2018年3月10日開催 視覚障害者のための電子音楽制作入門 音声編集ソフトAudacity解説

2018年3月10日に、視覚障害者のための電子音楽制作入門 音声編集ソフトAudacityの解説について、イベントをやります。場所は東京都八王子市の八王子音楽院貸会議室で、時間は14:00前後を予定していますが、会場到着後の準備も含めると、開始は14:30頃になるかもしれません。ツイキャスの配信も行います。

ツイキャスURL https://twitcasting.tv/mina_nono/

(ライブが始まると表示されます。)

当日使用する原稿を準備しています。予習用や、これがあればレクチャー聞かなくても大丈夫、用にお使い下さい。なお、当日進行が違う場合も、当日までに修正される場合もありますので、ご了承下さい。

以下、最後まで原稿です。

本日は、視覚障害者のための電子音楽制作入門 音声多重録音編にご参加の皆様、ツイキャスをお聞きの皆様、ありがとうございます。主に、音声編集用フリーソフトAudacityをスクリーンリーダーNVDAで利用する場合の操作方法を解説します。

本日講師を務めます、野々垣美名子です。
視覚障害者向けスクリーンリーダーNVDAの日本語チームとヘルプデスクに所属している他、個人でも視覚障害者の生活に役立ちそうな機械や情報を個人的に研究しています。


AudacityをスクリーンリーダーNVDAで操作する方法については、AccSellの中根雅文さんから教えていただきました。ありがとうございました。

多重録音について簡単に説明します。
普段からICレコーダーで録音される方はご存知と思いますが、普通に録音出来るのは一回だけです。録音ボタンを押して、録音して、停止ボタンを押して出来上がった録音ファイル。再生ボタンを押すと録音したものを聞くことが出来ます。同じICレコーダーで、録音した音の上にさらに重ねて別の音を録音することは出来ません。

これを可能にするのが、マルチトラックレコーダー、MTRという録音機や、複数トラックが録音出来るパソコンソフトです。
いろいろありますが、今日は、Audacityという、音声編集用フリーソフトのご紹介をします。

Audacityは、Audacity teamにより作られたソフトです。
公式には、
https://www.audacityteam.org/copyright/
というURLのサイトからダウンロード出来ます。現在のバージョンは、Audacity2.2.2で、インストーラーのダウンロード直リンクは下記です。https://www.fosshub.com/Audacity.html/audacity-win-2.2.2.exe


インストールの際に、言語を選ぶことが出来ます。日本語もあります。中根さんのおすすめは、いろいろな機能のショートカットキーを使える英語版です。今日は、英語の用語にあまりなじみがないと思うので、日本語を利用して進めます。

Audacityで出来ることをまず簡単に説明します。
音声の録音、再生が出来ます。録音の入力は、パソコンの内蔵マイク、パソコンのスピーカー、パソコンのヘッドホンなどが選べます。再生の出力も、パソコンのスピーカー、パソコンのヘッドホンなどが選べます。拡張子wav、mp3などの音声データを読み込むことが出来ます。

録音したり、読み込んだりした音声データは、Audacity上で1つのトラックとして扱われ、複数のトラックを作ることで、複数の音声データが同時に再生されるようになります。

ではさっそく、Audacityを起動します。
Audacityの画面は、3つの領域に分かれています。上、真ん中、下です。
上には、再生、停止などの操作用のボタンや、録音入力、再生出力切り替えなどの設定があります。
真ん中は、録音、再生、編集する音を、横軸時間、縦軸音の大きさの波形で表されるエリアです。1つの音が1つのトラックになります。
下は、トラックを編集するカーソルの横軸の位置、つまり、時間を表すエリアです。3つの時間が表示されています。これも、後ほど説明します。
これら3つの領域を、ctrl F6というショートカットキーで移動出来ます。

では、パソコンの内蔵マイクで録音してみます。オーディオホストをWindows WASAPI、録音デバイスを内蔵マイクにします。
録音を始める方法はいくつかあります。ショートカットキーRを押す方法、画面の上のエリア内にある録音ボタンを押す方法、altメニューから録音を呼び出す方法です。今日は、ショートカットキーを使用します。録音停止はスペースキーです。
録音
再生は、スペースキーまたは、画面の上のエリア内の再生ボタン、altメニューで行えます。
再生

では次は、パソコンの音を録音してみます。今日は、ヘッドホン端子に外付けスピーカーをつないでいますので、録音の入力はヘッドホンを選ぶことにします。録音の入力先を、ヘッドホンに変更します。上のエリアにありますので、録音モードをWWE、録音デバイスをヘッドホンに変更します。これを選ぶと、ヘッドホンで鳴っている音を録音することが出来ます。これが出来るかどうかは、パソコンに入っているオーディオデバイスに依存するそうですが、何かソフトを入れるなど解決方法はあるようですので、もし試していて困ってしまった場合はご相談下さい。

録音する前に、先ほどの内蔵マイクで録音して出来たトラックを削除します。
トラックにフォーカスが当たっている状態でエンターすると「選択」と言います。もう一度エンターすると「選択なし」と言います。「選択」と言うようにして、Altメニューからトラック、トラックの削除を選びます。これで、トラックが消えました。スペースキーを押しても再生されません。

録音、再生操作は先ほどと同じです。

録音
再生

次は、音声ファイルを読み込んでトラックを作ってみます。
先に、先ほどのトラックを消しておきます。

音声ファイルは、例えば拡張子wavやmp3の物です。
wavファイルはAudacity単体で読み込むことが出来ます。mp3は、lameをインストールすると、Audacityに読み込むことが出来ます。lameのダウンロード先は、Audacityをインストールしてから初めてmp3ファイルを読み込んだり書き出したりしようとすると、エラーメッセージと共に表示されます。

音声ファイルの読み込みは、Altキーを押して、ファイル、取り込み、オーディオの取り込みです。
オーディオの取り込みを実行すると、エクスプローラのような、ファイルを開く画面になりますので、取り込みたいファイルを選んで、開くを押します。
今日は、音羽ざくろさんのCDの心の鼓動の心の鼓動を使用させていただきます。mp3に変換したファイルを開きます。
開きました。再生してみます。
再生

ではいよいよ、複数トラック録音の実演をしてみたいと思います。BGM付き朗読やポッドキャストなどのデータ作成のような感じにしたいと思います。
内蔵マイクで、暇つぶしラジオのミニ番組の冒頭を読むのを録音してみます。
音楽が鳴るのが一緒に入らない方が良いので、ヘッドホンから音が出るようにして、ヘッドホンの音を聞きながら録音します。今日は外付けスピーカーの音量を絞って録音します。
新しいトラックを追加します。Alt、トラック、新しく追加、ステレオトラックです。

録音入力を内蔵マイクに切り替え
録音

「ミナのアクセシビリティ研究発表 この番組では、視覚障害者の生活に役立ちそうな機械や情報を個人的に研究している私 ミナが、少しずつ出始めていると感じている成果をお話します」

では、聞いてみます。
再生

BGMと、話している声が重なって再生されます。
今、BGMのトラックと、声のトラックの2つがあります。
重要なのはトラック1つずつに、いろいろな操作が出来るということで、例えば、音量の変更をトラックごとに別々にすることが出来ます。
今フォーカスがある方のトラックの音量を調整してみましょう。
トラックでエンターして、音量を変更するためのキー操作、shift gを押します。gはゲインのgです。
ゲインのウィンドウが開いて、数字を直接入れられるところにフォーカスが当たります。
タブキーを押すと、スライダにフォーカスが当たります。右で音量を大きく、左で小さく出来ます。
音量を右矢印で上げて、エンターを押します。
再生
音量が大きくなりました。
なお、実際に朗読やポッドキャストデータを作る時は、ICレコーダーにマイクをつないで、mp3データをAudacityに読み込んだ方が、パソコンの内蔵マイクを使うよりも、音質が良くなると思います。

では、今日の本題の、歌詞音声ガイドデータの作成に入ります。
今まで作ったトラックを全部削除します。
今日は、海原由(みはらゆう)さん作詞、音羽ざくろさん作曲、心の鼓動を使用させていただきます。歌入りの曲をAudacityで録音した作ったmp3ファイルで用意していますので、これを使います。
読み込みをします。
歌詞は、あらかじめテキストデータを作成してあります。
フレーズごとに改行されていて、漢字の読み間違いが生じないように、全部ひらがなで書いてあります。
これを、NVDAで読み上げているのを録音します。
曲と歌詞の読み上げが独立して別トラックに録音されるように工夫をします。
ここでは、曲の再生をヘッドホンである外付けスピーカーにし、録音先の歌詞の読み上げをパソコンの内蔵スピーカーに設定します。そして、NVDAの出力先デバイスを、内蔵スピーカーにします。NVDAキー+NでNVDAメニューを呼び出し、設定、音声エンジン、出力先デバイスで、スピーカーにしてエンターです。
まずは、曲を歌い出すところで、読み上げをするようにします。
設定
録音
再生
次に、歌が始まる前の部分を少し消して、歌詞のタイミングを早めます。
さっき録音した歌詞の方にフォーカスが当たっていて、カーソルが先頭に来ています。ここで、shiftキーを押しながら、右矢印キーを8回押して、元々カーソルがあった位置からの範囲を選択します。この状態で、開き角かっこを押すと選択している領域の先頭、今は0時間0分0秒、閉じ角かっこを押すと選択している領域の終わり、今は0時間0分2秒ちょっと、であることが確認出来ます。ここで、数字が読まれる前に、漢字で書かれた位置、が読まれるのが、数字の1とまぎらわしく少々わかりにくいので注意します。ここでdeleteキーを押します。
再生
さっきよりも、歌い出しより2秒早いタイミングで、歌詞が流れるようになりました。レクチャーでは心の鼓動を取り上げましたが、私のYoutubeチャンネルに、音羽ざくろさんのTear with Smileを使わせていただいて歌詞音声ガイド付き曲データを作成した物がありますので、ここでご紹介します。皆様自由にアクセスしてお聞きいただけますので、歌の練習にぜひお使い下さい。

レクチャーでは心の鼓動を取り上げましたが、私のYoutubeチャンネルに、音羽ざくろさんのTear with Smileを使わせていただいて歌詞音声ガイド付き曲データを作成した物がありますので、ここでご紹介します。皆様自由にアクセスしてお聞きいただけますので、歌の練習にぜひお使い下さい。Tear with Smile 

Tear with Smile 歌入り 歌詞入りでGoogle検索すると、一番上にヒットします。
https://www.youtube.com/watch?v=UJrqvt6nQU8

 
では次は、カラオケデータを使って歌を歌って、録音したとします。自分の歌声を、カラオケマイクみたいに響かせる、リバーブ機能をご紹介します。
曲はヘッドホンで再生したのを聞きながら、自分の声だけをマイクで録音します。ICレコーダーにマイクをつないで録音し、Audacityに読み込んで使用するときれいだと思います。

今日は、心の鼓動を歌手の徳久望さんに歌って録音していただいたデータを使います。
読み込み
再生
では、歌声を響かせます。
Ctrl A、Alt、エフェクト、リバーブ、そのままエンターします。
再生
このように、歌声が響くようになりました。
これに、音羽ざくろさんの心の鼓動のCD版を重ねると、こんなふうになります。
読み込み
再生
このように、自分の歌のデータも本格的に作れます。

では、最後にファイルの保存について説明します。
保存には、Audacityの作業を引き続き出来るようにするためのAudacityプロジェクトファイル、拡張子aupのファイルと、他のプレイヤーソフトで聞けるwavやmp3などの音声ファイルにするためのExportの2種類があります。
まずは、aupファイルです。
aupとして保存すると、拡張子aupのファイルと、同じ階層に、音声データ用のフォルダが出来ます。フォルダには、ファイル名_data (アンダーバーデータ)、という名前がつけられます。データ、は、アルファベットのdataです。この2つがきちんとファイル名、フォルダ名も含めてセットになっていないと、ファイルが足りないなどのエラーの元になるので、注意が必要です。エクスプローラからフォルダ名やファイル名を書き換えて、うまく開けなくなったことがあるので、名前を変えたい時は、Audacity上で新しい名前のファイルとして保存する方が安全です。
次に、音声ファイルです。先ほど読み込みの時にお話したように、mp3の場合、lameが必要です。
ここでは、mp3で保存してみます。
今日の多重録音のレクチャーはこれで終了です。
お疲れ様でした。
ありがとうございました。

おまけ
オートドック
トラック1を曲データ、トラック2を歌詞読み上げ音声とします。
トラック1でエンターして選択し、Alt、エフェクト、オートドックすると、下にあるトラック2をコントロールトラックとして、歌詞の音が鳴っている間、曲の音量が小さくなります。


Sound Finder


無音
Alt、ジェネレート、無音を選ぶと、時間を入力するダイアログが出て来ます。時間を入力してエンターすると、カーソル位置を先頭に、入力した時間分、無音が挿入されます。先に範囲を選んでおいてからAlt、ジェネレート、無音を選ぶと、選択した範囲内の音が消えて、無音に変わります。


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