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【覚書】珍しく色々考えて頭を整理したいこと

週末、実家に帰った。
最近は娘が一緒に帰りたがらず、私と息子の二人で帰っている。

実家は私が保育園ぐらいの時に経ったから、
かれこれ30年以上。
あちこち古くもなるし、汚れもある。
母は私と一緒で片付けや掃除が苦手だ。
掃除をしないわけではないが、
あれやこれや物があって、表面的な掃除しかできない状態である。
兄が引っ越せるように、あれこれと父の遺品の片付けと
ともに掃除もしたが、まだまだ古いものが残っているし、
汚れも目につく。

娘は実家に帰ると同い年のいとこと一緒になって隅の方にある
何だかわからないものを出してきては
押入れの中に入り込んだりして、遊んでいる。
そうすると、アレルギー性の鼻炎だか何だかが出て、
鼻水をぐずぐずいわして、目を真っ赤にして夜眠るのが
大変になる。
どうも、それがしんどくて、最近実家に帰りたがらないのではないかと
思う。
私も、私で、実家は私の実家であって、娘も同じように
私の実家を愛してくれたらこの上ないとは思うが、愛せなくても
仕方ないなと思い、パパが家で一緒にお留守番してくれたら
それはそれで仕方ないと思うようにしているのだが、
パパは、娘が本当はママといたいのに
我慢しているのではないかと思い、
何とかならないか、と言う。
(パパが寂しいのもある)

夫は確かに片付け上手というか、綺麗好きで、お風呂掃除なんかも
こまめにしている。(そこは片付けへんのかい、という部分もあるが)
だから、私の実家が片付いていないことを
何度か「お義母さん、片付け下手ですね〜」なんて揶揄することがあった。
母も私も笑って冗談で流しているが、
実家の不要と思われるものを私たちが捨てようとすると、
何だか不機嫌になることがあった。
半年ほど前の、父の遺品整理という名の大掃除でも
あれやこれやと親戚が集まって、次から次へといろんなものを
ついでに捨てられたのは
ショックだったようなのだ。

実家にある、私たちが「不要」だとみなすもの。
いつ買ったかわからない民芸品や、
大昔に人からもらったと言う飾り物。
ホコリをかぶって、奥に佇んでいるだけで、
目にすることもないもの。
箪笥の上に何年も置かれた、古い日本人形。

「これ、要る?」と聞くと、
「それは昔の彼氏にもらったやつ」と答える。
え!そんなん要る?!と思うのだが、
母は捨てるのを渋る。
実家が大きな家で、たとえば庭に大きな蔵があれば、
そこに残っていたりするかもしれない代物たち。
年数が経てば価値が出てくるのか、いやはや出ないままやろ、
みたいなものたち。
でも、実家には蔵がなくて、現時点では価値のないであろうものたち。
元彼のことがよほど好きだったのかと、問うと、
私に遠慮してか、そうではない、と答える。
じゃあ、捨てたらいいやん、スッキリした綺麗な理想の部屋を
目指しなよ、と冗談めかして説得する。
娘が埃がしんどくて最近来ないのかもしれない、とも
やんわりと伝える。
それもわかった上で、やはり渋っている。

父は物に執着がなく、何でもポイポイ捨てる人だった。
執着がないから、あまり高価なものを買う人ではなかったが。
それを思い出し、「あんたはお父さん似やな」と言われる。
父も片付けが上手なわけではないが、
とにかく物に執着がなくて
母が残そうとする子どもの思い出の品もよく
捨てられたらしい。
父と母は見合い結婚で、子どもの目には
仲よく映る時期もあったし、そうでない時期もあった。
夫婦というのは、やはり本人同士にしかわからないもので、
母にはかなり不満もあったのだろうと思う。
物心ついて私が「話せる」人間になると、
時折愚痴をこぼすことはあった。
女同士、結婚している者同士、
私たち母娘はよく話す方だと思う。
私はお父さん子で、父に似ている面も多々あるが、
女同士、母の気持ちもわからないでもなく、
結婚してからは母の肩を持つようにもしていた。
父が亡くなってから、父への不満を漏らす母に
一抹の寂しさもあるが、
突然亡くなってしまった父に母なりにあれこれ思うことがあるのだろうと、
生きている人間を大切にしたいという思いもあり、
母の愚痴は聞くようにしている。

母と二人、あれやこれやどうでもいい話をしている。
父が亡くなってから気落ちしていた母も
最近は妹たち(私のおば)と出かけて、忙しく
元気にしている様子。
妹たちが歩ける範囲に住んでいること。
それは母にとって大変心強いだろうこと、
私にとっても、離れている分を叔母たちにカバーしてもらっている
ことを十二分に感じる。
妹という存在と、娘という存在はまた違うのだろうな、と思う。
「私にも女きょうだいがいたら良かったのに、って最近になって
思うわ」とポロッとこぼすと、
母が
「チャンスはあったんやけどな」とこれまたポロッとこぼす。
「え?」と聞き返すと、
「あんたの下にできたんやけど、お父さんに
おろすように言われた」と衝撃的な発言が飛び出した。
子どもに話すような話ではないし、
父が生きている時には
その話はできなかったのか、一度も聞いたことのない話だった。
長兄の上の流産したことがあるのは聞いていたが、
私の下にいたとは初めて聞いた。
「四人目は、旅行も行けなくなるし、無理やって言われた」と。
母の言い方と表情で、母は産みたかったのだということが分かる。
そして、それをさせた父に対して、
拭いきれない負の感情があるということも。

特別、喧嘩ばかりしている夫婦でもなかった。
円満な家庭だったとも思う。
私が結婚して「夫に対する不満」を共感できるようになってからは、
「お父さんは私の意見は何も聞いてくれない」という
不平はよく聞いていた。

母は、論理的に物事を筋道立てて、話をできるタイプではなく
どちらかというと、感情が先に立って、うまく口が回らなくなるタイプだ。
そうして、飲み込んできた言葉がたくさんあるのだろう。

何でも話す親子だと思っていた。
いろんなところに二人で行ったし、
あえば話は尽きない。
でも、聞いていない話はたくさんあるのだ、と思った。
私も、子どもたちに絶対言わないでおこうと思っている
後ろ暗いことがある。
それは万が一にもこれをみられたら、ということも
考えて匿名のこの場でも絶対に書かないと決めている。
夫は知っているが、絶対に子どもたちには言わないで、と
言っている。
それとは別に母に言っていないこともある。
結婚生活で、夫に対して許せないことを何でも言えるわけではない。
母に心配をかけたくないからこそ、いえないことがたくさんある。

母も言えないこと、言わないことがたくさんあるのだ、ということ。
そんな当たり前のことを
今回改めて思った。
母が捨てない物たちが
それと関係しているのか、関係していないのか、それは
わからない。
夫は、「そんな重く受け止めすぎやろ。捨てたらいいやん!」と
言うけれど、
意外に私の母も繊細なのだ。
「私は強い」と言い聞かせるように、
「お母さんは大丈夫」と何度も私に言うが、
意外とセンシティブなのよ。私の母は。
捨てない物たちと、言わないことと母の思いと
関係はないようにも、思う。全然関係ない話で飛び出た部分だから。

何か特別な感傷的な思いがあって、それらのものを
捨てられないのかどうかはわからない。
ただ、帰ってから何となく気になって、
「捨てたくなかったら、捨てなくていいからね」と
LINEすると、
「多分捨てるとは思うけど、もうちょっと考える。
あれもこれも捨てるのがなんだか先が見えるようで
寂しかっただけ」と返事が来た。
私はそんなつもりはなかったけれど、
終活させているような気分にさせてしまったのかもしれない。

実家の整理、とか一時期よく記事になっていたが、
我が家も一緒だなあと痛感する。

私たちは何度言葉を重ねても、
本当のところはお互い、
一心同体で通じ合えるわけではないから、
わからないことが多い。
父ともよく話した方だと自負していたが、
亡くしてから、父が考えていたことを
ちっともわからなかった自分に気がついた。
夫のこともよく理解しているつもりで
「あなたのことは私が一番理解しているから、
私のことをもっと大事にしなさい」なんて豪語しているが、
実際のことは夫の孤独を本当の意味で埋めてあげられるのか
わからない。

ただ、わからないことを
わかっておこう、と思った。
無理矢理に何かを押し通すことのないように。
一瞬でも、勘違いでも、相手に寄り添えるように。
寄り添ったつもりになれるように。
努力をやめないように。

娘には帰ってから「次は一緒に帰ろうね」と
伝える。
どちらも大切なのだ。
それはきっとお互いにわかっているはず、と
信じたい。

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