顔色、窺います

いま何を考えておいでですか。

……こちらの話が、いまいちピンときませんでしたか。

そんな顔をしていますね。

顔色を窺うとき、命を削っている気がする。何を考えているのかわからない目、上がらない口角、ご機嫌とは言い難い雰囲気。向こうが考えていることを丸々知りたいわけではないが、全く知れないのは大変困る。

相手の反応を見ながら話を変えてみる。僅かに流れを変えてみたのだが、どうだろう。目も口角も特に変化はないから、この打ち手は失敗だ。残念。

時には意見も曲げてみる。こういうのを『おもねる』っていうのか。しかしながらこれも効果がない模様。一瞬、こちらを小バカにしたような笑みが浮かんだ気がする。ああ、悲しい。被害妄想だとしても、この心は傷ついている。

……なにか嫌われるようなこと、してしまいましたか。

顔色を窺うと、気疲れする。普段の何十倍も精神が疲れる。みんなと仲良くするために、懸命に表情を造る。まるで独り相撲。

仲良くするために、自分独りで勝手に心を削っている。バカバカしいけど止められない、哀れな性質。

明日は誰と仲良くしよう。

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