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第9回「マジックアワー」

 4年ぶりにお誘いをいただき、東京湾に。思い返せば、リオ五輪が開催され、閉会式の花火とマリオに扮した安倍首相が印象的でした。そのマリオが苦悩し、オリンピック延期となった年に、また東京湾で、振り返りの機会を得るのでした。小さく揺れる船上で4年間を振り返ると、著しい進歩が何もないことに気づきます。あのときも僕は自分を省みて、決意をあらたにしています。4年が経ちました。進化を期すオリンピアンだったら、メダルはおろか出場すら危ぶまれる状況でしょう。あのときと同様の心境です。

 4年前は、「好きなことだけ仕事にしよう」と、自分を奮い立たせていました。自分を信じて、誇れる自分を目指そうとしていました。でもこれも運と縁と同様に、何度か押し寄せては去っていく決意で、結局は熟慮や選別を欠いたまま漫然と物事が進んでいきました。いつの間にか、断らない自分になり、いくつかのポリシーも大切にせず、簡単に言えば周囲に流されて時を刻んでいたのです。ただ、惜しかったとも評価できます。4年前のあの日から、しばらくは気持ちと行動を維持できていた時期もありました。些細なことをキッカケに少しずつ反省を必要とする自分になっていったのでしょう。

 好きなこと…何が好きなのでしょう?趣味嗜好を含め、僕は一体何が好きなのでしょう?
 フットボールは大好き、広くスポーツが好きです。どうしてでしょう?アスリートが、限られた自分の時間を使い、自身と向き合い対峙する相手や過去の記録をリスペクトして、今を戦う姿が、素晴らしいと素直に思うからです。そこに人生の縮図があるような気がします。本質を追求し、結果を省みて、進化して歩み続けるという内容のものです。自ら経験しても寄り添って応援しても、清々しい気持ちになれる何かを僕は好むようです。

 挙げていくと、いろいろと好きなことが頭に浮かびますが、世の中がコロナ一色で、何をしていても完全に楽しめない現状に気づきます。「好きなこと」も特段定義すること自体、ナンセンスなのだろうと気づかされます。いつどうなるかわからない世の中に僕らは生きているのです。
 だから、人に迷惑をかけずにやりたいことをやって、誇れる仕事を都度選べば十分なのでしょう。難しく考えることを一切やめ、心身の健康を維持し、徹底的に人生を楽しもう…4年前と変わらず、マジックアワーは訪れます。社会的環境は変わっても自然的環境が変わらないことを沈みかけた太陽が都会を照らして教えてくれます。

 

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