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【ドラマ感想】ナビレラ〜それでも蝶は舞う〜

派手な演出や展開の多く見られる韓国ドラマの中で、こちらは久しぶりに私が見た内面や人生、家族を描いた胸に静かに響くドラマだった。

あらすじ

70歳のシム・ドクチュルは、ずっと公務員として真面目に働いてきた実直なおじいさん。ある日、バレエダンサーのイ・チェロクが舞う姿を見て、自分も昔バレエを踊りたかったことを思い出し、習いたい、と言う。
チェロクは自分が生きることに精一杯。自身のバレエにも集中できずにいた。その様子を見かねていた、師であるスンジュは、おじいさんにバレエを教えるようにチェロクに命じる。
始めはイヤイヤ教えていた、チェロクだが、おじいさんのまっすぐなバレエへの情熱にやがて心を動かされていく…

70のおじいさんがバレエを始める。
一言で言ってしまえば、それだけのお話だけれど、そこには人生への葛藤があり、家族というしがらみがあり、非常に多くを自分に問いかけてくれる味わい深いドラマだった。

年齢を越えた友情

「バレエ」という共通のものを通して、チェロクとおじいさんの間にはやがて友情のようなものが芽生える。
事情があって、家族のいないチェロクにとっておじいさんは本当のおじいさんのようでもあり、互いに支え、助け合う友人のようにもなる。
「何者」でもない、ずっと真面目に郵便局員として、働いてきたおじいさんだけれど、いや、だからこそ、おじいさんの言葉は一つ一つ胸に迫り、心を溶かし、正しい方向へと導いてくれる。
何度もチェロクを助けてくれるし、その愛情はチェロクだけではなく、周りにいる人の心も動かしていく。
70を超えてバレエを始めることは、ひどく勇気のいることだろうし、体にも堪える。それでも、バレエを好きな気持ちをばかにしないでほしい、その気持ちだけはチェロクと同じだと言われ、チェロクもきちんとその言葉を受け止める。

こんなふうに年を取りたいし、その言葉をきちんと胸に留めて、1日1日を過ごせる人間になりたい、と思った。

おじいさんを演じる、パク・インファンさん。
笑顔が優しく、人柄の滲み出る、演技。
若い時に苦労をし、たくさんの嫌なことを飲み込んできたであろう、おじいさん。

私も、おじいちゃんを思い出した。

幸せなとき

チェロクとおじいさんだけではなく、沢山の悩める人が、それぞれに「自分が一番幸せな時は何か」を考えて生きている。
孫のウノは、一流企業に入ることをずっと父親から求められ、受験戦争を生き抜き、就職活動に勤しんでいる。
次男のソングァンは、もともと医者だったが、患者を死なせたことから立ち直れずにいる。
チェロクの高校時代の友人、ホボムはチェロクの父親が監督を勤めるサッカー部に属していたが、チェロクの父親の部内暴力によって廃部になり、サッカーを辞め、立ち直れずにいる。
おじいさんは、皆を優しく見守っている。
おじいさんが70を超えて、「好きなこと」に向き合っている様子から、皆がそれそれ「自分が本当に好きなこと」「幸せなとき」を見つけようとする。
いつも、「好きなこと」をできる訳ではないだろう。
時には家族のために、自分を犠牲にするときもあるだろう。
けれど、自分が「幸せなときはいつか」を分かっているのと分かっていないのは、違う。
それを忘れてしまうのが、怖い、とおじいさんは言う。

素敵な夫婦

おじいさんの奥さんは、ナ・ムニさん演じる、ヘナム。
貧しい時もともに支え合い、苦労を分かち合ってきた。
子どもたちの幸せを常に願い、自分たちの全てを犠牲にしてもいいと思っている。
優しいおじいさんに時に強く言うこともあって、傍目には
おじいさんは「尻に敷かれてる」状態。

けれど、心の奥では誰よりもおじいさんを理解し、尊重し、敬っている。

理想のカップル、ご夫婦、たくさん見るけれど、
道ゆくおじいさんとおばあさんの手を繋ぐ姿ほど微笑ましく憧れるものはない。
ただ支え合っているだけ。

おじいさんがバレエを始めたとき、子供たちに恥をかかせたくないからと反対したおばあさんだったが、
長男がおじいさんを強く責める姿を見て、
激怒する。
「子どもは偉くなったら、親にそんな口をきくのか」と。
それを黙って涙しながら聞くおじいさんも優しいし、
おじいさんの味方をすると決めたら、とことん味方をするその姿も
涙を誘う。

見習いたい生き方

家族の在り方や、夫婦の在り方、自分の人生について、年の取り方…たくさんドクチュルさんに教えてもらった。

チェロクは才能あふれる、バレエダンサーだけれど、
何者でもない。
一生懸命毎日を生きる、ドクチュルさんにこそ、たくさんのことを教えてもらった。

人に優しく、誠実に。
毎日を丁寧に、大切に。



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