待ち時間にて

青いバーが0%から100%に到達するまでを見つめている(いま35%)。

ネットの海を、思うままに掻き分けているときは、数十分さえ一瞬。

早く帰りたいと思いながらエンコーディングのバーを見ているときは、一秒でさえ待てない。

楽しい時間はあっという間で、面倒な時間は長い(いま52%)。

パソコンも待ちくたびれてスリープモードに入ろうとするから、叩き起こしてまたバーを見つめる。

機械の小さな唸り。
遠くでドアが開く音。
誰かの足音。
画面と指が触れ合う微かな打音。

ただ待っている。

何も考えないでいると、いろんな音が聞こえる。

意味もなくデスクトップに並ぶアプリケーションを順番に見つめる(67%)。

壁際に並んだ本の背表紙に目を走らせるが、どれも読んだことのないものばかり。

誰かの足音が消えて静かになった。今日の夕飯は何にしようかな。

机に靴の先をコツンと当てると、薄い金属の板が軽く音を立てる。思ったより反響しないが、振動がつま先を伝ってやってくる。

一定の感覚で何度かコツンコツンとやって、ふっと止めると虚しいような静寂が来る(93%)。

急に飛んできた連絡。

開いてみたら、かつて顔を見たことのある人が随分と活躍している様子。羨ましい。私はこんなところでまだ燻っているというのに。

急に騒がしくなった脳内。読み終わって顔を上げたらエンコーディングが終了していた。

お疲れ様でした。さぁ、帰ろ。

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