『ぽろぽろドール』の感想
豊島ミホ先生の『ぽろぽろドール』を読み終えたので、感想を書いてみる。と言うより、感想をめちゃくちゃ書きたい欲がすごい!というくらいに面白い作品でした。
ここからネタバレ含みます。
何本もの短編をまとめた一冊だったけれど、それぞれの主人公がドールに向ける愛や、寂しさや、憎しみが生々しくも美しくて、人間より遥かに綺麗な存在(顔もそうだし醜い心もないし)に誰もが取り憑かれているようだった。取り憑かれているように夢中になる姿が、読んでいてすごく自分のドールへの愛にも当てはまった。
自分のためだけに泣いてくれる存在、自分のための涙、毎日を彩る存在、運命……ときめかずにはいられないし、自分のお気に入りのドールの顔が思い浮かぶ。
物言わぬ存在の方が自分の心を受け止めてくれる時は多々ある。自分の心の投影だろうし、欲しい言葉や、欲しい表情をその時に与えてくれているように思えるのだろう。
ドール、というものを初めて「ただのオモチャじゃない」と思ったのは小学生の時に親にねだって買ってもらった、プーリップが発売元のローゼンメイデンのドールだ。薔薇水晶からはじまり、真紅や雛苺などほぼ全キャラを揃えていた気がする……。当時の私には裁縫の能力がなかったけれど、この作品に出てくる主人公の一人は裁縫を学び、服だけでなく小物なども自作してブログにアップしたりする。私もドールにハマるたびにブログやTwitterに喜んで投稿してしまうので、その気持ちがとてもわかった。つい病みつきになって、ドール沼に深く沈んでいくのだ。
人形しか愛せない少年が登場する話では、私もドールは大好きだし、もちろん健全な愛し方をしているわけだけれど、たまにこの世の男性はドールだったらいいのになぁと思うことがある。
夫もいるし、たまに夜の営みだってする。でも気分じゃなかったり、何なりで、その行為がうまくいかず失敗する時があるのだ。その時、私は自分をとてつもなく責める。濡れなくてごめん、と。夫は全然、気にしていないし怒りもしない。でも自分で自分が気に入らなくなる時がある。そして、性欲のないドールが羨ましいし、楽だなぁなんて馬鹿なことを考えるのだ。
プロの作家さんが書いたドールの話に触れるのはこれが初めてだ。かなり深いところまでドールという存在が人に与える感情や日常の変化を描いてくれている。こういう作品を読みたいと思っていた。なんだか、自分がドールに抱く感情の答えを知れたような気がする。
ぜひ、ドール好きの方に読んでいただきたい。
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