【雑文】とっさの行動
以前に書店員の知り合いから聞いた話なのだけれど、この日本で一番本を読む読む世代は30~40代の男性なのだという。
とはいっても今は本を読む人が随分減っているそうなので、年間に数冊という程度の話なのだろうけれど。
もちろん人によって好みはあるのだろうけれど、そうしたサラリーマン世代の男性が読む本と言えば、ビジネス書や自己啓発書の類なのだと思う。
書店に行けば、そうしたビジネス書の類はいくらでも見つけることができる。
毎日のように新刊が発売されるし、書店の一番目立つところに平積みにされて並べられている。
特に最近では、芸能人や有名人が表紙に大写しになっている本が目立つように思う。僕は読んだことはないけれど、ランキング等をみるに相当売れているようだ。
それだけ多くの人が自分を変えたいと思っているということなのだろう。
他にも書籍に限らず、そうした内容のものはweb上にも多い。いわゆるハック系と言われるような記事だ。
残業を減らすための仕事術。タスクを上手に管理する方法。部下をマネジメントするためにはどうすればいいか。 交渉を上手に運ぶための会話法、等々。パッと思いつくだけでも類似の内容はいくらでもある。
日本人は生産性が低いと常々言われているけれど、そうした状況を改善するために、みんな苦心しているのだろう。
僕もこれまでに何冊かそんな本を読んだことがある。
自主的にだったり、会社に命じられて、だったりするけれど。
ただ、そうして読んだ結果、効果があったかと言われれば、正直どうだろうなという感じだ。
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タスク管理やメール作法なら分かりやすい。
本や記事を読んで、実際に試してみることも容易だ。
けれどそうしたハック系の中でも特に難しいのが、会話術だと思う。
文章と会話は似ているようで、全く性質が違う。
一番大きな違いは、文章ならば考える時間をとることができるが、会話では即時性を求められるということだ。
僕は会話が苦手で軽いコミュ障の傾向があると自覚しているのだけれど、その中でも特に苦手なのがとっさの返しだ。
マニュアルに則った接客や、当たり障りのない会話なら人並みにできると思うけれど、相手のジョークに上手く返したり、あるいはこっちからジョークを飛ばしたりするようなことは本当に難しいと思う。
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からくりサーカスという漫画に、ナルミという武術の達人が出てくる。
その漫画の、序盤の山場ともいえる場面に、彼が怒りのままに敵を打ち倒すというシーンがあるのだけれど、それを見ていた周りの人は言う。
「どんなに怒り狂った人間もドアに突進することはない。習慣どおりドアを開けて部屋に入る。ナルミもどんなに怒ろうと、身についた戦いの体さばき、心の置きどころは見失っていないのだ」と。
とっさの行動にはその人の本質が現れると思う。
だから会話術を磨くということは、ある意味で自身の本質を変えていくということだと思う。
それはナルミが武術を学んだ過程と同じことだという気がする。
並大抵の努力で身につくものではないし、訓練をしても身に着けるまで長い時間がかかるだろう。
人に好かれる会話術を知っていても、それを実践できるかどうかはまったく別問題だと思う。
僕はいつも会話が終わってから、あの時はああ言えば良かったなと、後悔することも多い。
怒り狂っていてもユーモアを忘れない人間になれる日は、まだまだ先になりそうだ。
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