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道をひらく 南出仁

12年間、夢を追い続けたボクシングを引退した。

アマチュアで4度の全国大会準優勝、
日本ランキング1位。
プロでも、日本ランキング1位。
ボクシングでは、ランキング1位の上にチャンピオンがいる。

僕は、チャンピオンになれずに引退した。
引退したといえば聞こえはいい。
諦めた、が正しい。

そのくせ、いまだにランキング1位などと承認欲求のかけらを見せている。
ってわけではなくて、あと一歩のところで諦めていることを言いたかった。

最後の試合に負けて、引退を決めた時は、
人生を”諦めかけていた。
もちろん、嫁さんがいるから幸せにしないと。
普通に仕事をして、お金を稼いで、仲良く幸せに…。

それは僕の物語ではない。
何となく、惰性だせいで生きたくない。
やりたいことも、もちろん夢もない。
貯金もせずに、ボクシングに打ち込んだ。

それでも、自分の物語を紡いでいかないと。
そんな気持ちだけが生きる力。
パニック!アット・ザ・ディスコのHigh Hopes ハイホープスっていう洋楽をリピートで流し続ける。(生きるために高い、高い希望を掲げなきゃならなかった♪)
日雇いバイトでお金を稼ぐ。
基本的に誰にも会いたくなかったけど、ボクシングの僕を知らない初対面の人に会うのは楽しかった。
同年代や年下の子たちとはすぐに仲良くなり、グループLINEを作った。

試合に負けて1ヶ月は、引きこもるように家にいたり、実家に用事があって帰っていた。
体も動かさず、家にいると余計に気持ちも落ち込んで、お金も減っていき、いいことがない。

バイトに行くのは、現場仕事がほとんどだから体を動かしてリフレッシュするような感覚。友達もいるし。
それと並行してやっていたのは、読書。
家に引きこもっていたあいだずっと。
寝起き、通勤の電車、寝る前。
もともと好きだったけど、もっと集中して読んでいた。
メモを取りながら、読んだ本はノートにまとめていた。

自分の本能が、この現状を変えるために何をしないといけないか教えてくれていた。
今まで読んだことのあった本も、今の自分には刺さる。
・D・カーネギー、道は開ける
・松下幸之助、道をひらく
・前田裕二、人生の勝算
・堀江貴文、自分のことだけ考える
・見城徹、たった一人の熱狂
・パウロ・コエーリョ、アルケミスト夢を旅した少年
・鈴木祐介、我慢して生きるほど人生は長くない



何のため?

言葉を探していた。
自分の物語を紡ぐための言葉。

つらい経験から立ち直るのも、ネガティブな考え方から変わるのも、そのときの自分に的確な言葉あってこそ。

人によっては、家族や友人、恋人なんかに言葉をもらうこともある。
音楽だったり、スポーツ、ゲーム、できごと、いろいろある。
僕も何度かそんな経験がある。
いつも的確な言葉をかけてくれる、信頼している人もいる。

今回ばかりは、周りの人の言葉に素直になれない自分がいる。
少し話は逸れるけど、僕は最後の試合の3週間前に父を亡くしていた。
そんなことも、もちろん乗り越えて試合に挑んでいた。
「勝って、全部自分のドラマにする」
事実、父が亡くなったと連絡を受けた時のこと。
(倒れて救急車で運ばれたと聞いて、慌てて何の準備もなく電車に乗り込んだ。その途中で息を引き取ったと連絡を受けた。)
地元和歌山に帰る新幹線の中で、僕はその日の練習メニューを決めていた。(iPhoneのメモ機能を使い、試合を綿密に想定したメニューを考えていた。)
和歌山の総合格闘技ジムを貸してもらい、考えたメニューをこなしていた。
その日はジムが休みで、鍵を開けてもらい一人サンドバックを10R打ち込んだ。

お世話になっていた人たちには、父のことを連絡していた。
僕の仕事は、人に感動を与えることだから。
本気で思っていた。
これで勝って、応援してくれる人たちに感動を与えると。
結果は思うようにいかなかったけど、悔いはない。
全力を尽くした。

応援してくれた人やチケットを買ってくれた人たちには、申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、それも僕は全力で仕事をしたと胸を張っている。

そして引退。

やっぱりみんな優しいから、同情されるし、哀れみの目で見られてしまう。
そんなこと辛くもなんともないんだけど、わざわざそんな思いはしたくない。
だからほとんどの人に会いたくない。

後輩にまで心配される始末だし。


でも、落ちれば落ちるほど僕の気持ちは変わってきていた。
ボクシングをやっていて得た教訓のようなもので。
僕は逆境に立たされた時に、メラメラと燃えてくるものを自分の中に感じるようになっていた。
前向きな言葉が浮かんでくる。

気づけば、こんなツイート。

心配する兄弟にも、「今、作戦立ててるから」

それに、闘っているのは自分だけじゃない。
日雇いバイトでできた友達も、
性同一性障害のやつがいたり、僕と同じ歳でガンになって手術したらお金がなくてというやつ、女の子でも日勤夜勤と一日中働いて、自分の夢のためにお金を貯めている子、新しい会社を1日でやめたやつもいたな。僕は笑わない。

今何も頑張っていない僕には、輝いて見えた。
頑張ってるやつかっこいいな、
闘ってるやつかっこいいな。

そんなこんなで、僕はこれからも闘う。
ボクサーではないけど。

ほかの人には歩めない、自分だけしか歩めない。
二度と歩めぬかけがいのないこの道。

道をひらく。


とんでもない所を目指しています。

(具体的なことは全然未定です。笑)





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