ロンドン生活35〜40日目(オーストリア編)④

アルスエレクトロニカ・フェスティバルに行った話。

順番が前後したが、旅の始まりはウィーンではなく、オーストリア第三の都市リンツ。「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」に行くことが今回の旅のメインの目的であった。旅行の前々日まで、そのフェスティバルについて全く知らなかったのだが、授業の時となりに座った。その時はまだ顔見知り程度だった日本人の友達から、こんなんあるんだけど行きませんか、言われて、あ、じゃあ、面白そうだしいこっかな。という感じで決めた今回の旅行だった。

アルスエレクトロニカ・フェスティバルは1979年に国際ブルックナー音楽祭の一部として始まり、1986年からは独立して毎年開催されるようになった。芸術と科学の横断的表現領域をさぐるメディアアートのフェスティバルである。日本からも文化庁のメディア芸術海外展開事業が参加していたり、博報堂がブースを出していたりして、日本人もたくさん来ていた。

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街の中に複数の会場があり、二日間割と必死で回ったが、全部見ることはできなかった。最も面白かったのはリンツ中央駅からほど近い「POSTCITY」という会場であった。かつてはオーストリアの郵便物流業務を担っていた施設で、2014年にその役目を終えてからは、フェスティバルの会場として使用されているらしい。コンクリートでできた巨大な灰色の建物であり、その上を郵便物が運ばれていったのであろうシュートやベルトコンベアーの跡や、車が列車が積み込みをするための巨大な空間が残されている。エントランスのあるフロアには飲食ブースのほか研究室や会議室、広場、キャンパスなどと名前がついたエリアがあり、ひとつの大学のようなものを構成している。(POSTCITYには郵便という意味と、都市以後という意味がかかっている。)

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ここに展示される作品は嫌が応にもこの圧倒的な空間の影響を受け、サイトスペシフィックな意味をもつ。特に地下空間には大量の作品が展示されているが、薄暗く、無機質なコンクリートで覆われた大小の部屋と、先端の科学技術のハイテク光が生み出す不調和が不気味な魅力を持っていた。

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(一番すごかったのは最後の動画。50メートルはあるかに思える細い登り坂に不気味な声が響いている。登りきった上にこれがある。)

会場で一緒にいった友人の友人にあった。彼は日本で役者をやっていたが一旦やめて、各国を回りそれぞれの場所でアートの制作を手伝っているらしい(ちょっと詳しくはわからなかったが今度ロンドンにも来るらしいので、また聞いてみたい)。彼によるとポストシティの設計にはヒトラーが関わっていたらしいのだが、気になって調べてみても、よくわからなかった。ただ、リンツはヒトラーの故郷の州都であり所縁の地であるということがわかった。第二次大戦中のナチス統治時には、リンツを「ヒトラポリス」と改名し、理想の芸術都市に改造する計画まであったのだとか・・。巨大で無機質なコンクリートの施設が、さらに不気味に思えた。

POSTCITYの他にも受賞作品の展示があるOK CENTERや巨大な4Kシアターで映像作品が観れるアルスエレクトロニカセンターなどもみた。ただ総じて、今の私にはメディアアートの面白さというものはよくわからなかった。POSTCITYの展示や、夜しとしと降る雨の中で見た音楽のパフォーマンスは、その空間と相まってよかったが、単体で見たとき、「へぇ〜、すごい技術っぽい!」と思っても、それがイマイチ芸術をみる感動につながらなかった。知識が圧倒的に足りないというのもあるのだろうけど。詳しい人、教えてください。