RSBCにおける第二次世界大戦を生き残った英国戦艦は何隻か?

小説版レッドサンブラッククロスの読者の間でよく議題に挙げられる話題の一つに、「BB30問題」というものがあります。

これは、外伝1巻「勇者のごとく倒れよ」の中で1951年2月に日米英枢軸国が大西洋に展開する揚陸支援任務群に30隻の戦艦が所属しているその内訳を論ずるものです。この話の中にある日米英枢軸海軍の戦闘序列では、記載されている他の部隊も含め44隻の戦艦が枢軸軍大西洋方面の司令部指揮下に存在していることになり、果たしてそんなに戦艦がいるのかという事実に頭を悩ませることになります。

そこで、この問題を扱う前の準備として、英国戦艦はどれだけの数が第二次世界大戦でどれだけ生き残ったのかを思考してみることにします。

◆前提条件

英国戦艦に関して本編と外伝で記述された内容は以下のものになります。

キングジョージ5世級戦艦
・<キングジョージ5世>
 竣工間際で英本土脱出(ダンケルク作戦)(本編)
 ダンケルク作戦で第一遊撃部隊に所属(密書)
 第三次世界大戦に参戦が確認できる(外伝1巻)
・<プリンス・オブ・ウェールズ>
 未完成状態で(ダンケルク作戦)(本編)
 ダンケルク作戦で「アーク」船団に所属(密書)
 第三次世界大戦に参戦が確認できる(本編)
・3番艦以降
 建造中のところを破壊(放棄?)、ないし独軍に拿捕される(本編)

ネルソン級戦艦
 <ネルソン>
 ダンケルク作戦に参加。第一遊撃部隊に所属(密書)
 <ロドネー>
 ローレライ作戦で独海軍の攻撃により戦没(本編)

クイーン・エリザベス級戦艦
・<クイーン・エリザベス>
 個別記述は無い
・<ウォースパイト>
 個別記述はない
・<バーラム>
 41年地中海で戦没(史実)
・<ヴァリアント>(<バリアント>)
 ダンケルク作戦で独軍航空機により戦没(密書)
 英本土で修理中の所を独軍に拿捕(本編)
・<マラヤ>
 英本土で修理中の所を独軍に拿捕(本編)

ロイヤル・サブリン級戦艦(リヴェンジ級戦艦)
・<ロイヤル・サブリン>
 個別記述は無い
・<ロイヤル・オーク>
 39年スカ・パフローでUボートの攻撃で戦没(史実)
・<リヴェンジ>
 個別記述は無い
・<レゾリューション>
 ダンケルク作戦で独軍航空機により戦没(密書)
・<ラミリーズ>
 ローレライ作戦で独軍航空機により戦没(密書)

フッド級巡洋戦艦
・<フッド>
 ローレライ作戦で<ビスマルク>の攻撃により戦没(本編)

 レナウン級巡洋戦艦
・<レナウン>
 個別記述は無い
・<レパルス>
 個別記述は無い

このほかの記述
・本編で、独軍のローレライ作戦により<フッド>、<ロドネー>を失った後に、基地機とUボートにより英国艦は数隻の艦艇が戦没し、20隻以上の艦艇が重大な損傷を負った、とある。
・外伝「九九九艦隊計画概論」の記述に、ダンケルク作戦で戦艦3を失うとある。
・密書「キルロイここにあり」の記述で、独軍航空攻撃を生き残ったのが<キングジョージ5世>、<ネルソン>、QE級3、R級1、とある。

以上の前提に追加して、資料精査の面から3つ、注意することがあります。

・外伝「勇者のごとく倒れよ」は佐藤大輔当人が書いたものだが、その前日譚となる「戦艦<ヒンデンブルグ>の最後」と合わせて、本編のものとは艦艇のスペックや歴史展開が微妙に異なる部分が散見される。
・外伝「九九九艦隊計画概論」では日本の艦艇建造時期が本編と比べ加速しており、登場時期があきらかにずれている。
・密書「キルロイここにあり」は清水貞樹氏が佐藤大輔より依頼を受けて書かれたものであり、二次創作的要素が強い。

このため、本編との記述とは矛盾したポイントがいくつか発生してしまっているのです。

そのため、ここでは大前提として、基本的に本編を主とし、外伝その他はこれを矛盾しないようにいくつか記述内容の変更を行って、筋の通る組み合わせを考えていくことにします。

◆関係整理

まず、キングジョージ五世級の2隻は各記述より生存が確定します。

ネルソン級については「キルロイ」の記述から<ネルソン>のみが生存として良さそうです。

クイーン・エリザベス級では、<ヴァリアント>については「ダンケルク作戦で独軍航空機により戦没(密書)」「英本土で修理中の所を独軍に拿捕(本編)」と矛盾する内容となっていますので、本編を重視して独軍に拿捕されたとし、代わりの戦艦が航空攻撃で沈んだこととします。
また、「キルロイ」の記述により1940年9月の段階で3隻のクイーン・エリザベス級が生存とあることから記述の無い<クイーン・エリザベス>、<ウォースパイト>、<バーラム>の3隻がダンケルク作戦でこの時期は生存していたと考えてよいと思われます。
この後<バーラム>が史実通り戦没するかは不明ですので、RSBC世界では第二次世界大戦は仮生存としておきます。

R級戦艦については、<ロイヤル・オーク>が1939年にスカ・パフローでUボートの攻撃で戦没(史実)していますが、これは作中の時期的に史実準拠で良いと考えてもいいでしょう。
また、「キルロイ」の記述により第一遊撃部隊として1隻のR級が生き残っているとあることから、記述の無い<ロイヤル・サブリン>と<リヴェンジ>のどちらかがここに含まれることになります。
そして、第一遊撃部隊に所属していなかったR級は先のクイーン・エリザベス級の<ヴァリアント>の代わりにダンケルク作戦で撃沈されたことにするのが自然でしょうか。
ここでは仮に<リヴェンジ>をダンケルク作戦で撃沈されたとしておきます。

最後に、外伝「九九九艦隊計画概論」にある、ダンケルク作戦で3隻の戦艦が沈んだとの記述との矛盾を埋めないといけません。ここまでの考察で2隻の戦艦が沈んだことが分かるので、もう1隻の犠牲が必要です。

これについて考えられるのが、
1)外伝記述の「戦艦」は「主力艦」の意味であるとし、レナウン級巡洋戦艦の1隻がダンケルク作戦で戦没した
2)1940年9月の戦闘で生き残っている戦艦の内、1隻がダンケルク作戦後半に戦没した

の2つから考えられると思います。

私としてはここでは2の場合を採用することにします。

何故かというと、外伝「ルール・ブリタニカ」においてダンケルク作戦末期(1940年10月)に、<金剛>が英国から荷物を積んで脱出するシーンがありますが、これは当初はこの任務に就く予定だった英国戦艦が戦没したため、急遽代役として<金剛>が投入されたのではと考えることが出来るからです。

ここで、英国戦艦としては二五ノットの高速が発揮可能な<バーラム>の存在が浮かび上がってきます。この時点でクイーン・エリザベス級は3隻が生存となっていますが、このうち史実で沈んだ<バーラム>をこの任に当てることは読者に対してもそれほど違和感がありません。

◆結論

以上から、RSBC世界における英国戦艦の内、第二次世界大戦を生き残ったものは、

キングジョージ5世級戦艦<キングジョージ5世><プリンス・オブ・ウェールズ>
ネルソン級戦艦<ネルソン>
クイーン・エリザベス級戦艦<クイーン・エリザベス><ウォースパイト>
ロイヤル・サブリン級戦艦<ロイヤル・サブリン>

以上の6隻であるのではないでしょうか。

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