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結果発表:ウィークリーぱか詠み第2回『NHKマイルカップ』


はじめに

初めに、皆さんに謝らなければいけないことが2点あります。

まず、結果発表が遅れてしまい申し訳ございませんでした。個人的に色々ありまして……これからはできるだけ日曜日に更新するようにします。もう2敗してるけど。

そして、お題が難しかったかと思います。それについても申し訳ございません。ただ、お題を決める段階でもやりづらさは把握していましたが、やりづらいからと言ってお題にしないのも勝手すぎるかと思い今回は採用させて頂きました。まあ実際のレースもめちゃくちゃ難しかったし……

というわけで、寄せられた短歌の紹介に移ります。
今回はこちらの5首をお寄せいただきました。

ありがとうございました!

参加者数も、投稿数も前回より増えてありがたい限りです。投票も前よりは増えて、少しずつですが盛り上がりを感じます。

また、メンバーの方に投票に関する外部ツールを教えていただきました!(ありがとうございました!)それについては第3回の投票の際にまた説明させていただきます。

長くなりましたが、結果発表に移らせていただきます。それではどうぞ!

結果発表

第3位

東京に見つけた真珠の煌めきがノルマンディーの風となるまで

2Pt 藤井柊太

モチーフ:シーキングザパールさんに寄せて

 シーキングザパール、その名が意味するは「真珠探し」。そして、史実のシーキングザパールと言えばモーリス・ド・ギース賞(当時の呼び方。近年はモーリス・ド・ゲスト賞と呼ばれることが多いそう)でしょう。初の日本馬による欧州G1の制覇であり、15年間破られないコースレコードでの勝利でした。
 それを踏まえたうえでシーキングザパールのNHKマイルカップに注目したのだと思われますが、個人的には「真珠の輝きを東京に見つけ出した」としたのが衝撃でした。私であれば「真珠」をモーリス・ド・ギース賞にしてしまうでしょう。おそらく上の句は「名馬の肖像」よりインスピレーションをうけたものでしょう。

https://www.jra.go.jp/gallery/column/syouzou/pdf/2019-07.pdf

 私はこの歌を真珠の輝きを初めに東京(NHKマイルカップが行われた東京競馬場)に見出した彼女が、ノルマンディー(モーリス・ド・ギース賞が行われたドーヴィル競馬場)の風へ至る、その道のりに思いを馳せた一首であると読みました。
 当時は外国産馬はクラシックレースに出られなかったこともあり、NHKマイルカップはそういった馬が実力を証明する絶好の機会だったそうです。そこで優勝することは、今とは意味合いが大きく違ってくるのでしょう。余談ですが、翌年の優勝馬はエルコンドルパサーでした。
 と、ここまでいろいろと語りましたが、深読みすればいい、という歌でもないように思います。一目見て、読んで、その吹き抜ける風のような歌と彼女に思いを馳せる、それが一番にこの歌の良さを味わえるんじゃないかと。
 ウマ娘の二次創作短歌って、わりと詰め込まれがちというか、読み込むほどネタとかが出てくる、いわゆる「スルメ」が多い印象なので、ここまでさわやかな歌は意外で、かつ新鮮でした。それでいてシーキングザパールにチューニングを合わせてくる。藤井柊太さんの腕前が光った一首だと思います。

第2位

外回り早め先頭その先へ翼は世界へ広げてみせる!

3Pt (1名) キマユ

モチーフ:エルコンドルパサー(第3回NHKマイルカップ)

 先に述べた、シーキングザパールの翌年のNHKマイルカップ。ウマ娘でエルコンドルパサーがシーキングザパールを慕うのはここが元ネタかと思われます。

 レース映像で9のゼッケンを追いかけていただければ、上の句の「外回り早め先頭」の意味が分かるかと思います。本当にそのまんまだから。
 まずは「翼」について。エルはよく自分をコンドルに例えますし、そういった意味で彼女自身がよく発言しますが、当然のこと彼女に本物の翼はありません。では、彼女の翼とは具体的に何か。
 コンドルにとって、翼は羽ばたくためのもの。そして、エルにとって羽ばたくとは世界の舞台で活躍すること。それは言うまでもなく、自分の実力によって為されることです。その実力を証明するためのもの、つまり「脚」がエルにとっての「翼」なんだと思います。ただ、これはこの歌に限らず、アプリ内でもいえる話ですので、こういった背景からキマユ氏はチョイスしたのではないかと。
 続いて私が注目したいのは、第三句を踏まえた下の句です。「その先へ翼は世界へ広げてみせる!」、エルらしく力強い言葉運びですが、あえて「翼『は』」としたのには意図があるんじゃないかと。第三句をでは「その先へ」、第四句では「世界へ」と、同じ役割の「へ」でリフレインしつつ、後者の対象を翼としています。では、前者の対象は?
 まず、作中主体はエルコンドルパサー自身でしょう。そして、「外回り早め先頭その先へ」と言っているわけですから、レース途中、特に最終直線で先頭に立った彼女自身の決意と勝利の雄たけびの歌と読めますが、つまりまだゴールはしていないんですよね。そして、先頭のその先といえば、ゴール、ひいてはその先にある更なるレースでしょう。それを見据えての「その先へ」ではないでしょうか。
 つまり、最終直線を先頭で走る彼女が、ゴールとその先にある戦いを見つめた上で、それが極まった末の世界への飛翔を捉えた叫び、それをエルコンドルパサーらしいエネルギッシュさで表した歌であると読みました。


第1位

悔しさは塞がる進路のようにあり壊れた柵の転がる朝に

3Pt (2名) 藤井柊太
1着おめでとうございます!

モチーフ:タニノギムレットさんに寄せて

 史実のタニノギムレットは、皐月賞とNHKマイルカップ共に3着で、その後ダービーを勝利しました。その3着だったNHKマイルカップですが、1着馬テレグノシスの斜行に進路が塞がれた不利があったそうです。武豊も珍しく激怒していたそうですが、その悔しさを力に変えてか、その2週間後のダービーでは末脚一線、見事に優勝しました。
 氏は、このあたりの心情を詠みこんだのだと思われます。言うまでもなく柵とは馬を自由にさせないためにあるもの、つまり進路をふさぐためのものです。また、「進路」とはレース中の進路も表しつつ、レースプランの道のりも表しているように思いました。
 ウマ娘なら、出場するレースで勝ちたいと思うのは当然のこと。ウマ娘のタニノギムレットがどうしてNHKマイルカップに出たのかは今の時点ではわかりませんが、3着に、それも理不尽に負けたならばその悔しさは大きいものでしょう。
 もし仮に、彼女が「G1バとしてダービーに、クリスエスに勝ちたい」という思いでNHKマイルカップに出場していた場合、その時点でそれは叶わなくなってしまったのですから。そういったことを上の句で表しているのでしょう。
 そして、壊れた柵と朝。おそらく彼女が壊した柵でしょうが、先に述べたように柵とは進路を塞ぐもの。それが転がっている今、もはや彼女を邪魔するものはありません。「朝」は夜明け、つまり希望への転換点のメタファーと読みました。
 総合的に、一見すると柔らかい印象を受けますが、この中に彼女の悔しさとダービーへのギラついた思いがあるように感じました。エピソードと心情表現をうまく一つに落とし込んで、そのうえで彼女らしさも出している、非常に素晴らしい一首だと思います。

 あと、言葉のチョイスにASIAN KUNG-FU GENERATION (アジカン) の
「転がる岩、君に朝が降る」を感じました。

 ただ、そこから繋がらなかったんですよね。たまたまなのかもしれないけど、何かあったら教えてください。

第4位以下の紹介

遊んでるみたいに駆ける直線の先にほんとの〈世界〉があるよ

1Pt 藤井柊太

モチーフ:エルコンドルパサーさんに寄せて

武蔵野の青葉は光線に映えし プランD 証明段階

0Pt 蒼豆

モチーフ:ディープスカイ
NHKマイルから日本ダービーの変則二冠。
これを達成したのはキングカメハメハとディープスカイのみです。その中でもディープスカイはアグネスタキオン出たくても出れなかった日本ダービーの栄冠を掴みました。「プランD」はアグネスタキオンから引き継いだプランのこと。タキオンとは違い最初から順調でなかったディープスカイ。それでも意志を継いでダービーに向かう様を詠いました。

たくさんの投稿、ありがとうございました!

総評

本当に遅くなってしまって申し訳ございません!!!!!!!!

また、たくさんのご応募ありがとうございました!本当は全ての歌に評をお返ししたかったのですが、本当に遅くなってしまうのと、思ったより疲れちゃって……

さて、今回から参加してくださった藤井柊太さんとキマユさんがその手腕を光らせる結果となりました。蒼豆さんは多方面に博識な上でそれをふんだんに歌に落とし込んでくるのですが、今回はそれが少し伝わらなかったのかもしれません。私は募集段階で元ネタ等を教えてもらえるので「へ~」となりますが、参加者側でパッと投稿歌を出されるとわかりやすい短歌に目移りしてしまうと思います。

というか、わかりやすい短歌が多かったですね。先に述べた通り「スルメ」が多い印象でしたが、別にそんなことないのかも。個人的には、わかりやすい短歌を好むのでもっとちょうだいの気分です。ただ、難しい短歌も評の書きがいがあって面白いんですよね。

よければ、ぜひ皆さんも評を書いてみてください。新たな発見がたくさんありますし、他人の短歌を見るのも、自分で短歌を詠むのもすごく楽しくなります。

ところで、今年のNHKマイルカップは難しかったですね…… 私の本命は12着でした。珍しいほどの主役不在でしたが、それだけ結果にはドラマがあるレースでした。

もしかすると、来年にはこれを詠んだ短歌に出会えるかもしれませんね、今から楽しみです。

次回のお題

次回のお題は、「ヴィクトリアマイル」です。

また、告知が遅れてしまったため、締め切りの日時を延長します。
短歌の投稿の締め切りを5/13 (土) 23:59、投票の締め切りを5/15 (月) 12:00とさせていただきます。

『ぱかたんか』について、詳しくはこちらをご確認ください。

それでは、第3回でお会いしましょう。

南の柳

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