、BpifranceとIdinvestも参加。

[CRM SaaS]Ujet シリーズC $55M調達:コロナによってクラウド化/分散化が進んだコールセンターなどのカスタマーサポート機能。Ujetは、このクラウド化したカスタマーサポート向けに特化したCRMを提供。1か月前$65M調達したAircallの競合。クラウド型カスタマーサポート市場は、今後5年で1.9兆円から5兆円に急拡大が見込まれる。本ラウンドはSapphire Venturesがリードで、 GV、Kleiner Perkins、Citi Ventures、DCMなども参加。

◆[ホスピタリティ特化CRM SaaS]SevenRooms シリーズB $50M調達:SevenRoomsは、レストラン/飲食店などの顧客データ管理/分析を行い、パーソナライズ化された顧客体験を支援するSaaSを提供。本ラウンドはProvidence Strategic Growthがリード。

[オープンソース型チャットボットSaaS]Rasa シリーズB $26M調達:Rasaは、ドイツ発のチャットボット開発者向けにオープンソースのDevOpsツールを提供。本ラウンドは、オープンソース好きなAndreessen Horowitzがリード投資家、既存投資家のAccelなども追加投資。

◆[AIOps SaaS]Streamlit $21M調達:ここ数年、AIOpsやSaaSOpsなど、ソフトウェア開発/運用者向けのDevOpsツールが増えています。Streamlitは、AIを活用したアプリ開発/運用を行うプロセスを効率化するAIOps系SaaSを提供。本ラウンドは、GoogleのAI特化ファンドGradient VenturesとGGV Capitalの共同リード。

[CPaaS]Messagebirds IPO申請予定:コロナ以降、急成長しているCPaaS(Communication Platform as a Service)領域。王者Twilioの競合である、オランダのMessagebirdsが近々IPO申請予定。

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今週のSaaSおすすめ記事

今週は国内外の注目SaaS記事をピックアップします。

◆2020 SaaS Product Benchmarks Report (リンク)
Datadogなどの投資家で知られるOpenview VP、毎年恒例のSaaSベンチマーク調査の2020年度版。Product-led growth推しのVCだけあって、フリミアム/フリートライアルを採用するSaaSに関するベンチマーク情報が豊富。数字から見るフリミアム vs フリートライアルの優劣も面白い。

◆Top 10 Learnings from the Redpoint 2020 GTM Survey(リンク)

SaaS分析が得意な、Tomaz Tungusz率いるRedpoint Venturesの営業戦略に関するサーベイレポート。回答企業がARR $20M未満なので、日本のSaaSスタートアップにも参考になるポイントが多いと思います。特にARR別のチーム編成(開発、営業、マーケ)や必要なポジションの情報を一見の価値あり。

SaaS事業者が顧客の要望を断る2つの理由(リンク)

Coral Capital 西村さんによるグラファー創業者 石井さんのインタビュー記事。SaaS企業は、受託開発と異なり、顧客を啓蒙/育成し、(ただのデジタル化ではなく)真のDX/カスタマーサクセスに導く使命があります。言うのは簡単ですが、顧客の要望を断るのは実際難しい。しかし、この記事はSaaS企業のあるべき姿を伝えてくれる、勇気を与える記事だと思います。

◆Fintech Startup That Raised $100 Million From Investors Bessemer And Coatue Is Abruptly Shutting Down(リンク)
コロナによって事業清算した会計SaaS ScaleFactorのニュース記事。ScaleFactorは、会計知識の無い人でも簡単に会計を行い、課題発見/アラートにより会計管理をできるSaaSを提供し、Bessemer Venture PartnersやCoatue Managementなど、強力な投資家がバックアップしていました。昨年末まで順調に成長して$7Mまで達成していたARRは、コロナにより一気に50%減まで減少。解約が止まらず、清算を意思決定し、100人いた従業員も50人を即日解雇。SaaSのチャーンの恐ろしさ、SaaS企業にとって既存投資家のエンゲージメントの重要性について考えさせられます。

◆Slack announces Connect, an improved way for companies to talk to one another(リンク)

Slackの新機能、企業間のコラボレーションを加速させるSlack Connectの発表に関する記事。競争環境が苛烈なコラボレーションツールにおいて、Slackの価値筋になるのか、今後注目されます。現在のところ、Slack Connectの発表によってSlackの時価総額には変化が無いので、マーケットは様子見と言った感じでしょうか。(以下、Slack Connect紹介動画)

◆How to Build a B2B SaaS Brand(リンク)

最近SaaSスタートアップの競争が激化する中で重要性が増す、「ブランド作り」に関する良記事。B2B SaaSのストーリーの重要性と構成要素、タッチポイント(チャネル)でのブランド作りのコツをまとめてくれています。あまりB2Bでは語られることが無いブランディングを戦略的に行う上では、参考になります。

◆How to forecast key product metrics through cohort analysis(リンク)

日本でも米国並みにSaaSのKPIについては、既に一般的になりましたが、日本のSaaSスタートアップがまだ弱いのが、この将来の予測性を高める「コホート分析」です。「コホート分析」は、過去のコホートのトレンドを理解することで、SaaSの将来の成長性の予測をすることやプロダクトのオンボード/リテンション状況を時系列で理解するために重要な分析です。この記事は、そのコホート分析のやり方をステップ・バイ・ステップで丁寧に解説しています。特にプロダクトローンチをしているSaaSスタートアップの方におすすめです。

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