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ギターの鉛シールカスタムについて

私がたまにギターに鉛シールを貼ってるのを見て「なんでそんなことすんの?」と思った方や「FatFingerって効果あんの?」と疑問なあなたへ。

剛性と重量

「重量を増やしても剛性が増えなければ意味なくない?」と思ったあなたは鋭いです。鉛を貼ったところで木部の剛性は全く変わりません。しかし重量を増すと「あたかも木部の剛性が増したかのような」効果があります

人間で例えてみましょう。重いギターは「体重が重い人」、剛性の高いギターは「筋肉に力を入れて固くなってる人」とイメージして下さい。この人に無慈悲にMAXパワーのボディブローをブチ込むとします。
体重50kgの人に無慈悲パンチをすると力を入れていなければ吹っ飛んでしまいます。でも力を入れていれば受け止められますよね。
一方体重100kgの人なら力を抜いていてもパンチを受け止められます。位置エネルギーが大きいからです。100kgのマッチョが力を入れたらパンチはほぼ効かないでしょう。その場合逆にエネルギーは手(弦)のほうに跳ね返ります。弦は手と違って振動するので跳ね返ったエネルギーは再度弦の振動になります。これがサスティンを伸ばします。

つまり「重くて動かしにくい」というだけで「軽いけど硬い」のと同じようにエネルギーにレジストする効果があります。

なお「木材」についてはほぼ比重=剛性の関係が成り立ちます。どの木材も同じ素材(細胞壁であるセルロース)でできているので、「比重が高い→密度が高い→剛性が高い」と言えます(含水量や木取りetcによっても変わります)。なので硬いギターが欲しければ比重の重い材で作れば基本OKです。しかし剛性を変えずに重りで重量だけを変える場合は上記のボディブローの話が関係します。

なぜ制振するのか?

じゃあ「軽いor柔らかいためよく振動するギター」と「重いor硬いため振動しにくいギター」で何が違うのか?

前提として「エレキギターの音はPUに入った音しか出力されない」「PUは磁性体=弦の振動しか拾わない」という原則にめちゃくちゃ留意して下さい。ボディがアコギのように鳴ってもそれがPUに入らなけりゃ何の意味もありません。
一方で「エレキは弦振動しか拾わないからボディ鳴りなんて全く関係ない」という説もありますがこれは間違いです。もしそうならボディを叩いたときにアンプから出てくる「コーンコーン」って音は何なの?って話です。実際のところボディ鳴りはブリッジやナットを伝って弦を振動させるので、ちゃんとPUに入力されてます。弦振動がネックやボディを鳴らしその振動が再度弦に戻ってPUに入る。この複雑なインタラクションがギターの音を作ってます。

私の感覚ですが鳴るギター/鳴らないギターの違いは↓こんな感じです。

よく振動するギター
弦振動がボディにスポイルされやすい→アタックが遅くなる(正確には高域のアタックは大差ないが中域〜低域のアタックは一歩遅れて鳴る)。サスティンが短くなる。低域がPUに入りにくい。
ボディがより鳴るので(特に中域〜中高域の)倍音が増えアコギ的な豊かさ・色彩感・コーラス感が出る。エアー感(リバーブ感)が出る。

振動しにくいギター
弦振動がボディにスポイルされにくい→弦だけが鳴る状態に近付く。アタックが速く、サスティンは伸び、低域がそのままPUに入りやすい。特にネック剛性が上がるとピッチが揺れづらく安定する。サウンドの構成要素においてボディより弦の比率が増すので金属的で無機質なサウンドになっていく。
ボディの余計な倍音が出ないため歪ませても濁りにくく音程感・コード感がはっきりする。エアー感が減るためミュートがピタッと止まる。特定の周波数でボディがより鳴る/鳴らないということが減るので各弦・各フレットの音色差・音量差が小さくなる(デッドポイントが減る)。FatFingerを付けるとデッドポイントが解消されるのと同じ理屈です。

これらは良し悪しではなく個性なので何を求めるかです。「軽いギターは良いギター」とか「よく鳴るギターがいいギター」とか画一的に言う人がいますが鵜呑みにしないで下さい。みんな違ってみんな良いんです。
私はメタルコア作ってるので振動しにくいギターのキャラが欲しい条件にマッチしてます。この「よく振動するギター」のキャラを「振動しにくいギター」のキャラに近付けるために制振しようというのが鉛シールカスタムです。

ライブでギター弾く方は軽い方がいいとか事情あると思うので参考程度に。あとトータル4kg超えるとDTM用途でも腰が辛いです。もちろん改造は自己責任でお願いします。

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