結果発表:ウィークリーぱか詠み第13回『エアグルーヴ/ファインモーション』


はじめに

なんかめちゃくちゃお久しぶりです。

今回は「エアグルーヴ/ファインモーション」をお題にさせていただきました。夏のG1がない期間は、その週の重賞にちなんだウマ娘に注目してお題を決めているのですが、札幌記念はいかんせん関連ウマ娘が多くて、逆に絞ることに。

というわけで「札幌記念が育成目標にあるウマ娘」に絞って、エアグルーヴとファインモーションに決めました。同室なのはたまたま……と思わせておいて、そもそもこの2人が同室になった経緯が(メタ的な意味で)このへんが由来になってたりするのかな、と思います。あとピルサドスキー。

さて、今回お寄せいただいたのはこちらの2首。

ありがとうございました!

では結果発表です。

結果発表

第2位

ケルティック・ノットに終わりはなくて私の終止符として有馬記念

2Pt キマユ

モチーフ:ファインモーション

 「として」のやつだ。現代短歌では、しばしば下の句に「として」を使った歌が詠まれます。いわゆるあるあるってやつ。これも、その流れを汲んだものであると思います。
 さて、この歌をとらえる上で欠かせないのが「ケルティック・ノット」。装飾における模様の一種で、終わりのない一本の紐でできているのが特徴で、その性質から、「永遠」「循環」といった意味を持ちます。

ケルティック・ノットの一種「サーキュラー・ノット」は、
円形が「永遠」の意味をより強調する。

 ファインモーションのウェディングドレス勝負服のヴェールにも、サーキュラー・ノットの意匠がみられますね。そして、ホーム画面での会話ではケルティック・ノットは「永遠」の意味を持つ、とファインモーション自身が発言しているあたり、ウマ娘世界ではそちらが意識されているように思います。キマユ氏もそこから発想したのでしょう。
 さて、そんなケルティック・ノットを主軸に、ファインモーションの持つ「有限という運命」を呼んだ一首であると思います。ケルティック・ノットの終わらないことと、自身の競技生活が終わってしまう彼女の有馬記念。相反する2つは一見すると共存しませんが、「トゥインクルシリーズでの競技生活が終わっても、人生が続いていく」ということなのかもしれません。つまり、Life goes on。
 もちろんのこと、ファインモーションはそのことに不満などは持っていません。彼女にとって国に尽くすことは走ることと同様に大切なことなのです。とはいえ、そこに寂しさや郷愁のような感情がない、ということは無いと思います。
 そういった、具体的な感覚ではない、ファインモーションの笑顔に隠れた、心のうちを詠んだ歌なのではと思います。感傷的で繊細かつ、ケルティック・ノットというどこかファンタジックなテーマで、とても引き込まれる歌だったと思います。
 しかし、この歌で気になるポイントが1つあります。というのも、韻律がわかりにくいんですよね。書いてる今でも解釈しきれませんでした。どこで句切っても別のどこかがもたついてしまいます。『ケルティック・ノット』という引き込まれる語が良いリズムで導入をこなしているぶん、後の違和感が強調されてしまっているようにも感じます。しいて言うなら、『ケルティック・ノット』に「終わりがないこと」、『有馬記念』に『終止符』の意をまるごと託してしまってもいいのかも。
 とはいえ、私の解釈の話ですので……読み取れてないよYou、という話だったらごめんなさい。

第1位

クローバー旅行カバンに敷き詰めて 遠く、遠くに駆けていく君

9Pt 蒼豆
1着おめでとうございます!

モチーフ:ファインモーション

 一見、こちらもファインモーションを感覚でとらえた歌であるように思います。具体的なイベントや要素というよりは、ファインモーションという存在、その輪郭のうちがわ全てに着目したような感じ。
 上の句は、ファインモーションの「いっとき、その(王族としての)使命を中断して、日本で走ること」を、その物理的、立場的な変遷を「旅」に見立てた表現だと思います。『クローバー』は彼女の象徴であり、その幸運を願うものであり、「名馬の象徴 ファインモーション」のオマージュであるのでしょう。緩衝材代わりに荷物と共に詰められていたことからクローバーが「詰草」と呼ばれるようになったというエピソードへの遊び心もうかがえます。
 下の句は、ファインモーションの歩みそのものでしょうか。アイルランドにいるファミリーから見れば日本は遠い極東の国ですし、トレーナーやSP隊長といった、彼女のそばにいる人から見ても、ファインモーションがトゥインクルシリーズで様々な経験をして成長していくさまは、もしかすると少しさびしさも含んでいるのかもしれません。彼女が駆けていけば駆けていくほど、旅の終わりは近づいてゆくのです。
 それでも、その足取りは軽やかで、笑顔の彼女は楽しそうに走ってゆくのでしょう。
 この歌の良さは、細かい元ネタとか韻律とか、そういった要素的なものではなく、もっと大きな、力強い良さだと思います。皆さんもパッと見て「ああ、いいな」と思ったでしょうし、得点にもそれが表れています。だから、私がとやかく言えることはないかと。強い一撃でした。

総評

ウマ娘二次創作短歌界隈というのは非常に狭いうえに、その中でも位置する場所が偏っているため、ファインモーションはよくテーマとして選ばれる傾向にあります。もちろんそれだけでなく、彼女の持つ境遇や運命、シナリオなど非常に、こう……詩に映えるんですよね。

とはいえ、それゆえにポエティックになりやすく、ウマ娘二次創作短歌によく見られる元ネタをそこかしこに散りばめた歌は少ないように思います(そもそも、母数が少ないという話は置いておく)

それを今回、評という形でとらえるのはとても難しいことでした。成文化されていない、詠み手のファインモーションへの思いを受け手として成文化しなければいけないため、当然ではあるんですが。

早い話、今回は深いところまで解釈できてないし、内容も薄くて短いです。ごめんなさいね。

でも、時に語りすぎることは余計なことだったりするので。ええ、はい、そんな感じで考えていただけると幸いです。石を投げないでください。

次回のお題

次回のお題は『カレンチャン/エイシンフラッシュ/トーセンジョーダン/ゴールドシップ』です。

短歌の締め切りは 8/25(金) 23:59
投稿の締め切りは 8/27(日) 12:00です。ぜひご参加ください。

『ウィークリーぱか詠み』についてはこちらから。

『ぱかたんか』について、詳しくはこちらをご確認ください。

それでは第14回でお会いしましょう。

南の柳

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