ボクシングを愛す男。冨森猛と書いて''ボクシング''と読む!
「リングの上は、人生の縮図なんだ」
男は目を輝かせて話し始めた。
小学生の頃からのボクシング愛から始まり、初めて応援したボクサー、思い出のボクサー、心に残るエピソード、2時間半9割9分9厘ボクシングだった。
そして笑顔で言った、
「''ボクシング''というフォントがもう美しいんだよ!」
…小学生の頃の話しを聞かせてくれたけど、僕には当時の少年の顔が思い浮かんだ。
自身もプロボクサーを経験している。
起床は4時前。
ボクシング雑誌10年分ほどが溢れかえった寝室で目覚める。このボクシング雑誌の文通欄で奥さんと出会ったそうだ。
経営している治療院の看板ネコ、ミケちゃんに会いに行くのだ。
それからロードワークに。
アスリートさながらのトレーニング量、質に僕も頭が上がらない。
そんな生活を何年も続けている。
Twitterのミケちゃんのアカウントはファンが沢山いる。
フォロワー数は3万5千人を超える。
「ミケちゃんとやすらぎさん」は本にもなった。
読んでもらいたい一冊だ。
僕もファンの1人だ。
通称、やすらぎさんの。
人を思いやる気持ちや優しさ、人柄が滲み出ている。
そんなやすらぎさんに興味を持った。
いつもボクシングの話しでは素晴らしい人格のボクサーの話しを聞かせてくれた。でも僕が興味を持ったのは、人間、冨森猛だ。
冨森さんのボクシング人生から聞かせてもらおうと思った。
淡々と語ってくれた、簡単ではない人生。勝手に涙が溢れてきた。少しお酒も入っていたけど、それはまるで一本の映画を見るような感覚だった。
だから人に優しく思いやることが出来るんだ、と納得した。
様々な人間ドラマがあり人は作られる。
人を作るのは人だ。
''人の痛みが分かる優しい人。''
ありきたりな言葉かもしれないが、その言葉が当てはまる。
ボクサーは皆、そうあって欲しいと願う。
だからこそ、カッコいいと思うんだ。
強さの中に優しさがあり、人間味がある、そんなボクサーが僕は好きだし。
僕もボクシングを愛し、この仕事に誇りを持ってやっている。
そんなスポーツがもっともっと沢山の人達に届いて欲しい。
コアなファンだけのスポーツになっていっている気がする。
地上波から世界戦までもが消えてしまう、そんな世の中だ。
日本のエースである井上尚弥の試合がPPV放送。(有料配信)
テレビで見たスターを目指す子供が減ってしまうんじゃないだろうか。
今の興行のチケット代は安くて6000円〜7000円、初めてボクシングを観戦する人にはハードルが高い。
僕も何人も自分の試合にお誘いするのを断念した。
コロナ禍によりプロボクサーも減っているそうだ。
ボクシング界の衰退を危惧している。
現状維持は退化だから、変化を求めて僕も試行錯誤していく。
そんなことも冨森さんと本気で語り合えた。
だけどボクシングは絶対に無くならない。
大丈夫だ。
こんなに本気で愛されるスポーツだし、
1人の人間の''人生そのもの''になる、
そう、リングの上には覚悟、生き様、ドラマがある。
稼げるスポーツではない。
それでも人生を賭けるに値する、
それほどのスポーツだ。
そして、その日の帰り道もさりげなく駅まで見送ってくれ、階段を登る僕の姿が見えなくなるまで手を振ってくれていた。
この人に出会えて良かった。
ボクシングと出会えて良かった。
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