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【読書日記】昨日がなければ明日もない

「昨日がなければ明日もない」宮部みゆき

杉村三郎」シリーズ第5弾。
始め、舅の会社で広報室の一員として働いていた杉村三郎が紆余曲折を経て、私立探偵となっている…
本人はごくごく普通で地味な感じなのに、私立探偵になっちゃっているこの波乱万丈人生…そんな人が「トンデモ」な人に出会っていくというところが、なんとなく人生って色々あるよね…と思わされて、好きなシリーズである。

「私立探偵」って一体…と思うんだけれど、
私の狭い狭い世界のイメージではやっぱり「浮気調査」で、
まさか事件を解決すまい…とは思う。
この物語の中でも、浮気調査や、身辺調査があったりする。
あとは公にしたくないから、警察には頼みたくはない案件…家族内で納めたい案件など。
今作は、中篇が3つ入っており、
一つ目
絶対零度
結婚した娘が自殺未遂をして1か月以上連絡が取れない。婿は、「母親が毒親だから、自殺した。だから会わせられない」と言う。どうなっているか調べてほしい。調べていくと、どうも不穏な動きがある…

二つ目
華燭
大家さんのお付き合いの都合で、結婚式の付き添いをすることになった。行ってみれば会場で同時に二つの結婚式が取りやめになって大騒ぎ。一体どうなっているのか…

三つ目
昨日がなければ明日もない
シングルマザーの女性が、離れて住む息子が事故にあったが、これは事故ではない。事件だ、証拠を集めてくれ、と依頼を持ちかける。学校でもよく騒ぎを起こす、と事前に聞いていた三郎は、あえて引き受けて、きっちり調べることで彼女を説得しようと試みるが…

「杉村三郎」シリーズはいつも後味はよくない。事件を扱っているのだから、そうだろう。
このシリーズではいつも、人間の暗い闇や、どうしても直らない、手に負えない悪が出てくる。
杉村は、まだ表面に出ていない、警察が気が付いていない事件に気がつき、なんとか私立探偵なりに、間に合わせようとするが、間に合わない。一つ目と三つ目はまさにそれで、彼はきっと間に合わなかった自分を悔いている、と思う。
いつか間に合うようになるのだろうか。
ヒーローみたいに華麗に人の命を救ってくれるようになるんだろうか。
けれど、私立探偵が入り込んでいける範囲は限られているし、
依頼されてきた時点でもう間に合っていないケースが多々ある。
そもそもの原因を探ってみても、「じゃあどうすればよかったのか」
それは私立探偵で解決できるようなシロモノではないように思う。
そういうジレンマを杉村自身も感じながら、
新たなステージへと変わっていく予感のした今作だった。

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