プレゼント

「クリスマスプレゼント、何がいい?」
「……わがいい」
 ぽつりと呟くように彼女は言った。よく聞こえなくて、わたしが先を促すように視線を向けると、彼女は薄く口を開くように微笑んでから、ほっそりとした、胸の奥に染み込むような声を流した。
「……柱に繋がれて、冷たい床に座らされて、貴女は私の前で椅子に座って、ストッキングを脱いで、それから足を組んで、その足先を私のほうに向けて……」
 わたしは彼女から目を逸らすけれど、彼女はわたしの耳元に口を寄せて、吐息混じりに囁き続ける。
「でも貴女はその足先で私には触れない。そっとその艶かしい足を私の目の前に持ってくるけれど、それで私のどこにも触れてはくれない。嬲るような嘲るような笑みを浮かべて、ただその足を私の目の前でふらふらとさせるだけで……。私はたまらなくなって、貴女に触れたくて、貴女を味わいたくて、懸命に舌を伸ばすのだけれど、貴女はとても意地悪で、決してその足を、小さな足の指を、私の舌には触れさせない。すっと鼻先に近づけるくらいはするかもしれない。からかうように喉を鳴らしながら。……けれど、決して触れてはくれない。決してね」
 ほおっと穏やかな息を漏らして、彼女は虚空を見ながら目を細める。
「そんなのがいいな。……うん、そんなのがいい」
 彼女はうっとりと頬をゆるませる。そうして夢見る乙女のような顔をして、
「首輪がいい」
 と、もう一度、さっきはよく聞こえなかった言葉を繰り返すのだった。

#百合

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