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アイドルに疎かった私が、2週連続海外コンに飛んだ話【SUGA|AgustD D-DAY TOUR 0618SG&0625SEL】

エンターテインメントには、「現実逃避型」と「現実直視型」がある。

「アイドル」というものは現実逃避型であることが多いと思っていた。アイドルにハマるということは、現実から目を逸らして幸せな世界に篭ろうとすることに見えていたのだ。そうできる人をうらやましく思いつつ、私はどうしても理性が働いてしまい、浸りきることができないので、アイドルファンにはなれないものだと思っていました。

▽ちょうど、この曲のようなイメージ(歌詞が強烈…)

だけど、BTSのSUGAこと、ラッパーAgustDであるミン・ユンギという人は、どこまでも「現実直視型」です。歌詞は率直で容赦ない。

▽AgustD名義の最初のミックステープのリード曲『AgustD』(2016)

公式の動画はこちら※日本語字幕なし

2016年、2020年と、2度にわたって公式アルバムではなく“ミックステープ”という形でアルバムを発表してきたミンユンギが、初めて公式のソロアルバムとして2023年4月に発表したのが『D-DAY』です。その発表の時のコメントがこれです。

「僕の音楽がそうであるように、僕はいつも正直です。飾ることなく、話したいことを盛り込みました」

中学生の時から作曲と作詞をはじめ、もともとはプロデューサー・作曲家志望であり、事務所に入る前も音楽関連の仕事をしていたミン・ユンギ。

もともとアイドルになる予定ではなかったけれどアイドルになって思い描いていたのとは違う人生になったという。デビューもなかなか決まらず、苦しい生活の中で事務所に黙ってアルバイトをして交通事故にあって肩を大けがしたのを隠したままデビューしたり(メンバーにすら5年くらい隠していた。2020年にようやく手術をして快方に向かってる様子)、予想外の成功による戸惑いや苦しみも経験してきた。

アイドルだから言ってはいけないことや伝えられない話をするために、BTSのSUGAとは別名義の「AgustD(アガストディー)」として自由に楽曲で表現している。

普段アイドルになかなかハマれないわたしが沼に引き摺り込まれたのがこの楽曲&MV。

ファンの方が作った日本語訳入り動画はこちら

BTSの楽曲自体、メンバーの企画によるものがほとんどで、作詞作曲のクレジットにも複数メンバーが入るものが多い。しかし特にAgustDは、アイドルSUGAとしては作品にできないような、ミン・ユンギ自身の苦悩や葛藤が率直に現れている。それでいて、決して自分の話に閉じて自己憐憫に浸ってしまうのではなく、聴く人が「自分のことだ」と感じられるような絶妙なバランスでできていて、動画も含め、エンターテインメント作品としても完成度が高い。すっかり新米ARMYと化してあれこれ情報を追っていたら、2023年4月にソロアルバムが発売され、さらにワールドツアーが開始された。SUGAとしてでもあり、AgustDとしてでもあるワールドツアー!わたし以上にこれを待ち望んでいた人はそう多くはないのでは……!?

……と、思っていたのですが、6月初旬の日本・横浜ぴあMMでの公演のチケットは、全くもって取れませんでした。ファンクラブに3種類も入ってて、ローチケ先行でも当選率がアップするという課金をしたのに、全て、完全に落選しました。

この時期は本当に心が荒んでいました……。

今思い出しても辛い。地元横浜に推しがくるのに観れないなんて意味がわからない。しかも、グッズのポップアップストアの抽選にも外れて、グッズすら買えませんでした。

しかし、一つ希望がありました。

それは、念のため、日本の抽選結果がわかる前に行われた、シンガポールのチケッティング(早いもの順でチケットを買うやつ)にも参加し、無事にVIP STANDING席を確保していたのです。

日本公演やテレビ出演ラッシュが終わり、BTSの10周年や新曲『TAKE TWO』で日本のARMYが盛り上がる中、ひっそりとシンガポールに行ってきました。

さらに、当たるわけがないと思っていた韓国・ソウルの最終日の公演の抽選に当たったのでした。本国公演に行けるなんて、一生に何度もないチャンス……!

海外旅行なんて6年ぶりだし、子持ちにとって2週連続土日不在にすることはかなり大変なこと。でも、めったに推しができないわたしが国境を超えてでも行きたいライブがある。こんなこと、5年に1回あるかないかです。家族に頭を下げて、人生初の2週連続週末海外遠征に旅立ったのでした。(夫に感謝!!!)

アジアの中心、シンガポールで飛び跳ねて号泣した

シンガポールに初めて訪れたのですが、想像していた以上に綺麗で、効率的で、快適な国でした。入国審査は無人の機械でピピっとやるだけ。空港から30分くらいですぐに市街地に着く。地下鉄も何もかもクレジットカードのタッチ決済で事足りる。機能的で、綺麗でありながら、街を歩くと中国のお寺があり、モスクがある。アジア中のいろんな文化が入り混じっているようで、外国なんだけど日本もちゃんとアジアの一部として当たり前に受け入れられている感じがあり、不思議と居心地の良い国でした。

土曜日は現地のヨガスタジオに行くなど観光を楽しみ、いよいよ日曜日。スタンディングのVIPだったので、13:30には現場に行って列に並びました。入場はチケットに印字されている番号順になるのだけど、勝手がわからないので早めに行きました。telegramというSNSで現地情報を発信してくれてるARMYがいて、そこでやり取りされる情報がとっても役立ちました。シンガポールコンに行く時は活用すると良さそうです。

炎天下で3時間ほど待ってやっと入場…!横浜で、あんなに入りたくても入れなかったD-DAY TOURの会場に、自分がいる!ということに感激して、辛かった待ち時間も吹き飛びました。

ユンギのチケットホルダーと重なって変な感じの写真ですみせん(写真がこれしかなかった)

そしてサウンドチェック。ブラックのTシャツにパーカーを羽織ったユンギさんが現れて、3曲ほどやったはずですが、体感1秒でした。一瞬で去るユンギさん。画面越しでみてきたユンギさんが実在していたことはとりあえず確認できました。白いし、噂通り彫りが深い。だけど、なんかポヤポヤしてる。とにかく声がいい。

スタンディングならではの最前列争奪戦(喧嘩してる人もいた)に疲れて、本番はPA卓の前に移動してゆるゆるみることにしました。

この判断はとても良かった!
後ろは平和な人たちばかりだし、前に張り付いてるよりもユンギさんの顔がよく見えた。

同じく後ろに移動してきた海外在住の日本ARMY親子と仲良くなり、おしゃべりしていたらあっという間に本番が始まります。

フロアだから、ステージの全ては見えない。ユンギさんの腰から下は全く見えない。それでも、時々見える横顔の美しさよ…。さっきのサウンドチェックの方ですよね…?ギャップがすごい。

オラオラ系で煽るユンギさんに、「Oh my god!!!」と絶叫するビジャブをつけた少女たち。Fワードやタバコを咥えるシーンで大喜びする世界中のファンたち。この反応も込みで面白い。

他の国の現場をよく知らないけど、シンガポールの客層はかなり国籍がばらつくのではないだろうか。インドネシア人やシンガポール人が多めではありつつ、インド人、韓国人、日本人、中国人、オーストラリア人?その他世界中から集まったARMYたちが、一緒に飛び跳ねて、踊り狂い、韓国語で大声で歌う。「太平洋周辺国が一丸となって推してる!」という感じに胸がいっぱいになった。

ピアノ弾き語りの「Life Goes On」あたりからは、なぜか大号泣。本当に来れて良かったなぁ、と感謝の気持ちでいっぱいに。「snooze」では思わず「ありがとう!!!」と叫んだ。

初めてのソウルは、あたたかかった

そして放心状態で1週間何とか仕事と育児をし、今度は韓国ソウルへ。

初めて、かつ1人だったので、よく分からず仁川に行ってしまい、しかも空港リムジンバスでホテルに向かいました。これから行く方には、金浦へ行って地下鉄を強くお勧めします。笑
漢江の流れよりも遅い渋滞にはまり、昼過ぎに空港に着いたのに、夕方16時半ごろにやっと江南区内のホテルに到着。

ちなみに、韓国語はduolingoで1年ちょっと、友人のオンラインレッスン月2回を半年ほどなので、本当に初心者。だけど行く先々で韓国語でしかやり取りできないシーンが多く、勉強しておいて良かったと思いました。韓国旅行の経験者は「日本語で大丈夫」と言うけど、それは多分観光地の話。観光地から少し逸れると、韓国語がわからないと不便な感じでした。でもみんな、メチャクチャな発音でもしっかり汲み取ってくれて親切でした。

1日目はホテルに着くなり、慌ててHYBE INSIGHTの写真展を見て、滞在中唯一のちゃんとした食事になるであろうカンジャンケジャンを食べ、隣のサラリーマンと少しだけ楽しくおしゃべりし、19時にはホテルに戻ってストリーミングを見ました。ホテルに戻るまでの2時間で写真展とカンジャンケジャン(あと、チャミスル1本空けた)。忙しかった!

ホテルでオンラインで観たソウルでの公演初日。ユンギさんもリラックスしてるし、韓国語でのファンとの掛け合いが自然。「소리 질러」のバリエーションも豊富!韓国のFワードへの反応の熱さがやはり本国ならでは。翌日にはこの現場に私が行くのか…と、武者震いしながら寝ました。

翌日は朝10時からグッズの販売が始まります。会場から2.5キロ圏内でしか注文できないので、近くのホテルにしていて良かった!と思いつつ参戦するも、惨敗。目当てのピックやTシャツは買えず、キーホルダーとピンバッジだけなんとか手に入れました。

韓国は本人確認が厳しいと聞いていたので、ドキドキしながらやっぱり14時ごろには会場へ。

無事に本人確認完了。SUGA/AgustDのコントラストが薄くなってる

炎天下でしたが、2回目ともなると少し慣れてきて、日陰で少し休んでから会場へ。今回は座席ありのVIPだったので、列に並ぶ間も平和で、ゆったりした気持ちで会場入りできました。隣の席の韓国人の子と少し喋ったりしていたら、あっという間にサウンドチェック。白いシワシワのTシャツ(ちゃんとしたブランドのやつだったらしい笑)、3本線のジャージにサンダルで、シンガポール以上にポヤポヤ現れたユンギさん。韓国だからか、よりリラックスしていてよかった。

そして本編。ユンギさんがダンサーに担がれて入場するかしないかの瞬間に、私のいたブロックは全員立ち上がってました。シンガポールでは最初の2曲は少し探りさぐりな感じがあったけど、本国はとっくにもう、仕上がってる。始まる前から「私たちが盛り上げるんだ」と言うファンの気迫を感じる。各ブロックでARMYが作ったスローガンが配られ、そこのQRコードを読み込むと、掛け声の説明入りの歌詞カードのPDFが確認できた。現地ならではの、ファンが歌詞を変えて歌う部分の指定などもわかりやすく書いてあり、とても心強かった!

そのおかげもあってか、始まる前から客席は団結している。一曲め「해금」からずっと、自然に声が出て踊ってしまう。2階席の前から8番目だけど、ステージの炎の熱気が顔にかかる。

スーツ着て、爆イケラップしながらこっちに向かってくるユンギさんがカッコ良すぎる。『저 달\moonlight』の「ㅆ*발」(Fワードのような言葉で、本当に言ってはいけないらしい)もツアーを通してエスカレートしてきて、本国だからこそ気持ち良さそうだし、ファンの反応も熱かった。歌詞も正確にみんなが歌うので、周りに合わせて歌っていたら、自然と歌詞の内容も頭に入るような気がした。(まだまだ韓国語がわからないのがもどかしい!けど、これからもっとわかっていくのが楽しみでもある)

この日は、特に『snooze』が良かった気もする。前後に「ありがとう」とイルアミが口々に叫び、本国アミたちも教授の動画に「おおー」と言う反応もあり、さらに客席にマンネライン3人がいたからか、ユンギさんの歌唱が、より一層熱がこもっていて全身全霊で歌っている気がした。いつも、どの会場でもそうだけど、この日は特にそう感じた。

シンガポールでは、フロアだったからか感情が昂ってそれはそれで良かったけど、この日はシッティングだったので(待ち時間しか座らなかったけど)少し距離を置いて、ショーとして冷静に観ることもできた。テーブルを組み合わせたようなステージが、徐々に宙に浮いていって最後にはフロアで歌う感じや、照明とスモークの演出の美しさも味わえた。SUGAとAgustDの境は曖昧になり、「墜落が怖い」と歌ったユンギさんはスマートにフロアに着地する。

最終日にスペシャルゲストもなく、本来やりたかったセットリストと演出で押し通した感じがユンギさんらしい。(追加公演も発表されたので、最終日ではなくなったけど)

「注目〜!」って…
このダサい感じがいい笑

ライブで感じた「説得力」

BTSのライブといえば、ダンスパフォーマンスと歌唱力、そしてラップも含めたパフォーマンスの質が高いことをイメージする人が多いと思う。
今回のツアーではユンギさんは踊らない。
だけど、2020年ごろから明らかに筋トレをして体を分厚く仕上げていたし、2022年6月のバンタン会食では「アイソレーションからダンスを学び直している」と、BTSのメンバーでありながら、ダンス初心者のレベルからやり直していることを話していた。

今回のツアーでは踊らないのだけど、ラップをしながらの身のこなし、広い舞台を縦横無尽に動き回りながらのパフォーマンスには、この基礎練習が生きてると感じた。ピアノの弾き語りも、ギターの弾き語りも、楽器を練習する姿を何年も見せてきてくれたので、その結果をこうしてワールドツアーで見せてくれるなんて本当にありがたいし、信頼できる人だな、と感じた。

コンサートの締めくくりは『마지막/LAST』という曲。AgustD初めてのミックステープに収録された曲で、鬱や対人恐怖症の過去を振り返り「俺のファンよ堂々と顔上げろ」「もう大丈夫だ」「誰が俺ほどやれるっていうんだ」と叫ぶ。すごくダークで重い曲。音源が出た時のイメージは、苦しい中にいながら必死で自分を鼓舞してもがいている印象があった。

だけど、このツアーの締めくくりで歌うと印象が違った。「俺のファンよ堂々と顔上げろ」の、後半部分の説得力が増しているのだ。本当にもう大丈夫なんだ、この人にしかできないことをやり遂げてるとんでもない人だ。そんな説得力が仕上げた身体からも、声からも、そしてこのワールドツアーをやり遂げたという事実からも滲み出ている。

当日、トークの中で「幸せです」としみじみと言ってくれたけど、それはセリフではなく、口先ではなくて、本当に心から出てきた言葉に感じられた。このツアーを経てからBTSの新曲『TAKE TWO』のユンギさんのパート「행복합니다.」を聴くと、胸に届く印象が違う。本心なんだな、と感じられて、心が温かくなる。

ツアーを通じて自信を得て、素晴らしいバンドメンバーとの絆も強まって、BTSの中にいるときは自信なさそうだった「歌」にも自信がついて、きっとこれからまた違ったこれからの活動が楽しみで仕方ない。

いろんなハードルはあるだろうけど、兵役を経て2025年、さらにその先にどんな姿を見せてくれるのか楽しみで仕方ない。結婚したり子どもを持ったりもして、そういう経験も曲にしてくれるだろうか。そんなのも楽しみだなぁ。

まずはあと3回の公演を見届けつつ(オンラインストリーミングかライビュを頼む…!)、息長く推していこうと思いました。

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