見出し画像

今週のSaaSニュース! Vol.28(11/29週)

注目!資金調達ニュース

Salesforce.comがSlackを$27.7Bで買収
CRM最大手Salesforce.com社が、ビジネスチャット大手 Slack社を買収額$27.7B(=約2.9兆円)で最終合意。この買収額は、2016年のMicrosoftによるLinkedIn買収($27B)を抜いて、SaaS企業のM&Aとしては史上最大、テック企業のM&Aとして歴代5番目の規模(下図)。Salesforce.comは、2018年 MuleSoft($6.5B)、2019年 Tableau($15.7B)、2020年初めにはVlocity($1.3B)と毎年立て続けに大型買収を行っている。SaaS企業の成長において、CorpDevの重要性を象徴するような案件ですね。

画像2

ビジュアル・データラベル Scale AI $155M調達@$3.5B
Scale AIは、画像、テキスト、音声/ビデオなどのデータを機械学習により活用したい企業向けにデータラベルするソフトウェアを提供する創業4年のスタートアップ。Scale AIは、創業初期に自動運転車用途でGMやトヨタなどの自動車OEMで導入する他、NVIDIAのようなチップメーカーから、現在はAirbnb、Pinterest、DoorDashのような大手テック企業まで幅広い顧客を抱える。事業としては既に損益分岐点を超えている。ちなみに創業者兼CEO Alexandr Wang氏は、MITのドロップアウトで、まだ23歳。本ラウンドは、Tiger Globalがリード投資家。(後段でAlexandr Wang氏の採用論を紹介。)

Scale AI企業紹介動画

画像2

バーチャルイベント/CRM Bizzabo $138M調達
創業わずか18カ月で評価額$2B超に到達した(英)Hopinなど、バーチャルイベント系SaaSは、コロナで急成長を遂げた分野の1つ。Bizzaboは、創業2011年から「イベント業界のセールスフォース」を標榜する、バーチャルイベント市場を創ってきたリーダー企業。コロナ禍で2020年は売上2倍、利用率は150倍にまで急拡大している。顧客は、アクセンチュアやUber、WeWorkなどの大手テック企業が中心。本シリーズEラウンドは、Insight Partnersがリード投資家。

Bizzaboプロダクト紹介動画

画像3

開発者向けコード検索SaaS Sourcegraph $50M調達
Sourcegraphは、開発担当者が様々なシステムに分散したコードを簡単かつ高速に検索できるSaaSを提供するスタートアップ。主要な40もの開発言語に対応。今年7月にクローズしたシリーズB時点から、ARRは4倍に成長し、ARRの売上継続率(NRR)は245%と突出している。顧客は、Amazon、Uber、Paypalなど数多くの大手テック企業が導入。本シリーズCは、Googleなど"検索"に多く投資している、Sequoia Capitalがリード投資家。

Sourcegraphプロダクト動画

画像4

SCMの一気通貫管理SaaS Stord $31M調達
小売/卸企業が、コロナで事業オペレーションに変化があった領域の1つが、受注、供給から物流に至るまでのサプライチェーンです。通常サプライチェーンは、3PL、倉庫など多種多様なベンダーのシステム、自社のERPとの統合が必要なため、データ/システム統合に複雑かつ半年など非常に時間がかかります。Stordは、受発注、物流などのSCMデータをend-to-endで収集、数週間でのシステム統合を可能にするSaaSを提供するスタートアップです。直近1年でソフトウェア売上は9倍、総物流取扱額は150倍超に急成長中。本ラウンドは、Founders Fundがリード投資家。

STORDプロダクト紹介動画

画像5

カスタマーサポートCRM KustomerをFacebookが$1Bで買収:近年Facebookは、B2B向けにメッセージアプリ上でのコマース機能の拡張などを強化しており、オムニチャネルのカスタマーサポートに強いKustomer買収により、巨大なカスタマーサポートCRM市場への進出が狙い。Kustomerは前回ラウンド評価額 $710Mと推定されており、アップラウンドでの売却。

カスタマーサクセスSaaS GainsightをVistaが$1.1Bで買収:Gainsightは、カリスマCEO Nick Mehta氏率いるカスタマーサクセス向けSaaSの雄。年末までにARR $100M到達見込み。売却先のVista Equity Partnersは、PingやJAMFのIPOを成功させたことで有名なPEファンドであり、IPOを目指す見込み。

デジタル病理検査SaaS Proscia $23M調達:病理検査のプロセスは、組織の切片をガラス版に載せて、病理医が顕微鏡で経験に基づいて癌などを判断する。このプロセスは150年以上変わっていない。Prosciaは、このプロセスをデジタル化する病理医向けのSaaS。本シリーズBは、Scale Venture Partnersがリード投資家。

決済統合インフラSaaS Primer £14M調達:Fintechによる決済手段やID認証、不正検知SaaSなどは年々増加しています。Primerは、これらのデジタル決済にまつわるソフトウェアを、マーチャントが一括統合・管理するためのSaaS。元Paypalのチームが創業。本シリーズAはAccelがリード。

イベントチケット販売管理API Vivenu $15M調達:Vivenuは、従来の柔軟性の低いチケット販売管理SaaSとは異なり、イベントの主催者が同社のAPIを介して、チケットの価格やプランをダイナミックに変更や、販売チャネル別顧客データに基づくインサイト獲得を柔軟にカスタマイズできるSaaS。本ラウンドは、Balderton Capitalがリード投資家。

エンジニアコミュニティ管理SaaS Orbit $4M調達:オープンソースソフトウェア開発は世界的に活発化しています。Orbitはオープンソース開発の重要な肝であるエンジニアコミュニティの管理/活性化を支援するSaaSを提供。本シードラウンドは、オープンソース型SaaS多く投資をするAndreessen Horowitzがリード投資家。

マーケットトレンド

クラウド進化の系譜:2021年はクラウド・オンリーの時代へ

今回のコロナが、クラウド進化の変曲点になったことは、米国のみならず、日本でも多く語られるようになりました。本稿は、1980年代のオンプレの時代から、2006年のAWS出現から現在に至るまでクラウドの進化、そして、2021年以降の「クラウド・オンリー時代」がいかなるものか?、を米VC Greylockが解説した記事です。ノーコード型プロダクティビティ・ツールや、オープンソース型データベース、エッジ処理、APIエコノミーなど、Battery VenturesやBessemer Venture Partnersの予測とも重なる部分も多く、クラウドの先端を行く、米国での変化を理解するのには良記事です。

画像6

企業のテクノロジーへの支出は、コロナでどう変わったか?今後どう変わるのか?

「2021年の企業のテクノロジーへの支出は増えるのか?減るのか?」。B2Bテック企業には重要な問いだと思います。本稿は、200兆円以上の企業支出動向をリアルタイムで把握している支出管理SaaS Coupaのデータから得られたインサイトを、Battery Venturesがまとめた記事。現在までの変化としては、1)WFH関連は投資が一巡し、事業運営のクラウド化にシフト、2) 全ての企業がテック企業化(例. 銀行)、3) SaaS導入の企業の意思決定のスピードが加速の3つがあると伝えています。

また記事では、2021年以降で支出がより大きくなるテクノロジー投資領域をを以下の3つと予想しています。

2021年の企業のテクノロジー支出トレンド予測
1) デジタル上の顧客体験をリアルに近くするテクノロジー
2) WFMとのハイブリッド化に適応するバックオフィス業務のデジタル化
3) 中長期で変更し続けることを見越した、最新のクラウドインフラへの刷新

決済SaaS大手 StripeがBaaSに進出

欧米ではFintechの拡大に並行して、SaaSなどに代表されるノンバンク企業の銀行サービス進出が活発になっています。その裏側の機能をAPIで提供するBanking as a Service (通称BaaS)は、非常に注目が集まっています。今回Stripeは、Goldman Sachsなどと連携して、独自のBaaS 「Stripe Treasury」をリリースし、Fintech強化しているEC構築SaaS Shopifyも利用。

成長戦略

インダストリーSaaSへの投資からの10の学び

Shopify、Toast、MindbodyなどインダストリーSaaSスタートアップへの投資/支援を10年以上続けてきたBessemer Venture Partnersによる珠玉の記事。内容が濃いのでこれを説明するだけで1本のブログになりますが、特にインダストリーSaaSにとって重要な二の矢(SaaSをレバレッジした他事業展開)の事例が豊富なので、インダストリーSaaSの企業経営者の方々は、成長戦略を描く上で、必読の価値のある記事です。

Product-led-Growth(PLG)型SaaS企業でセールスが必要になるタイミング

a16zによる、PLG型SaaSがどのタイミングでトップダウン型のエンタープライズ営業が必要になり、最初の1人目の人材要件からGTM戦略の変化まで詳しく解説した記事。最初の1人目の人材要件()については、PLG型のみならず、SaaSセールス全般に言えるポイント

最初のエンタープライズ営業の人材要件
1) 協調して意思決定できる
2) 分析的かつテクノロジー思考が高い
3) 長期的な関係作りが上手
4) エンタープライズ営業経験アリ

経営管理

Snowflakeは、いかに時価総額7兆円の企業になったのか?

ソフトウェア史上最大のIPOを遂げたSnowflakeの創業の歴史と、Snowflakeの成長を支えた企業カルチャーについての解説記事。「”平均(average)”は、平均以下(bad)より劣る」「やり切るか?死ぬか?」など、Snowflakeの目標への飽くなき執念と徹底ぶりが垣間見える良記事です。

創業4年のユニコーン Scale AIの採用基準

MITをドロップアウトしたAlexandr Wang氏が創業した、ユニコーン企業Scale AI。トヨタやNVIDIA、Airbnbなど一流企業を獲得し、従業員数はすでに200名を超える。本記事は、Wang氏がCEOとして、どういう基準で優れた人材を採用したのか?について、社内向けに書いた公開記事。少しSnowflakeにも通じますが、優れたスタートアップは会社/仕事への異常な執着心、"カルト感"が大事であるとのメッセージ。

ファイナンス

米国SaaS上場企業の決算とマルチプルまとめ

今週は、SalesforceやZoomなど、SaaS企業の決算が目白押しの週でした。本記事は、そのまとめ。ふたを開けてみると好決算のSaaS企業も多かったせいか、全体のEV/Revenueマルチプル(中央値)も過去最高を更新。

画像8

※その他ニュースはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?