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『Re:STAGE! PRISM☆FESTIVAL vol.1 -Resistance-』トロワアンジュ宛 楽屋花

2024/6/15 森のホール21 Re:STAGE! PRISM☆FESTIVAL vol.1 -Resistance-』
トロワアンジュ宛に贈った楽屋花の製作顛末



着想

モチーフにしたのはトロワアンジュの楽曲『青い鳥より』。
曲のイメージ周りのことは前段として別の記事に書いておいた。

曲をモチーフにするにあたって、フラスタであれ楽屋花であれ、何を用いてそれを表現するのかを考える。大きくは下に挙げる3つのうちのどれか、またはそれらの組み合わせになる。
・花材
・イラスト(パネル)
・装飾

花材であれば分かりやすいのは青い花。イラストなら別途イメージを考えて描くか、依頼するか、AIに描かせることもできる。装飾なら鳥の模型だとか、羽根だとか。「光」を表現するならランプだとか。

何にしても、大事なのは「伝わる」ことなので、あまり手の込んだことをやりすぎて分かりにくいものになるのは避けたいと思った。
そうなると、やはり戯曲『青い鳥』から引用するよりも『青い鳥より』の歌詞に出てくるものからモチーフを選定した方が直截的で分かりやすい。

真っ先に思いついたのが鳥籠だった。
「籠」は『青い鳥より』の中では歌い出しの部分で出てくるワードである。

さあ 飛び立とう
見えない籠 作っては隠れてた
心にある翼広げて
外の世界に触れてみて

作詞:高瀬愛虹 | トロワアンジュ『青い鳥より』より

なぜか「鳥籠と植物」の組み合わせがスムーズにイメージできたこと、さらにそれを「美しい」と感じられたことも大きかった。
鳥籠に入って飾られている植物をどこかで見たことがあるような気もしていた。


準備その① - 鳥籠 -

とにかく、植物を飾る目的で鳥籠、もしくは鳥籠状のものが簡単に手に入れられるのかを調べるために検索してみると、目的のものはすんなり見つかった。「プランツケージ」などと呼ぶらしい。写真を見てみると、なるほどどこかで目にしたことがあるような飾り方である。なにより、そう感じる理由を言葉で説明できないが美しい。

プランツケージにも色々ある。黒っぽいもの、白っぽいもの、大きいもの、小さいもの、スタンド付きのもの、飾り付きのもの、隙間の広いもの狭いもの、高いもの安いもの、上半分が開くものなど。

まずケージを花で飾る形にするか、フラスタにケージを飾る形にするかを考える。フラスタにケージを飾るとボリュームも出て豪華になるが、あまり大型になるとイベント運営スタッフの方の負担が大きくなるし、お花屋さんにとっても大変な仕事になる(スタンド全体のバランスや配送時の養生など)ことは想像に難くないので、ケージを花で飾る形にする。

フラスタとしてロビーに置いていただくか、楽屋花として楽屋に置いていただくかを考える。種々のプランツケージを見ても、他のフラスタと一緒にロビーに飾るものとしてはかなりサイズが小さいし、会場やスケジュールによってはフラスタは直接演者さんの目に入ることがなかったりする。
できれば常にトロワアンジュの近くにあって、あわよくば『青い鳥より』を歌う前の気持ち作りなんかに一役買えれば僥倖だと思ったので、楽屋花の形で贈ることに決める。

続いてどんなケージを使うかを選定する。楽屋花のレギュレーション内のサイズに収まることが大前提となるため、逸脱するものは選外となる。
(この時まだ公式からレギュレーションの発表はされていないが、どのコンテンツのイベントでもお花に関するレギュレーションはほぼ同じなので、過去のイベントのレギュレーションを参照している)

また、スタンド付きのものはゴージャスでかっこいいけれども、人の出入りが激しいであろう楽屋に、不安定なスタンドつきのお花が置かれるとかなり邪魔になりそうなので、これも選外。
(楽屋内の様子は会場のHPである程度確認)

 トロワアンジュといえば明るい、白いイメージが強いので、白いケージに目星をつけて探してみる。シャビーシックなスタイルのものが多く、どれもいい感じではあるが、見た目が良いとサイズがオーバーしていたり小さすぎたり、サイズで選ぶと形が良くないといった状況に陥ってしまったため、白色から離れて探してみる。
 すると、黒っぽい色ではあるものの、程よいサイズで、底の部分には十分な高さの縁があり、ケージの上半分を大きく開くことができる、ケージの内外を花で飾る作業もやりやすそうな作りのものが見つかった。

レトロな定規は昭和の遺物。てっぺんの柱状のパーツは木製
このように上半分を開くことができる

近くにこういった商品を取り扱っている店舗は無いため、というより、どういった店に行けば取り扱っているのかも調べられなかったため、とにかく通販で買ってみるしかなかったが、届いたものは想像以上にしっかりしていたのでひと安心。
日常の空いた時間を使って探していたせいか、探し始めてから購入に至るまでは2週間くらいかかっている。


準備その② - パネル -

お祝いのメッセージや宛名などを記した札が必要になる。今回は鳥籠という特殊な形状になるため、この札をどうするかも考えなければならなかった。
候補は以下3点。
 ・これまでと同じようにパネルにする
 ・アンティークな質感の紙のカードにする
 ・質感や雰囲気を重視して木の板にする

まずパネル。これはIllustratorなどで作ったデータをキンコーズに入稿して出力してもらうかたち。今までずっとこれでやってきたので手慣れているし、耐久性等も問題ない。ただパネルの素材がかなりケミカルな印象の強いものなので、今回のお花の雰囲気を損ねてしまうリスクがある。

紙のカード。シンプルで使いやすい。素材の幅も広く、理想の素材が見つかればお花の雰囲気にもよくマッチするだろう。ただ耐久性には難がある。
お花は水と切り離せないので、水濡れによって損壊する危険がある。配送の際に折れ曲がる危険もあるため、お花屋さんも札の取扱いに対してかなり神経質にならざるを得ない。

木の板。雰囲気の演出としては一番自分のイメージに近い。しかし求める素材が見つかる見込みがない。板切れなんかはいくらでも売っているが、長く人の家にあったようなアンティークっぽい質感が欲しかったため、加工が必要になる。しかしウェザリングやエージングなどの加工を施す時間も技術も無い。また、木材にプリントする方法が無いではないが、これは表面が平らでないと難しいため、加工した木材には向かない。
障壁が多すぎるので、木の板案は真っ先に没になった。

パネルとカードの2択になったが、ここは雰囲気よりも耐久性を優先してパネルを選んだ。理想の素材をゆっくり探している時間が取れなさそうだったというのもある。

パネルの原稿。無駄にA4なのはキンコーズでは発注できる最小サイズがA4だから
パネル部分拡大。灰色の線でカットされる

デザインはリステ3rdライブの時とあまり変わっていない。
お祝いの文面は「Heartfelt congratulations on your stage. And I love you.」
英語なのは、可読性と雰囲気の両立のため。
「ご出演を心からお祝い致します。あと好き」では格好がつかない。
「And I love you.」はちょっと迷った上で入れているが、「愛は熱いうちに伝えろ」という推しの名言に従った結果、照れずに入れることにしたもの。
僕がトロワアンジュを愛しているのは事実なので。

金色(っぽく見える)縁取りやオーナメントはフリー素材。「オーナメント 素材 .ai」等で検索すれば見つかるものを、適宜アレンジして配置している。
宛名の後ろにある翼の図案はマイクロソフトのAI画像生成で。
下段の青い鳥の絵は、メーテルリンク著『L'Oiseau bleu(青い鳥)』の初版本の表紙画から拝借。
背景はフリー素材で、古い、日に焼けた紙のテクスチャ画像。

問題はこれをどこにどう飾るか。考えたのは3通りの方法。
 ・パネルに針金などを通して鳥籠の天辺あたりのワイヤーに固定する
 ・棒をつけてオアシス(お花を活けるスポンジ状のもの)に刺す
 ・紐をつけて鳥籠のてっぺんの木のパーツから下げる

紐をねじったり、紐をかける位置を変えることで高さの調節が可能

紐で下げる方法を選んだ。
僕がお花を贈るとき、主役はあくまでお花でありパネル類は二の次なので、イラストでもつけない限りは「宛先が分かること」「お花の邪魔にならないこと」「雰囲気を壊さないこと」が満足できていればよい。紐で下げる形を選んだのは、固定されず、邪魔になればすぐに他のものに影響を与えることなく外したりずらしたりすることができるから。

紐は素朴な麻紐を選び、パネルの側面にアンティークっぽい風合いのヒートン(ネジ付きの輪っか)を刺して吊るしている。
過去、キンコーズのパネルを一度カッターを使って自力でカットしようとした時に意外なほど頑丈で苦労した覚えがあったので、ヒートンを刺してもすぐに外れたりすることはないだろうと思ってこの方法にしたが、実際このパネル程度の重みのものであれば問題なさそうだった。


準備その③ - 羽根 -

僕は通常お花には小道具を用いないが、今回はあった方が良いと判断して、青色の鳥の羽根を一片だけ使うことにした。
戯曲『青い鳥』のラストで、チルチルが飼っていたキジバト(≒青い鳥)は窓から飛び去ってしまう。
この鳥籠の中にはかつて青い鳥がいたということが、想像しなくても分かるようにしたいと思った。

鳥の羽根なんて単体で売っているものだろうか。
売っていた。楽天で買えた。実に多種多様な鳥の羽根(を模した人工物)を取り扱っているものだ。主に装飾や手芸などの用途で求められるものらしい。今やネットで買えないものの方が少ないのかもしれない。

自然に抜け落ちるようなキジバトの羽根はかなり小さくて存在感が無いので、実際よりも少し大きめ(5~6cm程度)の羽根を注文。これでお花以外のものはすべて揃った。


準備その④ - 発注 -

お花以外のものが揃ったところで、お花屋さんが今回のように少し特殊な構成の楽屋花を請け負ってもらえるのかは訊いてみないと分からない。
ちょうど5月19日に池袋でアルシュシュとトライアムトーンが出演する太陽と踊れ月夜に唄えのライブに参加する予定だったので、東京に行くついでに以前からフラスタや楽屋花をお願いしている谷中のお花屋さんに行って直接相談してみることにした。

鳥籠の写真を見てもらって、「これを使ってこんな感じの楽屋花をお願いしたいんですけど可能ですか」と尋ねたところ、「大丈夫です。鳥籠を使ったアレンジは以前一度やったことがありますので、ノウハウはあります」と頼もしいお言葉が返ってくる。
こちらのデザイン案を提示するたび、「素敵なアイデアですね!」「こういうカラーを使ってもきれいかもしれませんね」「他にもこういう方法がありますよ」「楽しんで作れそうです!」など、素敵かつ有能なレスポンスがポンポン返ってくる方なので好きになってしまう。美人だし。

配送料も含めて支払いを済ませ、詳細はまた要件をPDFにまとめて送りますと伝え、お店を後にした。快く受注してもらえて一旦肩の荷が下りる。


準備その⑤ - 要件定義 -

本来は要件定義を出してから見積もり、発注するのが正しい流れだが、今回は大雑把に要件を出して見積もってもらい支払いまで済ませ、細かい(見積もりに影響しない)指定を後出しにさせてもらった。
公式からレギュレーションも出ていたので、それらも含めてパワポで要件をまとめ、お花屋さんに提出。下に一部抜粋。

イメージ画像はフリー素材をいじって組み合わせただけのもの

ある程度お花屋さんにおまかせで発注する際は、「こうして欲しい」はもちろん、「こうして欲しくない」を明確にしておくと失敗を減らせる。

鳥籠、パネル、羽根、予備の羽根と麻紐とヒートンを梱包してお花屋さんに発送。あとはお花屋さんにすべてをお任せする。


成果物

イベント当日のお昼前に、お花屋さんから出来上がったお花の写真がLINEで送られてきた。レギュレーションを忠実に守って前日の夜に配送していただいた。

全体
上から
トロワを表す3色の花(青:デルフィニウム、緑:アルストロメリア、ピンク、ケイトウ)
ケージの中

思ったよりも彩度が高く、イメージしていたものとは少し違ったものの、これはこれで別の良さがあると思った。旅から帰ったチルチルの目には貧しくみすぼらしい自分の家も美しく輝いて見えていたことや、一晩の出来事と一年間の旅という矛盾した時間の経過が、くすみながらも鮮やかさを捨てない絶妙なバランスで表現されていると解釈できる。
狙い通り、ケージの外側にある花が影を作ることで光を表すこともできているようで良かった。
なによりお花の状態がすごく良いし、開き具合のバラつきとバランスもナチュラルで美しい。

お花は直接お花屋さんから楽屋に届けられるため、実物をこの目で見ることが叶わなかったことだけが本当に残念である。もっと写真を撮っておいてほしいとお願いしておけばよかった。


いただいたレスポンス

ありがたいことに、トロワアンジュの皆さんから今回のお花について触れて下さっている。レスが欲しくてお花を贈っているわけではないが、一生懸命作ったものに対して感想をいただけるのはお花に限らずどんなことでも嬉しいもので、それが特定の人に向けて作ったものなら尚更である。

▼白鳥天葉役、日岡なつみさん
いつもお花の感想を言ってくださるのが本当に有難くて嬉しいです。

▼緋村那岐咲役、長妻樹里さん
何かの力になればと思ってお花を贈っております。パワー充電の一助になれて嬉しいです。

▼帆風奏役、阿部里果さん
泣きました。お花と一緒に僕の気持ちも抱かれた思いです。
あなたに「いつもありがとう」と言ってもらえるのは、何よりも嬉しいことです。

▼作詞家、高瀬愛虹さん
今回お花のモチーフにさせていただいた『青い鳥より』をはじめ、いつもトロワアンジュの楽曲に素敵な歌詞を書いてくださってありがとうございます。詞を書かれたご本人に素敵と言っていただけてとても光栄です。

トロワアンジュ、愛しています。

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