ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
旧大手アパレル各社や百貨店の洋服販売不振が続く中、何年か前から新興企業に注目が集まってきました。上場している中では、次の3社ではないでしょうか。インターネット通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ、「ステュディオス」「ユナイテッドトウキョウ」などの店舗を展開するトウキョウベース、そしてジーンズメイトや三鈴、馬里邑、マルコなどのアパレル企業を積極的に買収しているライザップグループです。急成長で多くの人が注目し、期待するようになりましたが、このところ3社とも業績は曲がり角に来ているといえます。
3社の中で一番底堅いのがスタートトゥデイだといえます。売り上げ規模も拡大しましたし、取り扱いブランド数も増えています。しかし、新規会員数は頭打ちになりつつあります。新規会員数が大幅に増えなくなった理由は簡単です。服しか売ってないZOZOTOWNには「服好き」しか来ないからです。そして「服好き」は大多数はでありません。服以外がふんだんに売られているAmazonや楽天の新規会員数が大幅に伸びているのを見ればそれは理解できるはずです。服は毎月何枚か買う程度ですが、それ以外の生活用品や家電、雑貨類は月に何度も買うのです。
また、低価格ブランドの取り扱い数が増えて、客単価は低下しています。さらに、毎日ほど各ブランドが割引クーポンを発行しており、これによっても客単価は低下し続けています。某有名ブランドのEC担当者によるとスタートトゥデイの最近の担当者の第一声は「おたくのブランドは何枚割引クーポン発行できるの?」だそうです。割引クーポンはスタートトゥデイではなく、ブランド側が発行しているため、ブランド側の利益は常に削られることになります。
客単価は20%減のペースで下がり続けているブランドもあり、早晩何かのきっかけで大量のZOZOTOWN離脱があるのではないかといわれていますが、トウキョウベースのように自社通販サイトをスタートトゥデイに頼り切っている企業も多いので、その時が来るのは相当後になると考えられます。ちなみにトウキョウベースのZOZOTOWN依存比率は86%もあり、自社通販サイトはほぼ機能していないに等しいといえます。ここまで他社に依存するやり方はいかがなものでしょうか。生殺与奪権を他社に握られることになります。
トウキョウベースの株価が暴落した原因は、決算の悪化です。店舗数は増えているのに売上高は横ばいでした。ということは既存店売上高は大きく低下しているということになります。利益は大きく減少しました。通期では回復するという見通しを発表していますが、果たしてどうでしょうか?当方は見込みが甘いと思っています。ここに至るまで新規政策は皆無です。社長がロシアまでワールドカップ見物に出かけたことと、社員旅行で沖縄に行ったことくらいでしょうか。(笑)
新商品を投入するわけでもない、新ブランドを導入するわけでもない、目に見えてネット通販を強化したわけでもない、値下げ販売を行ったわけでもない。それでどうやって業績が回復するのでしょうか。
続いて業績低下が見られたのはライザップグループです。2019年3月期第1四半期の業績は、売上高521億7400万円(前年同期比82.1%増)、営業損失37億2600万円(前年同期は27億100万円の利益)に終わりました。
売上高521億7400万円(同82・1%増) 営業損失37億2600万円 税引き前損失40億500万円
という結果です。売上高が増加しているのは買収した傘下企業数・ブランド数が増えているからです。当たり前ですが、企業数や店舗数が増えれば自動的に売上高だけは増えます。儲けを度外視すれば売上高を増やすことはある意味で簡単なのです。傘下企業数や店舗数を増やせば良いのです。
ライザップグループは大きく分けて3つのグループがあります。
「美容・ヘルスケア」セグメント 事業内容 :パーソナルトレーニングジム「RIZAP(ライザップ)」及びRIZAP GOLF等のRIZAP関連事業の運 営、体型補正用下着、美容関連用品・化粧品・健康食品、スポーツ用品等の販売等 主要グループ会社:RIZAP、RIZAPイノベーションズ等(RIZAP関連事業)、マルコ、SDエンターテイメント、 ビーアンドディー、湘南ベルマーレ等
・「ライフスタイル」セグメント 事業内容 :インテリア・アパレル雑貨・カジュアルウェア・意匠撚糸等の企画・開発・製造及び販売、 注文住宅・リフォーム事業等 主要グループ会社:イデアインターナショナル、HAPiNS(旧パスポート)、ジーンズメイト、夢展望、 堀田丸正、タツミプランニング等
・「プラットフォーム」セグメント 事業内容 :エンターテイメント商品等の小売及びリユース事業の店舗運営、フリーペーパーの編集・発 行、出版事業等、開発・企画/生産/マーケティング・販売等といったグループ全体のバリューチェーンの基盤となる事業 主要グループ会社:ワンダーコーポレーション、ぱど、サンケイリビング新聞社、日本文芸社、 五輪パッキング等
という内訳です。
「美容・ヘルスケア」「プラットフォーム」の2事業に関しては当方は門外漢ですので、なんとも言えませんが、アパレル関連の「ライフスタイル」に関しては、今後ますます苦戦するのではないかと見ています。今回の「ライフスタイル」の業績は次の通りです。
売上収益は11,722百万円(前年同期は11,470百万円、前年同期比2.2% 増)、営業損失は617百万円(前年同期は営業利益2,506百万円)となりました。
とのことで、売上高の伸びが小さい割に、赤字転落しており、既存店の売上高は押しなべて悪いのだろうと推測できます。それはライザップグループの決算短信からも顕著です。
例えば
夢展望株式会社は、引き続き主力のアパレル事業がMD・商品企画の充実、SPA戦略の強化、店舗別の販売戦略の 強化等により好調に推移しております。一方で、主にジュエリー事業の伸び悩み及びシステム投資等により営業利 益が前年同期を下回る結果となりました。
とのことでつい先日、ようやく債務超過の状態を解消したばかりの夢展望ですが、さっそく営業利益が前年を下回る結果となっており、今後の先行きが不安視されます。
これは今年3月末の記事です。
当方が何よりもライザップグループのアパレル事業に疑問を感じているのは、買収した各社の関連性のなさです。例えば、夢展望、三鈴、馬里邑、マルコ、ジーンズメイトと並んでいて、ライザップグループは「シナジー効果が」と強調しますが、価格帯も顧客層もまったく共通しない各社を傘下におさめたところでどうやって「シナジー効果」とやらを発揮するのか疑問でしかありません。
夢展望はインターネット通販で低価格ヤングレディースを扱います。三鈴も低価格レディースチェーン店ですが夢展望ほどのヤングではありません。馬里邑はもっとミセス向け、場合によってはシルバー向けといえます。すでにこの3社ですらシナジー効果は発揮されていません。しかも別々にオンライン通販を行っており、例えば、夢展望と三鈴のオンライン通販を共通化するとか相互乗り入れするというようなことすらやっておらず、どのあたりに「シナジー効果」が発揮されているのかさっぱりわかりません。これはマルコしかり、ジーンズメイトしかりです。
マルコは女性向け高額補正下着・矯正下着で、ジーンズメイトは低価格カジュアルチェーン店で圧倒的にメンズ客の多い店です。ここにもシナジー効果が発揮できそうな箇所が見当たりません。
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