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今週のSaaSニュース! Vol.36(2/14週)

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注目!資金調達ニュース

ローコードアプリ開発SaaS OutSystems $150M@$9.5B

世界同時多発的に起こっているDXとエンジニア不足の中、「ノーコード/ローコード」の必然性はご存じの通り。日本ではヤプリがこの分野を牽引する存在ですが、OutSystemsは、(ヤプリとは異なり)ローコードでのアプリ開発を行うSaaSを、エンタープライズ向けに提供するスタートアップ。顧客にはメルセデスベンツ、ホンダ、HP、インテル等の大企業のロゴが並ぶ。FY18時点でのARRは、YoY+60%以上で$100Mを超える。本ラウンドは、プレIPOのラストファイナンスとみられ、$9.5Bのバリュエーションで$150Mを調達。リード投資家は Abdiel CapitalとTiger Global。

2分でわかるOutSystems動画

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顔認識不要の無人店舗チェックアウトSaaS Standard $150M調達

小売業は、2020年コロナで最も打撃を受けた産業の1つだ。一方で、ECとの闘いに対抗し、DXによるサバイバルゲームも加速している。その大きなテーマの1つである、リアル店舗の無人化。Standard Cognitionは、プライバシーに課題がある顔認識技術を用いずに、スマホによるチェックインと独自の画像解析を用いた無人店舗向けSaaSソリューションを提供。すでにサークルK系列で導入実績があり、今後5年で5万店舗導入を目指している。本シリーズCは、Softbank Vision Fundをリード投資家に迎え、$150Mを調達。

3分でわかるStandardプロダクト動画

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メンタルヘルスSaaS Modern Health $74M調達@$1.17B

メンタルヘルスは、コロナ/WFH環境下で大きな課題となっていることはご存じの通り。Modern Healthは、エンタープライズ企業の従業員向けに統合的なメンタルヘルス管理のSaaSを提供するスタートアップ。ピクサー、楽天、Okta、Lyftなど数多くの大手テクノロジー企業で導入されており、高いNPSスコア実績がある。前回20年10月に行ったシリーズCから、たった5カ月で売上は2倍に成長。今回のシリーズDでは、$1.17Bのバリュエーションで$74Mを調達。リード投資家は、Founders Fund。

ちなみに本ラウンドで、女性起業家によるスタートアップとしては、「米歴代最速でのユニコーン(4年弱)」になった。

Modern Health CEOインタビュー動画

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バーチャル理科実験SaaS Labster $60M調達

これまでの記事でも紹介してきましたが、学校の教育現場はリモートでいかに教育の質をテクノロジーで向上するかが大きなチャレンジとなっています。Labsterはタイトルの通り、理科実験のような体験型のサイエンス教育をバーチャルで行うSaaSを提供している。Newsweek誌の選ぶ、「コロナ禍で成長する200社」の1社。世界70ヵ国以上、2,000以上の大学や高校に導入されている。本シリーズCは、著書「VCの教科書」でも有名なAndreessen HorowitzのScott Kupor氏がリード投資家。既存投資家も、GGV、Balderton Capitalの他、Unityなどの著名なVC、関連SaaS企業が投資。

1分でわかるLabster動画

顧客データベース統合SaaS Census $16M調達

Censusは、エンタープライズ企業向けにデータウェアハウスにある顧客データをSalesforceやMarketoなどのCRMとシンクするSaaSを提供している。ユニークな点は、通常SaaS同士を連携し、BIに流し込んで、分析に使われていたデータを、データウェアハウス起点に考え、SaaS同士を統合することなく、各SaaSのオペレーションに活用しようという新しい発想。クラウドの潮流は、SnowflakeやAWS Redshiftのようにクラウド・データウェアハウスを基盤にする方向にシフトしている。本シリーズAは、Sequoia Capitalがリード投資家の他、シード投資家であるAndreessen Horowitzも追加投資。

1分でわかるCensus動画

セールスフォース特化DevOps SaaS Copado $96M調達: SaaSの王者として君臨するセールスフォースには、以前紹介したようなOwnBackupScratchpadなど、同社エコシステムを前提としたSaaS企業が多数存在する。このエコシステムの規模は、セールスフォース製品群の最低でも4倍はあると推定されている。スペイン発のCopadoは、このセールスフォースプラットフォーム上でのSaaS開発のリリースサイクルの加速化、バグ低減、ROI最大化を実現する、プラットフォーム特化型DevOpsツールを提供している。本ラウンドは、Insight PartnersとSalesforce Venturesのコリード。

ソフトウェアデモ管理SaaS Reprise $17M調達: Repriseは、ソフトウェア企業のエンタープライズ営業+マーケティング向けに、「ノーコードでプロダクトデモをカスタマイズできるSaaS」を提供している。本シリーズAは、Bain Capital Venturesがリード投資家。

マルチクラウドID管理SaaS Strata Identity $11M調達: Strata Identityは、AWS、Azure、オンプレなどの企業のマルチクラウドのID管理を統合して行えるSaaSを提供している。M&A等の際にも、買収先のクラウド統合にも利用される。創業者はOracle社の上級役員で、クラウドセキュリティ・ID管理をリードした人物。本シリーズAは、Menlo Ventursがリード(有名なVenky Ganesan氏がBoDに就任)。

B2B向けBNPL(後払い決済)SaaS Tillit €2.5M調達: 昨年IPOしたAffirmや北欧のデカコーン Klarnaなど、B2C EC向けのBNPL(後払い決済)のフィンテックは急成長分野。ノルウェー出身のTillitは、B2B版にBNPLソリューションを提供するスタートアップ。Sequoia Capitalの欧州投資の2号案件。

ストラテジー

売上継続率(NRR)と新規受注の適正なバランスとは?

売上継続率(NRR)は、既存顧客からの複利型売上増加を示すKPIであり、SaaSの成長性を示す重要指標だ。今日では日本のSaaS企業にも広く普及している。しかし近年ではSaaSでNRRが重視されるため、「NRR偏重のリスク」、「既存受注と新規受注の適正バランス」について本記事は解説している。結論としては、"既存受注:新規受注=50:50"が適正と示唆している。
概要はこうだ。

米国ではSaaS企業の成長性を測る上で、NRRをウォールストリートも評価している。SaaS最大手Salesforce.comは、既存顧客からの売上が73%を占める。しかしながら、近年のSaaSでは売上全体の成長率より、NRRが高いSaaSが散見され、これは将来的な成長のリスクとなる。なぜならば、NRR>売上成長率は、営業が攻略難易度の低い既存顧客ばかり見て、新規顧客(New logo)の獲得スピードが後手に回っている可能性を示唆している。競争環境にもよるが、新規顧客が競合に奪われ、将来の成長の足かせとなる。

アーリー期のSaaSセールスでよくある間違い」リスト

アーリーステージは、初めて営業組織のスケールを考え始めるタイミングのため、試行錯誤をすることが多いため、失敗も経験しやすい時期です。この記事は、このアーリーステージでよく見られる「SaaSセールス失敗あるある」リスト。一歩先を行く米国向けですが、SaaSスタートアップのCEO、COO、CROの方は自社セールスの健康診断に使ってみるのもおすすめです。詳細な説明は割愛しますが、大まかな内容は以下の通りです。

アーリー期の「SaaS営業のよくある失敗」リスト
1. 営業育成プロセス/仕組みの不在(3人以上)
2. 見込み客の放棄/放置
3. 過度なプロセス化/自動化(大手の杓子定規な対応)
4. 顧客セグメンテーション無し
5. 不可能な営業ノルマ(目安は6-7割が達成可能)
6. 効率重視で商談を吹っ飛ばすSDRとAE
7. 遅いインバンドリード対応(数分以内)
8. 分業の不在/営業が全てカバー
9. 毎日の行動計測無し
10. 営業電話の内容チェック無し
11. チャーン/炎上する契約と機能の誇張
12. 競合対応ができない営業の採用

CanvaとFigmaに見る「既存ユニコーンの倒し方

いかにユニコーンを倒すか?』でも少し触れられている、SaaS分野で巨大企業にスタートアップがいかに挑むか?についての詳細な分析記事。

デザインツール界の巨人Adobe。この巨人に対し、Canva、Figmaがどう顧客市場とトレンドをとらえ、どういうアプローチでPhotoshopからシェアを奪ったかを解説する記事。Product led growthの文脈でも学びはありますが、「海外大手SaaSに日本のSaaSがいかに戦いを挑むか?」を考える上でも多くの示唆があります。要点を解説すると、以下の通りです。

・TV→SNS/ネット化による新たなニーズを把握
 (Why now?必須)
・顧客のワークフローを抽象化
・コンセプト化(下図)
 (コラボツールFigma, 非デザイナー向けCanva)
・低摩擦+スケーラブルなモデル
 (SEO+UG主導のフリミアム)
・ネットワーク効果のあるPFでMoat構築

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マネジメント

ユニコーン級の大成ができないCEOの7つのサイン

数多くの米国SaaS企業の経営者との関わりを持つ、SaaStr Jason Lemkin氏による、大成できないCEOのサイン(≒特徴)について解説した記事。全ての人がユニコーンを目指す必要は無いですし、多くの場合その方が良いと思います。しかし、社会を大きく変えるような企業を創りたいと願う、SaaS企業経営者の方には、非常に参考になる内容だと思います。

大成しないCEOの7つのサイン
1) 20-30億円での売却の話をよくする
2) SNSなどで幼稚な表現をする
3) 競争環境をよく理解してない
4) 週や月単位での過度な戦略変更をする
5) 顧客トップ10社の考えへの理解が浅い
6) 優秀なVPレベルを採用できない
7) 苦しい時に情報を示せない/隠そうとする

Bessemer VP流社外取締役に相応しいVCか?」テスト

SaaS系VC最高峰 Bessemer Venture Partnersで、Byron Deeterと共にSaaS投資をリードするElliot Robinson氏による「社外取締役の権利(ボードライト)を与えるにふさわしいVCか?」を測る上での評価軸。以下の図にも書いてある通り、『会社や技術、市場は変化するが(社外取締役として)大切なバリューは変わらない』という視点で書かれています。VCとしては、ドキドキしますが、現代の社外取締役に求められる要件として非常に参考になる内容です。

取締会への提供価値
1) 良い時も悪い時も、常に安定した熱量を注げるか?
2) 明確かつ測定可能な価値があるか?
3) 有事に必ずコミットできるか?
4) 経営陣に対して敬意があるか?
経営陣への価値
1) 透明性を重んじ、常に誠実か?
2) D&Iはトレンドではなく、企業の高い成果に不可欠と認識してるか?
3) 株主ではなく、会社視点で長期的な価値を考えられるか?
4)差別や蔑視を決して許さない姿勢はあるか?

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ファイナンス

プレイドの上場準備・審査プロセスの実録

昨年素晴らしいIPOを果たされたプレイド社ファイナンスチームの皆様による、IPOまでの軌跡に関する連載記事。多くの起業家の方にとって不慣れなIPOまでのプロセスを、丁寧に解説するだけでなく、実際に直面したチャレンジやそこからの学びを、血の通ったストーリーとして解説して下さっています。SaaS起業家、経営陣の皆様には一読することを強くオススメします。

資金調達が変わるか? 新しいSaaS向けベンチャー融資の仕組み

SaaSは、Jカーブ型(赤字を掘って成長する)ビジネスモデルが故に、VCからの資金調達が必要になることが一般的です。一方で、SaaSモデルが普及する中で、その強みであるリカリング(積上げ型)売上による収益の予測性の高さから、VCからのエクイティ調達ではなく、新たな融資でのデッド調達を提供するサービスが少しずつ出てきています。特にお金がコモディティ化している現在においては、資本コストの低い融資は企業側にとって大きなメリットがあります。本記事は、このサービスを提供するCapchase社の事例を解説してます。このようなサービスが増えることは非常に好ましい一方、SaaSフォーカスVCは、一層価値が問われると思います。

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