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ローラースケートのフィギュア1(フォア・アウト)

 フィギュアスケート、という言葉は英語でも日本語でも一般的にアイススケートのことを指す。もともと、アイススケート競技といえば氷の上に複雑な形(figure)を描くものだったことから、こう呼ばれるようになったそうだ。現在はその名前だけを残してこの競技はなくなってしまったが、90年代初頭まではフィギュアスケートの大会にはコンパルソリと呼ばれる図形を正確に描く競技が残っていた。私も伊藤みどりがコンパルソリをやっていた姿をTVで見たのを覚えている。コンパルソリの時だけメガネかけてるんだー!と思ったので、なんだか印象深かった。

 一方、アーティスティック・ローラースケートには、まだこのフィギュア競技がしっかり残っている。残念ながらもともと派手なTV中継などにはまるっきり無縁な業界なので、観る側からの「地味でつまんなーい」という声には影響されずにすんだのかもしれない。やってる側からしても確かに地味な競技ではある。でも、地味ではあるのだが、これがなかなかあなどれない。地道にやっているうちにローラースケートで滑るための基礎がしっかりしてくる、すばらしい競技なのだ。同じフォアをアウトサイドで滑るにしても、練習を重ねるうちにゆっくりじっくり足裏のどの部分に重心を置くと一番効率よく進むのか、だんだん分かってくる。正しい姿勢も身についてくる。

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 アイスのコンパルソリと一番違うのは、アーティスティック・ローラースケートの会場の床には、こんな風に3つの円が描かれていること(※アイスでは何もない氷の上に自分で円を描いていたそうだ)。上記のような大きめでシンプルな円(各直径6メートル)と、小さめでループの目が描かれた円(各直径2.4メートル、こちらの詳細はまたそのうち)のパターンがある。描かれた円の線の太さは3センチ以下と決められている。

 まずは、大きな円を2つ使って8の字を練習する。フィギュア(形)には、それぞれ描く方法によって1から53までの番号がついている。フォアのアウトサイドで8の字を描くのは「フィギュア1」だ。ちなみに、番号が上になるほど複雑になり、53番はバック・アウト・ブラケットとインサイド・ロッカー、フォアのブラケットなどが組み合わされる。

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■フィギュア1のやり方(RFO - LFO)

1)2つの円の重なっている部分の真ん中の線上に右足を置く。

2)手は右手を前、左手を横に広げる。12時(右手)と8時(左手)の位置を指す。

3)左足は後ろにT字に置く。姿勢よく立つ。

4)Tスタート。灰色の矢印の方向にアウトサイドのエッジに乗って進む。

5)b1まできたら、ゆっくりとフリーレッグの左足を前に持ってくる。

6)b2までにゆっくりと左右の手を入れ替える。左手が12時、右手が4時。

7)円の重なる部分に戻ってきたら、右足で踏み切って左アウトに乗り、緑の矢印の方向へ進む。手はそのまま。

8)a1まできたら、ゆっくりとフリーレッグの右足を前に持ってくる。

9)a2までにゆっくりと左右の手を入れ替える。右手が12時、左手が8時。

10)円の重なる部分に戻ってきたら、左足で踏み切って右アウトに乗り、灰色の矢印の方向へ。手はそのまま。

11)(5)以降を繰り返す。


初めの頃は、Tスタートの踏み切りで十分なパワーが出せないのと、重心の位置が悪く滑りにブレーキがかかっているような状態になりがちなので、1度も足をつかずに1周円を描いてスタート地点に帰ってくることさえ難しいと思う。このTスタートの踏み切りについては「フィギュアのスタートについて」を参照。

 Tスタートの時には、重心をしっかり後ろにかけて踏み切ることが大切だ。滑り出してからの重心の位置は、練習を重ねるうちに「あ、ここに重心を置くとスルスル進んでいく!」というピンポイントの場所が分かるようになってくる。フォアでアウトに乗る時はかかとの外側あたりだ。膝は柔らかく、でもほぼ真っすぐにすると重心の位置が一か所で安定しやすい。フリーレッグは上げすぎず下げすぎず、少しつま先を外に向けて踵を円周上にあわせる(横に上げない)。そして、フリーレッグの膝はぴんと伸ばして曲げないこと。つま先もぴんと伸ばしてまっすぐに。

 姿勢はまっすぐ、肩を広げて丸めない。手は、肩からまっすぐ伸ばした場所より少し下の、自然な位置に置く。腰の位置まで下げないこと。だいたい、肩から腰までの真ん中あたりに。指はまっすぐにして手のひらを床と水平にしておき、広げず、曲げず、反らない。手を前に出す側の脇はしめる。手を入れ替えるときは、水平のまま体の周りで回すのではなく、一旦手を太もも付近に下げて(力を入れない「気をつけ」のようなポジション)から手を入れ替えて上げる方が体がぶれない、というコーチもいれば、水平のまま体の周りで回す方が体がぶれないというコーチもいる。その人の癖もあるので、コーチの教えに従うこと。

 自分がやるようになってからアイスの昔のコンパルソリ動画を見てみると、スピードは早いし姿勢も良くない人が多くて驚くのだが、うちのクラブでは特に姿勢について厳しく注意される。肩がちょっと丸まってたり、手の位置が悪いとすかさずコーチのチェックが入る。姿勢が悪いと、コントロールが悪くなるしジャッジへのアピールも悪くなるからだ。そして滑りもスピードを出してごまかさずに、ゆっくりと正確にきっちり滑っていくことが大切だ。

 正確に滑るために目線はフィギュア(形)の線を見ながら滑るのだが、あまり顎を下げずに目だけで線を追うイメージで。

 フィギュアの試合に出よう、というようなレベルになるまでは普通のアーティスティックの靴で練習することになるが、その場合はトウストップが絶対に床にあたらないようにすること。フィギュアの選手は、トウストップのない靴を使用する。テイクオフ時にトウ蹴りをしたり、トウストップが床にあたると、ペナルティになるからだ。

 途中で止まったり転んだりしたらもちろんペナルティになるが、フリーレッグが床に触れてもペナルティになる。

 上手に滑るためのポイントは、

・円の線上をいかに正確にトレースするか

・ペースとリズムがスムーズで、動きにかたさがないこと

・クリーンなテイクオフ(Tスタート、踏み切りともにプッシュはそれぞれ1回だけ)

・エッジ

・姿勢

 このあたりだろうか。

 あまり良い動画がないのだが、いくつか紹介する。

↑ ビル・デイビスの動画。フィギュアの姿勢やスピードがよく分かると思う。ただしテイクオフの時はもうちょっと両足を近くに持って来てから踏み込んだ方が良いような気もするが。手も横に広がっている。

 動画を再生する時、noteの定型サイズで表示されるせいで、肝心の足元が見えずに切れていることがあるようだ。足元が見えない場合は、左上のタイトルをクリックするとyoutubeサイトでオリジナルサイズを見ることができる。


↑ あまりお勧めではないが、ジョー先生の動画。最初の話が長く、3:05あたりからやっと滑り始める。初めたばかりの頃は1周クリアに滑れずに、こんな風に途中でフリーレッグで漕いで練習することになると思う。



 私はもともと何かをキッチリ計ったりするのが好きではなく、ケーキ以外は料理の時も勘と味見でいく感覚重視タイプなので、正確さを追求するフィギュアはどちらかというと性に合わない。でも、スピードもジャンプも必要ないじっくり滑る競技だから、私みたいないい歳のおばさんには向いているのかもしれない。そのうちダンス競技(アイスダンスに似ているがローラースケートの場合はソロもあり)をやりたいなーと思っているのだが、数年後はフィギュアがメインになっているような気もする。

 そして、これまでに気付いた人もいるかもしれないが、私はこのnoteを書くにあたって「フィギュアスケート」と書くとこのローラースケートのフィギュア競技と混乱しやすいと思い、ずっと「アイススケート」と書くようにしてきた。「アイススケート」だと、ホッケーやスピードスケートまで入ってしまうが、そちらの方がまだ混乱が少ないと思う。

 アーティスティック・ローラースケートをやっている者にとっては、「フィギュアスケート」と言えばアイスのフィギュアスケートのことではなくて、このローラースケートのフィギュア競技のことなのだ。


<追記>

 最近中級クラスに上がったら、もっと細かなコツや間違いについて詳しく教わるようになったので、少し内容を修正しました。


  ツイッターでもつぶやいています。


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