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第16回「サボらない質」

 少し肌寒くなり、台風が東京に冷たい雨を降らせています。気候だけでなく、銀行をはじめとした身近な企業の対応もお寒いものに変わってきています。これを人は、「with」や「after」と呼んでいるのでしょう。
 兆候はありました。すべての言い訳にコロナが使用されるのです。郵送物が届かない、決裁をもらえない、納期が間に合わない…すべてが、ウィルスのせいで片付けられていました。新型ウィルスは、我々の身体や世の中の経済的側面にダメージを与えただけでなく、人格等その内面的な本質にダメージを与えたような気がします。

 「コロナの影響で…」と、幾度となく見え透いた嘘をつかれ書類の発送を遅れさせられました。「在宅勤務なので…」と、オンラインで管理可能なはずの在庫確認をできないと堂々と納期の遅延をされました。
 新型コロナウィルスは、嘘をつくことを正当化し、謝罪等、ごく自然に内面から湧き出る感情を失わせたと感じています。心の中の大切な本質的部分を人から奪ったということです。発送するのも、期日通りに納品するのも、その当事者の責任であって、そう意味では責任の所在をも曖昧にさせました。週休4日や兼業を許容してしまえば、責任という概念すら無いに等しくなりそうです。

 ナビスコカップ準決勝は、ノックアウト方式の一発勝負ということもあり、非常にスリリングで緊張感ある展開でした。そうさせたのは、ピッチに立った22人に他なりません。指揮官に与えられた明確な責任を理解し、実践していました。老獪ともいえるキャプテンとファインセーブを連発したGKの存在したレイソルに軍配があがりましたが、誰一人としてサボらない22人に心を打たれました。雨の三ツ沢に足を運んだ敗れたマリノスのサポーターも同じ気分だったのではないでしょうか。

 スポーツではよくプレーの質が話題になります。もちろんプレーそのもののクオリティを示してはいますが、そこにサボらず責任を全うするという要素があると僕は確信しています。心の隙が失点に結び付くし、後ろめたさが勝敗を左右するということです。
 僕たちは、あらためて心を取り戻す必要があるでしょう。感情を持ち、表現し、感謝したり謝罪したりする心。自らの責任を認識し全うし、未来を見つめる志。過剰な報道や不要な情報に左右されず、自分を信じる勇気。
 トリキの錬金術などと制度の隙間に注目し、重箱のスミをつついて囃し立てている時間はないはずです。

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