(毎週ショートショートnote)お題・ごはん杖

ビデオカメラを回していた友人は
思わず手を止め己の耳を疑った。

しかし当たり前のように
司会は進行される。

それでは新郎新婦初の共同作業
「ごはん杖、入杖です！」

パチパチパチパチ。

運ばれて来たのは
ウェディングケーキならぬ
岩ほどの大きさのご飯
ホカホカした湯気が途切れず
何かの供物のような佇まいすら感じる。

次に新郎新婦が手にしたのは
棒高跳びの棒ぐらい長い棒、杖？

えっ、それをウェディングご飯？に
ケーキ入刀みたいにするの、それが
この村伝統行事「ごはん杖」

老いてもふたりいつまでも
との願いを込めて
食べ物に困らない暮らしと
支え合う杖をモチーフにした「ごはん杖」

唖然としカメラを回すのを
すっかり忘れた友人は我に返り
慌てて録画ボタンを押した。

「ごはん杖」かぁ。
あの子も変な村に嫁いじゃったけど
やだ、すごい幸せそうに映ってる。
米粒よりもツヤツヤキラキラしてる、綺麗！

えっ、ちょっと待って
ブーケトスじゃなくて　
杖トス、杖飛んで来るの！？
危なっ！

まんま槍投げのような光景まで
ちゃんと録画した律儀な友人であった。