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5月12日

ぴあアリーナで5ORDERが出演する「Z祭」が開催されていた日、私は恵比寿に居た。

美勇人くんの個展「SIKI」を観るために。
そして、ミニライブ第一部を見るために。



◇「 Myuto Morita Exhibition “SIKI" 」

当日のポスト。高揚感が伝わってくる。


 舞台「7ORDER」のスピンオフ舞台「RADICAL PARTY- 7ORDER -」(2019.12-2020.01)で主演を務めた美勇人くんは、衣装、グッズ、ダンスの振り付けまで自ら担っていた。舞台をイメージしたライブペインティングも実施していた。


 7ORDERのグッズをデザインをしたり、以前から、アーティストとしての才能とセンスを垣間見せていた美勇人くんが開催する初の個展。「QJWebカメラ部」の連載を続ける中で磨かれたであろう言葉と感性を間近に見る機会が訪れました。

「日常と向き合いながら3年ほど。 少しずつ積み重ねてきた色や模様、焼きつけたフィルムを展示しています。」


 展示された絵画はすべて抽象的な作品でした。
 美勇人くんが生み出す世界観、内面を表しているものなのでしょう。

タイトルの掲示はない
奥は写真が映されている


◇言葉のセンス


 詩的な文章も披露している。

日常の中で湧き出る情感。
得体の知れない色、模様、温度、その他諸々。
それらが構成したなにかで溢れかえっている。
言い表せたら君は安心するだろうか。
触れ合えたら君は納得するだろうか。
果たして君には何色だろうか。
世の中はそんなことばかりである。
人は孤独である。
だから明日がある。

「 Myuto Morita Exhibition “SIKI" 」
Statement.
どうしたってこんな具合。
言葉のふち
音の模様
視線の色
そのあたりに本心を感じる。
わたしはそれが可笑しく、時に悲しい。
日々は儚いが、永遠を伝えてくる。
そんな矛盾な円のなかでの出来心。
要は、みえないものが気になるのだ。 
森田美勇人


 元々、言葉選びの巧みな人です。2021年7月21日に開催されていたファンミーティング「7 no ieeeeeee! de バースdeeeeee!」で、誕生日だった安井くんへのサプライズコーナーで読み上げられた美勇人くんの手紙は秀逸でした。手紙の内容が映像に映されたが、安井くんの名前「けんたろう」を「 太郎」「太郎」「太郎」「太郎」など「けん」をいろいろな漢字に変え、その意味合いを交えてユニークに安井くんの人となりを紹介していました。最後は「やっぱり謙虚な謙太郎がいい」でシメていましたっけ。しかも差出人の名前のところに「未遊人 」と綴られていてさらなる笑いを誘いました。

 自身のブランド「FLAT LAND」の名前にも、いろいろな想いが込められているであろうことは想像できます。

 2022年9月30日から 渋谷モディにて開催された、 阿部顕嵐と美勇人くんとの二人の展覧会のタイトルは「チャンネル顕嵐、ふらっと森田美勇人」でした。遊び心のきいたネーミングです。
 日本語の「ふらっと」は、気軽に出かけたりやって来たりする様子を表す言葉。英語で「FLAT」は、平ら平たんであり、起伏がないことを指す。最近では「先入観や偏見に囚われない」という意味で使われることも多いようだ。美勇人くんは、そんな「フラット」という言葉に、日常的な、堅苦しくない居心地の良さを感じているのでしょう。


◇ミニライブとトーク


 15時開場、番号順にライブ会場へと入る。100人ほどしか入らず、手にドリンクを持ちながらのスタンディング。16時開演。美勇人くんは、SAG HARBOR(サグハーバー)のフラワープリント シアーシャツにジーンズといった格好で、個展グッズのステンレスボトルを2つ持ってふらりと登場した。白いほうにステージドリンクを入れているらしくストローを差して。黒いほうは花を活けて花瓶のように使用していた。2つともステージ後ろのテーブルに置いた。オレンジのリップを塗っていてちょっと驚いた。
 ステージは狭かった。向かって右手にキーボード兼ギター担当の方、左にドラム、センターに立つ美勇人くんのスペースはたった1.5m四方。
 自作の曲を4曲披露した。楽器は演奏せず、スタンドマイクで時にはハンドマイクにして歌い、合間に踊る。

 ライブが終わるといったんはけ、10分の休憩後にトークコーナーがスタートした。美勇人くんは、グッズのSIKIと刺繍された白Tシャツに着替えていた。

 じとーっと集まる視線に耐えかねたのか、「動物園の動物みたいに?見るのはやめてください」と言った。
 タンブラーに活けられた花を指して、今日は5/12、母の日だから持って来たのではなく、たまたまいただいたから飾っただけらしい。
 何をやっても「可愛い〜!」コールが続くと、「可愛くはない。キモいです。キモかわいいでお願いします。」
 「特製カクテル「siki」はどうですか?飲んでください!」とやたら宣伝する。一生懸命200杯くらい作ったから、と冗談を言った。誰かから「レモンが入ってない!」とクレームが入る。森田美勇人特製カクテルsikiには、アルコール入りとノンアルコールの2種類があったが、どうやらノンアルにしかレモンの輪切り?が入っていない事が発覚する。そんな掛け合いが気軽に出来ちゃうくらい狭い空間だった。

 皆が飲み物を手にしたところで美勇人くんがステージと客席を隔てる台に上がって、いっしょに乾杯。

 軽くグッズを紹介し、それから個展に先駆けて質問を募集していたがそのうちの幾つかをピックアップして答えていった。

◆「どんなカメラで撮影してますか?」

 オートのフィルムカメラを持ち歩いてる。わからないからとりあえず名前だけで「μ(ミュー)」という機種を選択した。デジカメも持ってるけど、やり直せちゃうから。フィルムだと諦めがつく。やり直しがきかなくて、受け入れられるから、多用している。

 やり直しのきかないものを選びがちです、とも言った。絵もそう。その時その時の気持ちをぶつけられたものを残す。TシャツのデザインはiPadでやる事もある。絵を描くときは、筆は使わない。ボロ布とかバスタオルをちぎって描いている。

◆「今の自分の色は何色ですか。」

 何となく白だと思う。感情を受けやすいタイプだから。自分が発信するよりは、受けることが多い。自己発信するタイプではないから、白が一番近い。

◆「一番穏やかな気持ちで描いた作品はどれですか。」

花を描いた作品

 花を描いた作品。家に居て、西陽がさしていて、自分の中では穏やかな気持ちで、花を見た時に、これを残そうかなと思った。模写はしないけど、たまたま描いてみようと思ったらしい。描けば描くほどあのタッチになって、これが描きたかったという作品になった。

 逆に激しい居ても立っても居られない気持ちで描いたのは、赤い絵。

赤い絵
能登の震災のとき、愛国心が湧いて、それを納めてみたいと思って描いたそう。

 赤いのかそれが青いのかは人それぞれ。絵に本当はタイトルがついているけど、今回は出してない。自分の中で激しいのか悲しいのか嬉しいのか、そういう気持ちで見て欲しいわけではない。決定付けたくない。皆さんにそれぞれの心情とか生きて来た中で自分の選択で判断して欲しいという狙いがあった。

◆「写真は何枚展示していますか?」

 写真は105枚くらい展示している。QJカメラ部の末端構成員やってるんで、常に写真は撮っている。今は絵を描いていない。音楽をやっている。ダンスも身体表現だし、皆さんもそれぞれ家でできることをやればいいと思う。見せる気がなくていいんですよ。見せなきゃと思ったら見せればいいし。自分探しのきっかけに、絵を描いたり歌を歌ったり踊ってみたり、家でできるので、自分を受け入れられるきっかけになればいいなと思う。自分も、自分を受け入れたくて始めた節がある。ぜひ。

 でトークコーナーは締められました。

 ところが、本来はミニライブコーナーの終わりにするはずだったメンバー紹介を忘れていたことに気付き、突如メンバー紹介が始まる。インスタで見つけて、令和のツールを駆使して辿り着いたスペンサーくん。ライブではキーボードとギターを演奏していた。それから、3年前から仲良くさせてもらってるというドラマーのTakeさん。


◇白


 トークコーナーでも今の自分は「白」だと言っていたし、ライブで披露した自作の曲も「siro」、会場で売られていたオリジナルドリンクの名前も「siro」。何にも属さない「フラット」で色彩をもとっばらった「siro」い美勇人くんがたしかにそこに居ました。


◇感想


 作品はどれも素晴らしかった。独特のセンスが光りそれぞれの作品への思い入れも伝わってきた。

 美勇人くんはこの先、クリエイターとしての道を究めていくであろう。何の邪魔も入らない自由でフラットを手にした美勇人くんの感性はさらに澄み渡り研がれていくことだろう。

 7ORDERとして活動を始めた当初とは、予定通りにいかなかったことが多々あったことと思う。傷つくような出来事もたくさんあったかもしれない。大きなステージ、苦楽を共にした仲間、それらを手放しても自分のやりたいことが鮮明に見えてしまった孤高の人は、ひとりで歩くと決めてしまった。ただそれも7ORDERとしての経験を経てこそ開かれた未来と思いたい。私は今回美勇人くんの中にその証を探しに行った気もする。

 狭いステージの中、手を伸ばせば触れられる程の先に美勇人くんが居る。だけど美勇人くん、こんなステージじゃ狭すぎるよ。もっと広いステージで、のびのび動いているところが見たいよ。美勇人くんがミニライブで披露した音楽は、7ORDERの楽曲とはテイストの異なるものだった。今は音楽作りに熱中しているようだったので、これからアレンジを勉強したり更なる活躍を期待できるのかな。でもさなぴーやモロといっしょに作っていた尖った曲も聴きたいし美勇人くんのラップが聴きたいと強く思いました。

◇???


 個展の紹介で多用される「日常」という言葉に、私は強い違和感を覚えていた。日常?「日常」とは、「とりたてて変わったことのない平凡な日」を意味する。7人で居ることがあたりまえの穏やかな日々を過ごしていた人たちの日常を一変させ、混乱させたのはいったい誰なのか。彼らがその日常を立て直すのにどんなに苦労し時間を要したことか。あなたの一見穏やかな日常は、彼らの日常を蔑ろにした上に成り立つ。

 トークの中に出てきた言葉の数々にも矛盾を感じた。絵のタイトルを付けることで先入観を与えたくない。感情を押し付けたくない。自分はあまり発信しないタイプ、受け手だからと言っていた。また、皆様にとっての癒しやきっかけに繋がれば幸いです、なんて宣う。自分のスタイルを頑固に押し通し、引き留める手を振り払って独り立ちした尖った人の言葉とはとても思えないのだ。この背景を知る者が、果たしてあなたの作品の中に癒しを求めるであろうか。何かがおかしい。制作期とタイトルを掲示しなかったのは、脱退における心情を作品の上に想像されるのが嫌だったことも理由の一つではないのかと邪推した。

 一年前の私は、この記事のように推し量り納得しようとしたのだが。

どうしたってこんな人。
言葉の端
期待の波
背ける。
手を放す。
鈍感力。
本質なのだ。
私はそれが可笑しく、そして哀しい。
永遠に思えた日々は儚く脆い。
そんな矛盾の中での虚栄心。
もう、別の星の住人なのだ。

 7ORDERはもう7ではない事を、今日やっと私は肌で理解し頭で受け入れられた気がする。たしかに「siki」は、私なりのきっかけとなりました。それがとても哀しく思いました。