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Evertuneの凄まじさ。

前々から気になっていたEvertune搭載のギターを買ってみたので、ちょっと弾いて感じたメリット等をメモしておきます。(Solar自体のレビューはこちら。)

Evertuneの動作原理や仕組みは割愛するけど、通常のハードテイルとの違いは次の2つに集約されます。この2点だけ。
効果:弦にかかるテンションが相殺される=テンション変化によるピッチ変化がなくなる。ピッチを決めるのはゲージと弦長のみになります。
構造:かなりの木部をザグっていて、スプリングが仕込まれている。
この2点から以下のような違いが生まれます。
(あとで出てくる「Zone 2」とは、ピッチを一定に保つセッティングのこと。Zone 3ではピッチ補正をせずチョーキングやビブラートが有効になる。詳しくはEvertuneのマニュアル参照。)

チューニングが狂わなくなる
一度チューニングしてしまえば弦が伸びようがネックが反ろうがテンション=ピッチを一定に保つので、チューニングがずれません。レコーディングではパートごと、小節ごとに何度も何度もチューニングをチェックするのでめちゃくちゃ手間と時間の節約になります。ライブでも曲間でチューニングする時間を省けるのでかなり有用だと思う。

ピッキングによるピッチ変動がなくなる
Zone 2の範囲内であればどんなに強くピッキングしてもピッチがシャープしません。通常のブリッジではピッチ変動を気にして特にローチューニングの太い弦では思いっきりピッキングしたくても優しくピッキングせざるを得ない場面があるけど、Evertuneならガシガシ弾いても正確なピッチで音が出ます。

押弦によるピッチ変動がなくなる
押弦によるテンション変化も補正されるので、ふつうに押弦したときのピッチ変化はもちろん、強く押弦しても、ななめに押弦しても一定のピッチが保たれます。つまり、ピッチを気にせずかなりラフに演奏しても正確なピッチで音が出ます。
個人的にはエクストラジャンボフレットはピッチが不安定なので嫌いなのですが、Evertuneなら問題ない(Zone 2ではビブラートやベンドも使わないのでXJである意味があるかは微妙だけど)。
バズりを嫌って弦高を高めにしたい、でも押弦によるシャープが気になるという場合でもノープロブレム。

ハイフレットのピッチ(イントネーション)が改善する
この点を語ってる人をほとんど見ないけど、めちゃくちゃ大きいアドバンテージです。メーカーも「チューニングとイントネーションが改善するぜ!」と同格に並べてアピールしているくらい重要なポイントです。
押弦とピッキングによるシャープがなくなるので、ハイフレットのピッチが良くなります。これは構造上の違いなので、通常のブリッジではどんなに気をつけて丁寧に演奏してもここまでイントネーションは良くなりません。これは決定的な違い。
(オクターブ誤差がかなり小さくなるので、通常のブリッジではサドル調整範囲の限界が来るような25.5インチに064弦とかでもイントネーションが合ってしまう。)

上記のようにハードピッキング・強すぎる押弦・ななめ方向への押弦・弦をひっぱること、などに対してピッチのシャープが出ず、どのフレットでも超正確な音が出ます。結果として、通常ありえないくらいハードなピッキングができ、コードは整然で滲みなく鳴り、タッピングはピアノのように正確なピッチで演奏できるようになります。「12フレットあたりをピッキングしてマイルドな音を出す」とかもピッチ誤差なくできるので、もはや通常のブリッジでは不可能な新しい表現が生まれるレベル。

また、
・弦高アップによるイントネーション誤差を吸収する。
・対応テンション(通常サドルで11.0ポンド以上)までならどんなに下げてもピッチを維持する(例えば6弦25.5インチ10/46を2全音下げてC standardにできる)。
・細い弦でも太い弦でも目的のピッチで安定させられる=ピッチ揺れを気にせずサウンドと弾き心地だけでゲージを選べる。
・太い弦を張ってもイントネーション誤差が出にくい。
これらの理由から、通常のギターではテンション・ゲージ・イントネーションの関係上難しかったどんなセッティングでも作ることができるという自由度の高さもある。

良くも悪くも無機質な打ち込みっぽい音になるので、ダウンチューニングのメタルはもちろん、打ち込み主体の音楽とも親和性が高いと思います。

では欠点はあるのか?

弦交換時のセットアップがめんどくさい
ピッチを固定したい弦のペグをZone 2に入るまでぐるぐる回し続け、六角レンチでちまちまとチューニングをしなきゃいけないので、弦交換時のセットアップはやや時間がかかる。しかしトレモロブリッジほど面倒ではないし、一旦セットアップしてしまえばあとはほとんど調整しなくていいのでむしろトータルでは楽。

※ただしイントネーション調整は楽
通常のブリッジでは、イントネーション調整ねじを回してサドルを動かすと、弦長が変わってピッチが変わるため、ねじを回すたびにチューニングが必要になる。Evertuneではそのピッチ変動をも補正するため、いちいちチューニングする手間が省ける。

これだけ使ってるとギターが下手になりそう
これが最大のデメリットだと思うw かなりラフに弾いてもビッタビタにピッチが合うので、Evertuneだけ使ってると通常のブリッジのギターで正確に演奏する技量を失いそうで怖い。これは欠点でもないイチャモンですね…。

このように明確に欠点らしい欠点は見当たらない。
以下は長所でも欠点でもないサウンドの差について。

通常のハードテイルほどのレスポンス、ダイレクト感はない
スプリングによって弦の張力を相殺しているので、アタック時の弦振動が吸収されます。なので裏通しハードテイルと比べるとレスポンスがほんの少し劣る気がする。しかしトレモロほどでは全然ないです。僅かな差なので通常の演奏時には気にならない程度。それよりピッチ補正によってガシガシピッキングできることによるアタック感UP効果のほうが上回ってると思う。もしかしたらものすごいハイスピードな曲をやると気になるかも?
同じ理由で「サスティンが短くなる」という意見もあり、理論上はまぁそうなんだろうけど個人的には全然気にならないレベルです。

かなり大きくザグっているためほんの少しエアー感がある
Evertuneは搭載するためにボディをかなり大きくザグっています。このために完全なソリッドボディのギターよりもすこしチェンバード的なエアー感が付加されてる(気がする程度)。しかしボディが軽くなりすぎてローが抜けるのか?というと、Evertuneの機構自体がかなり重い(580g程度)のと、搭載のためにボディ厚が厚く設計されてる場合がある(最低45mm以上)ので、むしろボディ重量は通常の木のソリッドボディより重くなります。ブリッジ機構自体がミュートになり鳴りが適度に締まる感じで、通常のトレモロのようなフワフワ感はない。個人的にはトレモロからハードテイルに持ち替えた時に必要以上にタイトになりすぎる感じを受けたので、この少しのエアー感はむしろ好印象。
また、スプリングが入ってるけど適切にミュートされており、スプリングリバーブも気にならない。

以下まとめ。

Evertuneとハードテイルどっちがいいの?
これはMishaも言ってる通り、リプレイスするものではなく用途が別のものです。
ただし個人的には、ダウンチューニングで、太い弦で、リフ主体のメタルコアで、ライブはやらない…と用途に完全マッチしており、ドロップチューニング・ダウンチューニング用のギターはEvertuneに統一していいなと思ってます。
「Evertuneはハードテイルの完全上位互換である」と断言できます。Zone 3にすれば普通にベンドできちゃうし…。
現にPeriphery、ERRA、Invent, Animate、Spiritbox、Crystal Lakeなどモダンメタルの大御所がこぞってETを導入していて、これからさらにユーザーが増えるだろうなと思います。

何より、弾いていて楽しいし、手にとって弾く気になる。これが一番の効果です。
普通のギターでは毎回弾くたびにチューニングはずれてないか、ピッキングが強すぎないか、押弦がラフじゃないか、イントネーションは合ってるか…などなど気にしていたいろんなことから解放される。アクティブPUやトレモロもそうだけど、電池とか調整とか、いじるのも楽しいけど制作は進まないんだよね。
Evertuneはそういう面倒なことを考えなくてよくしてくれるので、フレーズのアイデア、タイム、ピッキングみたいなもっと音楽的でクリエイティヴなことに頭を使える。今まで思いつかなかったようなフレーズをトライする気になれる。これは楽しいです。

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