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現代ではNGワードだらけ!江戸川乱歩の問題作「一寸法師」

放送禁止用語だらけの推理小説です。「明智小五郎シリーズ 一寸法師/何者」

怪しい小男をなんとなく尾行すると、たまたまその男が人の手首を落とすところを見てしまう、すごい導入から、消えたお嬢様の家出捜索とバラバラ殺人事件をまとめて名探偵明智小五郎が解決する!
今作の明智小五郎は中国から帰国したばかりでお気に入りの志那服を着ているぞ。尾行に不便!

バラバラ殺人の容疑者が身体障碍者。
「この男は生まれつき醜い。だから女に相手にされず、猟奇殺人者になったのだろう」
と推理すると、周囲が「なるほど!論理に穴がない!」と拍手するような世界。単に今だと放送できない言葉が頻出するだけでなく、作品に流れる倫理観がすごい。

こいつは○○だ、この男は○○だ、わたしも疲れて〇〇のようなことをしてしまいました、と全部テレビから退場させられるNGワードで説明されている。

今だったら過激なトークショーとかで、
「差別用語を意図して使ってやるぞ」
という意図がないと口に出さないようなことばが日常にあって、代わりに他の表現が生まれて、世代によって自然に会話が変わっていくんだなあ、とふしぎな気持ちになった。これが過激さを狙ってるんじゃなくて普通の会話なんだって。

世の中のルール変更や空気によって、ことばが変わることが面白い。

読みながら、意識しないと登場人物がみんな和服なことを忘れる。よく出る「外套」もどんな着心地なのかピンときてないし、今の感覚だと「意味はわかるけど微妙にずれてる」ような言い回しがいっぱいあってそこそこ面白い。でも、「一寸法師」を発表したあと、あまりに幼稚だったと江戸川乱歩はしばらく休みに入ったそうだ。


読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。