Melda Productionを一通りデモってみた

知ってる人は知っている。知らない人は知らない。そんなMelda Productionのプラグインを一通りデモってみたので簡単なレビューをつらつら書いていく。ちなみに興味あったやつだけ。いちいち画像を付けようかとも思ったが面倒なのでやらない。順番は適当。

MTurboEQ

とりあえず一番感銘を受けたのがこれ。SSL、API、Pultec、Neve、Manleyなどおおよそオタクが好むアナログEQが一通り入っている。パラメーターや周波数レンジもそれぞれの実機を模していて楽しい。
「この音に対してこのEQが欲しいからこのプラグインを挿そう」という判断を即座にできる人なら、手持ちの膨大なコレクションから1つを選別して使えばいい。しかし私レベルのアマチュアは基本的に「なんとな〜くアナログEQ挿してみっか!ワハハ!」ってノリなので、様々なアナログEQを即座に切り替えつつ検討できるのはかなり時短になる。プラグイン挿し替えてる間に前の音忘れるしな。
サウンドは、Wavesと念入りに聴き比べたけど大きな違いは感じなかった。同じ設定で聴き比べたりツマミをグリグリしてみたところ、おおむね似た挙動。私は当然実機なんて見たことも触ったこともないので、どちらが実機に近いかとかは分からないし、そこはあんまり重要じゃない。リファレンスにどれだけ近づけられるか。
注意点としては、GUIが無愛想な割に挙動がちゃんと各モデルを模しているので、ある程度各モデルを(プラグインでも)触ったことがないとどのノブがどういう働きをするのか理解不能。たとえばEQP-1Aだとどれがアッテネートでどれがブーストなのか、また「アッテネートしつつブースト」みたいな概念がないと闇雲にいじるだけになる。
「Saturation」という魅力的なノブがあるが、これを上げるとやや音が引っ込む感じがしたので、基本的にOFFでいいと思う。
とりあえずミニマルな方が好きなので、WavesのSSLもAPIもこれにまとめてしまった。

MTurboComp

これもおおよそ考えつく限りのヴィンテージコンプが網羅されている。VoosteqのMaterial Compに近いが、より実機志向。
長所も短所もMTurboEQと同じ。さらにディテクターのハイパスとかDry/Wetとかオートゲインなどは実機の忠実な再現を目指したプラグインには付いてないことも多いので、それらが全てのモデルで使えるのはかなり便利。作曲からミキシングまでやるDTMerは「これとこれどっちが実機に近いんだ?」ってやるよりこういう便利機能を使った方が結果は良いと思う。
Saturationノブを上げていくとモデルごとに違うサチュが乗る。すごい。実機ではあり得ない超ロングリリースにもできる。すごい。バスコンプもまとめてこいつに移行しようと思う。

MTurboDelay

これもテープやらBBDやら色々入ってて楽しいんだけど、1つだけ致命的な欠陥があって、ピンポンディレイがエセである。普通ピンポンって原音を100としたら
右90→左90→右80→左80→…って左右同じレベルで鳴ると思うんだけど、このディレイはそうではなくて、段々減衰しながら発音がLRに動くだけ。つまり
右90→左80→右70→左60→…となる(分かりづらくてごめん)。
これだと最初に発音される方が明確に大きく聞こえてしまうので個人的には無理だった。MDelayも同様。Replika XTを超えるディレイはないかなぁ。

MTurboReverb

これまたモンスタープラグイン。100のアルゴリズムを内蔵している。つまり100個のリバーブプラグインがこれに内包されているってこと。全体的なサウンドはPro-RやNeoverbほどナチュラルでスムーズなわけではなくValhalla RoomとかR-Verbくらいの普通のアルゴリバーブなんだけど、アルゴリズムを変えるとちゃんとサウンドが元から変わる。なのでプレートやスプリングも共通のアルゴリズムで作った「なんちゃって」ではなくきちんとした「プレート用のアルゴリズム」「スプリング用のアルゴリズム」で鳴る。プレートなんか専用プラグインと遜色ないんじゃない?それぞれのアルゴリズムに用意された簡易プリセットも使いやすくサクサクと音を選べる。
クリーンでナチュラルなのはPro-RやIRリバーブに任せるとして、アルゴリズム然としたリバーブはこれに統一することにした。

MReverb

Turboが付くか付かないかの違いだけど、中身は全然別モノ。これはDiffusion最大でもかなり粒子が粗くメタリックで、品質の低い古いリバーブって感じ。もちろんこういう耳障りな音が欲しい時はいいと思うが、粗い音は基本的にDiffusion下げれば作れるので、わざわざ買うほどのものではない。

MAutoVolume

これはそこまでいじってないんだけど、Vocal Riderって結構反応が遅くメタルの速いパッセージには追いつかないことが多いのに対して、MAutoVolumeはかなりキビキビ反応する。最大にかけるとバキバキにリミッターかけたみたいに真っ平らにできる。これは即移行。

MAutoAlign

これは結構有名プラグインかも。位相を揃えるのは他にWaves InPhaseとかあるけど、あれは手動なので全然比較にならない。挿してポチっと押せば位相が揃う。

MSpectralDynamics

人類の叡智。マルチバンドコンプの超多バンド版。周波数ごとに出過ぎたものをコンプしてくれる。マルチバンドコンプが「○Hz〜○Hzをコンプ」するのに対して、これは「○Hzが大きいときは○Hzだけをコンプ」する。同じものにSonibleのSmart:Compにもスペクトラルコンプレッション機能がある。60Hzだけが突出したキックに対して、ざっくりと40〜80Hzをコンプするのではなく、60Hzの周波数だけをピンポイントに叩くというもの。
言葉で説明するのは難しいが、全帯域に同じThresholdを設定して下げていけば、全ての周波数をフラットで均等な音量にすることができる。そして「どの帯域にどのThresholdを設定するか」をEQカーブを書くように自由に設定できる。「こっからこの帯域だけ検知して」ってのもできる。更にそれにゲートをかけることもできる(Denoiseモード)ので、もはや何でもアリだ。
難点は難しすぎるところと、果たして使い所があるのか謎なところ。基本的にマスタリング向けだと思う。

MBassodor

WavesでいうR-Bass。こちらは倍音付加だけでなくサブローを合成もできるので、正確にはR-Bass+Submarineみたいなプラグイン。しかしサブハーモニックの効果がいま一つで変に歪んでしまうため、超簡単で良い音なR-Bassが続投。

MCompressor

これもただのデジタルコンプでありながらMeldaっぽい変態要素がある。Kneeカーブを自由自在に設定できるため、1つでコンプ・ゲート・エキスパンダー等何でも作れる。MaxxVolumeも再現できる。コンセプトは面白いが自分で書くよりそれぞれのプラグイン使った方が早いし結果が良いのでスルー。

MDynamics

MCompressorと似ているが、コンプ、ヴィンテージコンプ、ゲート、エキスパンダー等のダイナミクス系が1つにまとまったプラグイン。自分でカーブを書く必要はない。ダイナミクス系を何も持っていなければ買う意味があるかもしれない。もしくは何も考えずに1つのプラグインで済ませたい人向け。

MDynamicEQ

普通のダイナミックEQ。Pro-Qが出た今ではあまり存在感がなくなってしまったもの。あまりUIが良くないので、Pro-Qを買おう。

MStereoSpread

モノラル素材をステレオに拡げるアレ。原理的には古くからある「原音をいくつかのバンドに分割して交互にLRに振る」というものだが、これは100バンドに分割できる。結構自然だし、高域だけにかけられるので欲しいが、SonnoxのVoxDoublerとも比べてみたいと思ってる。

MStereoExpander

↑と何が違うんだって感じだが、こちらはより自然にナチュラルに空間を付加する、どちらかというとショートリバーブに近いものらしい。

MDoubleTracker

WavesでいうDoubler。これもSonnoxと比較してみようと思ってる。デフォでかなり自然にかかる。iZotopeのVocal Doublerより自然。しかしステレオ幅を調整するオプションがないっぽい。原理的に狭めるほど位相がぶつかるので、あえてつけてないってことか?

MTransient

トランジェントシェイパー。あまり良い結果にならなかった。

その他

他にもいくつか試したけど省略します。
MeldaのプラグインはどれもUIが統一されていて、ノブの動きもスムーズだし、1クリックで数値入力できたり、オートゲインが全てについていたり、さらにプリセットが使いやすくて気に入った。最近のWavesみたいなアーティスト名がズラっと並んでるやつは何も分からないので嫌いなんだよな。
ご覧のとおり私は「実機に近い」とか「超高音質」とかにはあんまり興味ないし、DTMerが片手間にミキシングやってるだけなので、「これ1つで何でもいけまっせ」みたいなプラグインに惹かれてしまう。ガチ勢からすると微妙なものもあるかもしれないし、実際半分は「なんじゃこれ」ってアイテムだった。残り半分はすごいヤツ。玉石混合感がすごいのでよくデモって選んでほしい。

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