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テレビ東京最後の日(テレ東ドラマシナリオ案)

●あらすじ
 新人アナの春木にとって、テレ東は第6志望の就職先。彼は自分の在り方に疑問を持ちながら八方美人に仕事をしていたが、ある日急遽テレ東の閉局が決まり、体よく転職できると喜んでいた。
 平日23:50開始の「明日の天気予報」は春木の担当だが、上層部は放送最終日に24:00まで閉局特番を流す予定だという。しめしめと思っていた春木だが、天気予報士・夏代の必死の訴えにより、テレ東最後の番組は「明日の天気予報」に。
 最終回放映に向けて、通常業務をこなしながらサプライズを企画することになった二人。春木は夏代と反発しあうが、最終回準備を通してお互いの生き方について考え直していく。
 いよいよ最終日。アクシデントに見舞われた春木だが、スタジオに入る時には、本心からの笑顔に。サプライズ企画も成功。番組終了後、彼の目に浮かんでいるのは涙だった。

●登場人物
春木(ハルキ):テレ東新人アナウンサー。表面的には明るく喋り好きだがやや根暗。テレビは好きだがテレ東に愛着はない。
秋戸(アキド):ベテランアナウンサー。春木の指導役的存在。(キャストの都合で男性でも女性でも変更可)
夏代(ナツシロ):春木よりは年上の女性天気予報士。テレ東が大好き。
スタッフ、通行人、数名

●選んだテーマ
伊藤さんの「テレビ東京最後の日」
主人公を根暗にしちゃってすみません。でもちゃんと成長するんで!

●本編

01 お天気スタジオ

・満面の笑みでスタジオに入る春木。

春木「ッシャッス!ッシャッス!今日も張り切ってやらせていただきまッす!」

スタッフ「間もなく本番いきます。5,4(ジェスチャーで3,2,1)」

・テレビ画面に映る、明日のお天気の開始画面。左上には11:50の表示。

春木「こんばんは、明日のお天気の時間です。まずは最高気温から見ていきましょう…」

・音声フェイドアウト、無音で喋る春輝を写しながら、語り。

語り(春木)〈正直言うと、就活してるときの俺にとって、テレ東は第1志望じゃなかった。もちろんテレビは昔から好きだったよ。朝の占いなんて今でも欠かせない。ドラマもアニメもバラエティも大好きさ。小さい頃からずっとテレビの仕事がしたかった。でもできるなら、制作関係の裏方より、アナウンサーがいいってずっと思ってたんだ。なんでって…そりゃ目立つし、モテそうじゃん。昔から喋りだけは自信あったから、いけると思ったんだけどな…〉

01-2(回想)

字幕「1年前」

・封筒を開ける春木。中身は不採用を告げる手紙。
・春木、手紙をクシャクシャに丸める。

春木「ちっくしょ〜」

語り〈6社受けて、5社落ちた〉

01-3 お天気スタジオ

・お天気解説する春木を無音で写しながら、語り。

語り〈受かった1社は、ここテレビ東京。第6志望だったんだけどね。任されてるのは、この天気予報番組と、午後から夕方にかけての現場のリポート。女子アナとの絡みもないし、現場なんて『ご覧ください』って指し示す手しか映らないときもある。理想と違いすぎてやってられないよ…贅沢だって思う?高倍率の試験に受かったくせにって。俺もそう思うけど、なんか熱くなれないんだよね。まあ、行く宛もないから、辞めないけどさ〉

01-4

・自室で画面上の春木を見ている夏代。険しい表情。

01-5 お天気スタジオ

春木「それでは、明日も良い一日をお過ごしください」

・放送が終わり、お辞儀した状態の春木。

スタッフ「はい、お疲れ様でした!」

春木「お疲れ様です!今日もお世話になりました!明日もよろしくお願いしまッす!」

スタッフ「いつも元気だね〜。さすが新人、フレッシュでいいな!」

春木「ありがとうございます!先輩方のご指導のおかげです!」

語り〈俺、いつまでこんな偽物の笑顔で頑張らなきゃいけないのかなあ……〉

02 控え室

・帰り支度をする春木。

語り〈みんなに良い顔して、期待を裏切らないための努力をして、怒られて、またがんばって、また怒られて…そんな毎日を繰り返して数カ月が過ぎたある日のことだ〉

・秋戸、慌てた様子で入室。

秋戸「おい春木、聞いたか⁉」

春木「どうしたんすか秋戸先輩、そんなに慌てて」

秋戸「このニュース見ろよ」

春木「え⁉」

・春木、秋戸の差し出したスマホの画面を見る。

・ニュース画面には「テレビ東京、閉局」の大見出しと「ネット配信に勝てず…」の記述がある

語り〈皮肉なもんだよな。往年のテレビアナウンサーでさえ、情報収集はスマホ頼みなんだから〉

秋戸「俺達だってまだ何も聞かされてないのに…」

語り〈なんとテレ東は半年後に閉局することになった〉

字幕「閉局まであと180日」

03 廊下

字幕「閉局まであと150日」

・歩きながら話す春木と秋戸

春木「先輩、フリーになるんスか」

秋戸「ああ、来年始まるバラエティの司会が二本内定してる」

春木「やっぱベテランはすげえなあ」

秋戸「お前はどうすんだ?会社の斡旋で地方局に行くのか?申請の締切、そろそろだろ?」

春木「正直、迷ってるんスよ…いっそ転職しちゃおっかな〜とか…」

秋戸「お前な…せっかく五次試験まで通ったんだから、落ちた何千人の分まで頑張れよ。そんなアッサリ辞めたらその人達に失礼だろう」

春木「あ…そっすよね!よし、全身全霊をかけて、この仕事がんばらせていただきます!」

語り〈あ〜、また作り笑顔。言いたいことのか1つも言えねえ。ぶっちゃけもう転職サイトから面接の応募はしてるんだけどさ…会社の都合で体よく辞められるから経歴も傷つかないし…すみません、先輩〉

・夏代、二人とすれ違った後、振り返って無言で二人の背中を見つめる。

04 会議室

字幕「閉局まであと120日」

・会議中(人数は役者さん+本物のスタッフさんで稼ぐ?)

スタッフ「はい、では今後の予定ですが…放送最終日は8時から24時まで閉局特番を組むことになりました。収録と放映のスケジュールは、資料のとおり変更になりましたのでご確認ください」

・春木、資料に目を落とす。

春木「えーと…」

語り〈お、これならみんなより数日は早くオサラバできるな。転職先も決まったし、有給もらっちゃお…〉

夏代「ちょっと待ってください」(挙手する)

スタッフ「え?」

語り〈あれは…気象予報士の夏代さん?〉

夏代「なんで特番なんですか」

スタッフ「資料によると、テレ東60年の歴史を振り返って…」

夏代「大事なのは、過去より未来じゃありませんか?60年の歴史より、明日のお天気を知りたい人はたくさんいるんです!」

春木「あのーすみません、天気予報なら他局でも見れると思いますし…」

・夏代、鬼気迫る顔で春木を睨む。

夏代「…他局でも見れる…その考えの甘さが、閉局に繋がったんじゃありませんか?」

春木「そんなに怒らなくても…」

スタッフ「夏代さん、もう決まったことですから…」

夏代「なら!私、上に掛け合ってきます!天気予報は…『明日のお天気』は最後まで通常放送させてもらいますから!」

・夏代、会議室を飛び出す。

春木「え、ええ〜?」

・呆然とする春木。

スタッフ「いいでしょう。先に進みます。では、資料の5ページをご覧ください…」

05 控え室

字幕「閉局まであと110日」

秋戸「おい聞いたぞ、お前転職するんだって?」

春木「あ、はい…」

秋戸「まあ、お前の人生だから口出しはしないけどな…その代わり、自分の仕事は最後までやり通せよ」

春木「も、もちろんっすよ!」

・秋戸、にやりと笑う。

秋戸「しかし、あの天気予報士の夏代さんはすげえよなあ」

春木「え、何がっすか?」

秋戸「上層部に直談判したんだとよ。特番の尺削って、最後の10分ぶんどったらしいぞ。というわけで、我らがテレビ東京最後の番組は、お前の仕事だ」

春木「ええー⁉」

06 廊下

・春木、歩いてる夏代の後ろから駆け寄る。

春木「夏代さん⁉」

・春木、夏代の半歩後ろを歩きながら話す。

夏代「はい?」

春木「何考えてるんですか⁉上層部に直談判して特番の尺もらったって…」

夏代「そうするって私伝えましたよね?止めにこなかったから、てっきり了承したものだと思ってました」

春木「でも、こっちにも都合ってものが…その…次の仕事の準備とか…」

・夏代、歩みを止めて振り返る。春木、驚く。

夏代「今!あなたはテレ東の社員でしょう!」

春木「は、はい…」

夏代「春木アナが転職を考えてるのは知ってます。でも社員であるうちは、自分ができる最善を尽くしたらどうです?」

春木「それはそうですけど…」

語り〈この人、気象予報士だろ?国家資格なんだから、どうせ引く手あまたで転職しちゃうんだろ?なんでこんなに熱くなってんの?〉

・しばし、沈黙。

夏代「ちなみに、10分間もらうにあたって、上層部からはある条件を出されています」

春木「はあ…」

夏代「春木アナが、視聴者の皆様が喜ぶようなサプライズを実施することです」

春木「そんな勝手なこと…構成さんに怒られますよ?」

夏代「大丈夫。スタッフが一人でも反対するならこの企画は実施しないことになっています。だから番組に関わる全員から許可をもらいました」

春木「え、だって俺まだ…」

・夏代、春木の胸を指差す。

夏代「春木アナが最後の一人です。あなたが反対するなら、私は謹んで引き下がります。この後確認しようと思ったのですが、いま来てくれて助かりました…で、お返事はどうされます?」

春木「え〜…っと…」

語り〈やられた…ここで断ったら戦犯もいいところじゃねえか…状況的に無理だ…あ〜もう!〉

春木「わかりました、やります…でもサプライズなんて思いつきませんよ」

夏代「私が企画したものを、当日やってもらうだけで構いません」

春木「はあ…」

夏代「テレ東らしい最後を飾りましょう」

・夏代、去っていく

語り〈なんだよ…テレ東らしさって…〉

07 控え室

字幕「閉局まであと100日」

秋戸「よう春木!例の件引き受けたんだって?テレ東の歴史の最後を飾るとは大役だなあ」

春木「そんな大袈裟なもんじゃないっすよ…」

秋戸「で、サプライズって何やるんだ?」

春木「そんなことまで知ってるんですか…」

秋戸「大丈夫、誰にも言わないって!な!」

春木「あの…その…わかんないんすよ…」

秋戸「え?お前がやるのに?」

春木「それが…」

07-2 控え室

・秋戸、飲みかけのペットボトルをテーブルに置く。

秋戸「なんだよ、それで言われるままに流されたってわけか」

春木「まあ、そうなります」

秋戸「ちっとは見直したと思ったんだけどな…俺、お前のこと買いかぶってたよ」

春木「そんな…だって…」

秋戸「お前、結局周りに甘えてんだよ」

春木「…」

秋戸「周りが決めたから、周りに言われたから…だから僕ちゃんには責任ありませ〜んって顔してんだよ、今のお前」

春木「…先輩にはわかんないんすよ…僕の気持ち…」

秋戸「ああわからん。春木みたいな甘ちゃんの考えなんかサッッパリわからん。だけどな、入社1年目だろうが30年目だろうが、みんな視聴者やスポンサーっていうお客様からいただいたお金で生かされてるんだ。それに報いる働きをすんのは、アナウンサーだろうが気象予報士だろうが何一つ変わらないと思うね」

春木「…」

秋戸「あ、そういえば夏代さん、さっき3階の会議室にいたなあ」

春木「え…」

秋戸「もちろん行く必要はない。どうするかはお前が自分で決めろ」

・しばし考える春木、部屋を出る。

・秋戸、にやりと笑う。

秋戸「はっ…あのひねくれ方、昔の俺みてえだな…」

08 会議室

・夏代、分厚い資料を左右に20冊ほど積み上げ、その1冊に目を通している。

・春木、入室。夏代、顔を上げる。

夏代「どうしたんです?そんなに慌てて…」

春木「あ…その…俺にできること何かあるなら、手伝いますか?」

・夏代、春木を一瞥して作業に戻る。

夏代「そう言えって、秋戸アナにでも言われました?」

春木「あ、いや…」

夏代「あなたね、顔に書いてあるのよ。口先でいくら都合のいいこと言っても、なんだか笑顔が嘘っぽいの」

春木「そんなことは…」

夏代「こっちは大丈夫ですから。夕方の現場の取材、入ってるんでしょう?」

春木「はあ…じゃあ…」

・春木、部屋を出ようとして立ち止まる。

ーーー

(回想)

秋戸「…結局周りに甘えてんだよ」

秋戸「周りが決めたから、周りに言われたから…だから僕ちゃんには責任ありませ〜んって顔してんだよ…」

ーーー

・春木、夏代の元に戻る。夏代、作業の手は止めない。

春木「手伝わせてください…いや、僕も一緒にやらせてください」

夏代「どういう心境の変化ですか?」

春木「俺…今までどっかで甘えてたんです。新人だからできなくてもしょうがない、周りが助けてくれるって…あの、俺、不本意入社だったんです。第1志望落ちて、第5志望まで落ちて、どうせ第6志望の会社だし、適当に実績作って移籍しようって思ってて…でも…」

・春木、拳を握りしめる。

春木「最後くらいは、自分で責任もって何かを成し遂げたいです」

・夏代、作業の手を止める。

夏代「春木さん」

春木「はい」

夏代「私はテレ東が大好きです。小さい頃からテレ東を見て育ってきました。朝は『おはスタ』で目覚め、夕方は『ニュースアイ』でトレンドをチェックし、他局が殺伐とした緊急ニュースを流す時はいつものバラエティを見てほっとする、そういう生き方をしてきたんです」

春木「夕方は『L4YOU!』じゃないんすか?」

夏代「うるさいわね…とにかく、私にとってはテレ東でこそ働く意義があったんです。テレ東じゃなきゃ意味がない。なのに…」

・夏代、涙声で。

夏代「やっと夢の仕事に就けたのに…こんなのってないじゃない…」

春木「あの…」

夏代「すみません、一人にしてください…」

・春木、気まずそうな顔で廊下に出る。

語り〈俺にとっては第6志望でも、あの人にとっては唯一無二の夢の場所…〉

・春木、顔つきが変わって、歩き出す。

語り〈この時、俺の中で何かが変わり始めたんだ〉

09 お天気スタジオ

・収録を終えて去ろうとする春木に夏代が近づく。

語り〈あれ?夏代さん今日は日勤のはずなのに…?〉

夏代「昼間は大変失礼しました」

春木「いえ、こちらこそ…」

夏代「明日は土曜でお休みのところ申し訳ないのですが、よかったらカフェでお話しませんか?おごりますから」

春木「え、それって…」

夏代「別にデートじゃないわよ。作戦会議です。サプライズ企画のね」

・春木、ぎこちない笑顔でうなずく

10 カフェ

字幕「閉局まであと99日」

夏代「だからね、テレ東は『いつもどおりマイペース』を最後まで貫くべきなのよ」

春木「はあ」

夏代「サプライズで変わったことをしすぎてもいけない。まるで明日もテレ東が見られるような安心感を届けたい」

春木「で、なんでその結果が着ぐるみなんすか?」

夏代「あなたはナナナが嫌いなの?」

春木「嫌いも好きも何の感情もありません」

夏代「あ〜っ、それでもあなたはテレ東の社員ですか?」

春木「逆にアラサー女子がナナナ大好きっていう方がドン引きです」

夏代「なんですって」

春木「僕は夏代さんって年齢近いと思ってたんですけど、がっつり10歳も上だったんですね」

夏代「いま年齢は関係ないでしょっ?」

春木「いや、ありますよ。テレ東の25時って、どの年齢層が見てると思います?」

・春木、資料を取り出して夏代に見せる。

春木「ほら、この辺りです。夏代さんは多分、この辺の人を想定してると思うんですが、割合として小さいんです。もっとターゲットを絞って…」(※筆者注:視聴者層とか実際はわからないんで、想像で)

夏代「データはそうだけど、テレ東の締めくくりとしては全年齢対象でいいと思うな」

春木「全ての人がテレ東を見るわけじゃありませんよ」

夏代「全ての人に見てもらうくらい気合入れましょうよ!」

・しばし、沈黙。

春木「あの…」

夏代「はい」

春木「視聴者参加系はどうですか?」

夏代「例えば?」

春木「dボタンでクイズに参加すると商品がもらえるとか」

夏代「予算が無いのよね。同様の理由でゲストも呼べない」

春木「予算なし、人手なし、視聴者が喜ぶサプライズ…うーん…」

・夏代、春木に笑いかける。

夏代「春木アナウンサーの腕の見せ所よ」

春木「え?」

11 局の前とか街なかとか

字幕「閉局まであと98日」→シーン11の間、30日までカウントダウン

・街頭で通行人に声かけする春木

春木「テレ東に一言メッセージをお願いします!」

・通行人、メッセージを書いたボードを持つ。メッセージは「今までありがとう」「お疲れ様でした」など。

語り〈サプライズ企画には、視聴者のメッセージを盛り込むことになった。メッセージを書いたボードを持ってもらって写真をとる。これが最終回に流れるというわけ。サプライズ企画に使うことは伏せて、特番で使う体で協力してもらったが、意外とみんな反応が渋い。現場取材の合間を縫ってやるから、肉体的にも疲労マックスだ。でも、やっとの思いでメッセージをもらったとき…〉

通行人1「がんばってね!」

通行人2「応援してます!」

語り〈…って言われると最高に嬉しい。だから俺は決めたんだ。あの人たちのためにも、テレ東の最後は、俺がきっちり締めくくる!〉

12 控え室

字幕「閉局まであと20日」

・疲れてうたた寝する春木

・秋戸、入室しようとするが、春木を見て外に出る。

秋戸「…前より良い顔してんじゃねえか」

13 会議室

字幕「閉局まであと10日」→シーン13の間、2日までカウントダウン

・夏代、パソコンを操作する。春木、後ろから口出しする。(無音で写しながら語り)

語り〈締切が迫る中、できる限り良い物を作ろうと意見を出し合った…時々、ケンカに近い言い合いになったけど、自分の意見をはっきり言ったのって、よく考えたら入社してから初めてだった。自分でも信じられないけど、この企画を通して、俺は今まで閉じこもってた自分の殻を破れた気がする〉

14-2 会議室

字幕「閉局まであと1日」

春木「…できた」

夏代「はい、できました」

春木「おお〜、やった〜…長かったし…きつかった…」

夏代「春木くん、良い顔してるね」

春木「え、そっすか?」

夏代「うん。前までの作り笑顔とは全然違うよ」

春木「あ…」

夏代「でもさ、あの頃の春木くんって無理してたんだね。私にとっては理想の職場でも、そうじゃない中でがんばってる人もいるんだなって反省した」

春木「俺こそ…今ではテレ東に来て良かったと思ってます。夏代さんのおかげです。俺、この数カ月ですごく成長できた気がします。超しんどかったけど、こんないいものができたし…」

夏代「あのねえ…これくらい、まだしんどいうちに入らないよ。人生長くやってると、理不尽な試練が山のように待ってるんだからね」

・笑い合う二人

語り〈第6志望で渋々入社した俺だけど、良い人生を送れるかどうかって、環境じゃなくて自分次第だなって、最近思う〉

・画面暗転

字幕「閉局まであと23時間」

15 廊下

字幕「閉局まであと17時間」

・春木、廊下を歩いている。前方に秋戸を見つけて駆け寄る。

春木「おはようございます!」

秋戸「お、今日は早出か?」

春木「はい。昼過ぎに特設会場の現場リポがあって…17時から『明日のお天気』の最終チェックです」

秋戸「いよいよだな」

春木「緊張しますね」

秋戸「まあ、のびのびやれよ。俺は今から特番のスタジオだ。お前の雄姿、期待してるぞ」

春木「あ…ありがとうございます!」

16 廊下

字幕「閉局まであと10時間」

・廊下から上り階段の下へ差し掛かる春木。

春木「あ〜現場長引いたなあ。着替え、着替え…」

・踊り場から機材を運ぶスタッフ。手元があやしい。

スタッフ「あ、危ない!」

春木「え?」

17 お天気スタジオ

字幕「閉局まであと7時間」

夏代「春木アナが怪我?」

スタッフ「はい。命に別状はないんですが、いま病院で手当を受けているそうです」

夏代「そうですか…とにかく、大事に至らなくて良かったです」

スタッフ「一応、本番は代役を立てておきます」

夏代「え?」

スタッフ「春木アナの怪我、顔らしいんですよ。軽傷とはいえ、何針か縫ってるらしいんで、人前に出せないかもしれません」

夏代「…そうですか」

17-2 お天気スタジオ

・夏代、スタジオの影で電話をする。

夏代「もしもし春木くん?」

春木『あ、夏代さん?すみません、打ち合わせ行けなくて。ご迷惑を…』

夏代「それはいいのよ。縫うほどの怪我だって聞いたから心配で…」

春木『全ッ然大丈夫っすよ!いま病院出ますから待っててください』

夏代「無理しなくていいのよ」

春木『え…何言ってるんすか急に?』

夏代「周りに気を使って無理して体調崩したら、次の職場で良いスタート切れないわよ。新しい職場、明日すぐ出社なんでしょう?熱でも出したら…」

春木『夏代さん。俺、まだテレ東の社員ですから。いま自分ができる最善を尽くしたいんです』

夏代「春木くん…」

春木『待っててください』

・電話、切れる。夏代、苦笑い。

夏代「バカねえ…」

17-3 お天気スタジオ

字幕「閉局まであと6時間」→シーン17-3の間、1時間までカウントダウン

・春木を待つ夏代

スタッフ「春木アナ、とっくに局入りしてるんですが、やっぱ上と揉めてるらしいです」

夏代「そうですか」

スタッフ「例のサプライズ…最悪お蔵入りですね」

夏代「…大丈夫です、1時間あれば、代理のアナウンサーに合わせて編集し直しますから。でも…あと少し…あと少し待たせてください」

17-4 お天気スタジオ

字幕「閉局まであと59分」

春木の声「お待たせしてすみません!」

・夏代、顔を上げる。
・春木、頬に肌色のテープを付けた状態でスタジオに入る。

春木「ご心配をおかけしました。上から顔に怪我してる人間は出せないって言われたんですけど、僕怪我してないんで!ほら怪我して見えないっすよね!メイクさんのプロ技術すごいですから!はい、僕怪我してません!」

・スタッフから笑いがこぼれる。

スタッフ「リハいきます!」

・夏代、笑顔を浮かべる。

語り〈この選択が正しいかどうかわからない。でも、俺は自分で決めたんだ。最後までやり抜くって〉

17-5 お天気スタジオ

字幕「閉局まであと11分」

・本番直前のスタンバイ状態。

・夏代、スタジオ後方で見守る。

スタッフ「本番5秒前、4,(3,2,1)」

春木「こんばんは、明日のお天気の時間です。まずは最高気温から見ていきましょう…」

・秋戸、スタジオ後方、夏代の横に現れる。

秋戸「お疲れさん。こっち、大変だったらしいな」

夏代「はい。でも春木アナ、怪我してるくせに、上に逆らってまでここに来たんです」

秋戸「はっは…若いやつはいいねえ、エネルギーがあって」

夏代「この半年で、彼、すごく変わりましたね」

秋戸「そりゃ、君のおかげだと思うよ」

夏代「いえ。彼自身のがんばりですよ…」

春木「それでは、明日も良い一日をお過ごしください」

秋戸「ん?あと3分も残ってるじゃねえか」

夏代「秋戸アナ、画面を見てみてください」

秋戸「ほう?」

17-8 画面の中

・スタジオで頭を下げる春木の画面が、ズームアップされると、モザイクアートになっており、メッセージボードを持つ通行人の写真で形成されている。音楽に合わせてメッセージを持つ人々の写真が流れる。

17-9 お天気スタジオ

秋戸「これ、二人で作ったのか?」

夏代「写真はほとんど春木くんが集めてくれました。ムービーはCG班からソフトを借りて作りました」

秋戸「そうか…よくがんばったな」

夏代「…はい」

・画面の中でお辞儀する春木、満面の笑みで顔を上げる。

春木「それでは、また明日」

・春木、再度頭を下げる。

夏代「あ、今の…アドリブ?」

語り〈こうして、テレビ東京は約60年の歴史に幕を下ろした〉

スタッフ「お疲れ様です」

・春木、頭を下げたまま、動かない。

スタッフ「春木アナ?」

・春木、下を向いたまま、泣く。

語り〈なんで涙が出たのか、今でもわからない。こうなる前にもっとがんばれたんじゃないかとか、せめてこれだけでもやり遂げることができて良かったとか、いろんな思いが交錯していた。ただ、これからテレ東を離れても、ここで得た経験は忘れずに、もっともっとがんばって生きていこうって、そう思っていたことは確かだ〉

字幕「テレビ東京、閉局」

18 控え室

・春木、帰り支度をしている。

秋戸「お疲れさん!」

春木「お疲れ様でした。一年間だけですが、お世話になりました」

秋戸「良い顔をするようになったな。今の気持ち、忘れんなよ!」

春木「…はい!」

・夏代、ノックして入室する。

夏代「どうもお疲れ様でした」

秋戸「おうお疲れさん!じゃあ、元気でやれよ!」.

・秋戸、退室。

春木「どうもありがとうございました」

夏代「こちらこそ、私が言い出したワガママに付き合ってくれて、ありがとうございました」

春木「ワガママっていう自覚あったんすね」

夏代「それは…まあ。あとさ、良かったら、職場が変わっても、またご飯食べに行こうね。なんていうか…春木くんは、テレ東に固執してた私を救ってくれた恩人だからさ…」

春木「え、いいんですか?」

語り〈これは…なんかいい感じの…?〉

夏代「うん。春木くんテレビ好きだから、きっとうちの旦那と気が合うと思うよ」

春木「え⁉夏代さん、結婚してたんすか⁉」

夏代「あれ、言ってなかったっけ?夏代は旧姓で、本名は冬見っていうの」

春木「ははっ…」

・笑い合う二人

語り〈人生、思い通りにならないことは多いけど、まあ、楽しみながら生きていこうと思う〉

おわり

ーーーー

あとがき

30分の文章量ってよくわかんない…T_T

テレビ局事情は全く知らないので想像です。
多分おかしなところいっぱいです。

そしてベッタベタの展開…

欲を言えば街頭メッセージを
「ゆるキャン」メンバーからもらいたい(そりゃ強欲すぎるか!)

モザイクアートはめんどくさそうだから
もっと違う案がよかったかも。
でも思いつかない…

ーーーー

採用されるかどうか関係なく、
感想をいただけると励みになります^_^

え、書きかけの長編小説?
後半まだ書きかけですが、
いま友人に第1話を読んでもらってます。
第2話を読んだら詰め込みすぎてて
まーた手直ししてます。
でも完成させるぞー!



応援してくださるそのお気持ちだけで、十分ありがたいのです^_^