構造決定を得意分野にしよう

時間に追われる理科の試験、どう攻略する?

近年、難関大学の理科の試験では、時間的な制約が非常に厳しくなっています。限られた時間内ですべての問題に取り組むのは簡単ではありません。試験後半に焦りなどで点数を落とさないためにも、2~3分野で素早く解答できるスキルを身に着けるのがカギだと考えています。

特に有機化学の構造決定は、コツさえつかめば短時間で解けるようになる分野です。ぜひこの記事を読んで、勉強法や問題の解き方を見直してみてくささい!


一度でいいので全ての構造を書き出す練習をする

構造決定の基本は「考えられる化合物をすべて書き出して、その中から条件に合うものを探す」です。当然ですが、構造自体を思い浮かべなければ、どれが正解かを判断することはできません。

練習として分子式が$${\mathrm{C}_5\mathrm{H}_{10}\mathrm{O}}$$の構造式を、不安定なものも含めてすべて書き出してみてください!結構あります。

教科書に書いてある反応や用語は高分子も含めて全て覚える

はっきり言って、これが点数を決める最も重要な部分です。これから紹介するテクニックはあくまで時短のためのものです。テクニックだけ覚えても解けるようにはならないので注意してください。

受験生が疎かにしがちな知識をいくつか羅列しておくので、ひとつでもわからないものがあればすぐに教科書を読み直してください!

  • メタノールの酸化

  • 二重結合・三重結合に水素や水を付加させる際の触媒

  • けん化価・ヨウ素価

  • ニトロベンゼンから塩化ベンゼンジアゾニウムを合成するまで

  • クメン法

  • ナイロン6の材料の名前

  • フェノール樹脂を合成する際、酸塩基条件下でそれぞれ生じる中間生成物


テクニック

構造式の例で雰囲気がわかる

問題文冒頭の構造式の記入例を見ると、答えになる官能基が含まれている場合があります。よく見るのは三重結合や二重結合を含む環状構造などですね。普段あまり出てこない構造は見落としがちになるので、毎回必ず確認してほしいと思います。

答えは1つしかない

構造決定の問題には隠された大きな前提があります。それは、答えがひとつに決まることです。この情報は非常に大きいです。
例えば、次の問題を考えてみましょう。

素数$${p, q}$$を用いて$${p^q+q^p}$$と表される素数をすべて求めよ。(2016京大)

もしこの問題に「答えが1つしかない」という前提があったとすれば、ほぼすべての受験生が完答できるはずです。もちろん、数学にそんな前提はないので答案に17とだけ書けば0点になってしまうのですが、答えだけ書けばいい構造決定では許されます。

つまり、これっぽいなと思った構造が問題文の条件をすべて満たしているなら、それが唯一の正解なので解答欄に書けばいいわけです。

正直、テキトーに考えた構造が正解になる場合がほとんどなので、他人に解説するのは苦手です。

問題文が過剰な情報を含んでいる場合が多い

受験生に配慮してなのか、答えの構造をひとつに決める(高校で扱わない反応の可能性を取り除く)ためなのか、構造決定の問題文は過剰な情報を含む場合が多いです。

例えば、2012年京大化学第3問では、6,6-ナイロンの知識があれば問1の計算をする必要がありません。「導出過程を示せ」とありますが、計算したフリをすることができますし、実際に計算して正解を確信することもできます。

勝手に決めつけない

「Aを加水分解するとBとCが得られた。」という文章があったとすると、多くの受験生は「BとCが1:1の割合で得られた」と勝手に予想して読むことでしょう。この決めつけは危険なので注意してほしいです。勝手に決めつけてしまいがちな表現を列挙しておくので注意してください。

  • 「AとBに触媒を用いて水素付加させた」→AとBに等量の水素が付加したとは言ってない。

  • 「AとBを脱水剤のもと反応させるとエステルが得られた」→エステル結合は1つとは言ってない。

  • 「臭素水と反応した」→二重結合に付加したとは限らない。ベンゼンの水素に置換したかも。


忘れがちな構造

  • 三重結合

  • 二重結合を含む環状構造

  • エーテル全般

  • C以外の元素を含む環状構造

  • 二重結合+エステル(加水分解後アルコールは生成しない)


おわりに

受験からしばらく時間が経っているので、忘れてしまった知識やテクニックもあるかもしれません。これから少しずつ思い出して、記事を修正していきたいと思います。

皆さんも何か有益なテクニックを知っていたら、ぜひ教えてくださいね!

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