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【読書の思い出】島本理生

島本さんの作品を初めて読んだのは「ナラタージュ」だった。
きっかけは松本潤さんと有村架純さんによる映画化。
圧倒された。
島本さんは私と同年代。
しかし、この「ナラタージュ」を書いた時の彼女は二十歳そこそこ。
その恋愛観に圧倒された。
二十歳の私はこんなにも深くなかったぞ。
それなりに好きな相手も、自分なりに一生懸命だったようにも思ったけれど、
こんなに深く誰かに囚われたことはなかった。
今もないかもしれない。
文章表現云々よりも、感じる感情の幅、種類、奥深さが根本から違うんじゃないかと思った。
恋愛感情はこんなに人間を根底から揺るがす、深く大きいものなのか、と。
ただ激しいだけじゃない。
深かった。

直木賞受賞&映画化で話題になっていた本作。
直木賞というだけあって、それまでの島本さんの作品から考えるとエンタテイメント性が強く感じられた。アナウンサー志望の女子大生が自分の父親を殺害するというセンセーショナルな事件から物語が始まり、「どうして」という謎解きがある。それに加え、臨床心理士の主人公が抱えた心の傷との向き合い。

基本的には明るくない物語が多いんだろうな。こちらもなかなか狂気じみていた。本を裁断することで癒されていく主人公、というのがヒリヒリと迫ってくる。

先日、息子が同級生の女の子に「いつも本を読んでるから、何かおすすめの本を教えて欲しい」と言われたらしい。「切ない系の恋愛小説がいい」と言われたらしく、恋愛小説を読まない息子は私に「どれがいいかな」と聞いてきた。
私は島本さんの描く恋愛小説が好きなのだが、まだ傷ついたことのないであろう小学生の思い描く恋愛小説はこれじゃない気がする…と思い、「やっぱり図書館戦争でいいんじゃない?」と勧めておいた。
報われない恋もあるということを、彼らはいつ知るんだろう。知らないままでもいい。本の中だけで知るのでもいい、と思ってしまう私はやはり親バカなんだろうな。


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