キズパワーパッドを使ってみる

先日、雨の中で転んだ。

私は反射神経が良いほうだと思う。たとえば机から物を落としてもたいてい床に落ちる前に拾う事ができるし、何かにぶつかりそうになっても瞬時にサッと避けられる。
だから今回も何かに足をとられた瞬間、「あ、これは足を前に出せば踏ん張れるな」と判断した。しかしその日の私はトレンチコートの下にタイトスカートを穿いていた。思い切り伸ばそうと試みた左足はパーンと突っ張って、思うように足が開かない。おっととと・・・とケンケンのままもどかしくも体が傾いていくのは避けられなかった。

あっ、転んじゃう。

倒れていく中で、でも骨折だけは回避しなければと咄嗟に差している傘を下敷きにしようとした。が、手を離すまでは間に合わなかった。右手の指をザっと地面に擦ってしまった。

痛っ・・・

辺りに人影はなかった。
私は素早く立ち上がって態勢を立て直した。
服が汚れていないかチェックする。
良かった。泥などは付いていない。

指の4カ所から血が滲んでいた。
傷がジンジンしてきた。マジで痛い。

転んだ衝撃と私の全体重を受けて盛大にひん曲がった傘の下で、私は泣いた。こんなに泣くのは、いつぶりだろう。小学生以来、いや幼稚園以来じゃないか、っていう泣き方をした。

お、おかあさーーん、い、痛いよぉ~
うっうっ・・・うわーん、い、痛いよ~
ひっくひっく

誰もいない、強い雨音にかき消されるのをいいことに、盛大に泣いた。

泣きながら帰宅すると、家には誰も居なかった。
ひん曲がった傘は閉じることさえできなくなっていて、玄関に置きっぱなしにした。

擦りむいた傷から血がしたたっている。
洗面所で洗い流す。

いってー

指を二本、それぞれ2箇所擦りむいている。
病院へ行くべきが悩んだが、骨折はしていないようなのでやめた。

血を洗い流して、傷口を恐る恐るティッシュで抑える。

マジでいてー

さて、次にどうしよう。
絆創膏を貼ろうと薬箱を開いたら、目に入った。

キズパワーパッド!

今回のこの傷は「キズパワーパッド」で治してみることにしよう。一回使ってみたかったのだが、ついにその機会がやってきた。

指にぺたり、ぺたりと貼っていく。全部で4枚使った。

さっき大袈裟に泣いたせいだろうか、なんだか清々しい気持ちでこの傷を受け止めている。