【雑文】エンカウントする商売
最近ティッシュ配りをあまり見かけないような気がする。
一昔前なら、土日に繁華街に出向けば必ず数回は遭遇して、カバンの中には常にポケットティッシュがいくつか入っているような状態だった。
けれど思い返してみれば、ここ最近街中でティッシュをもらった記憶があまりない。
もちろん今はコロナのご時世だから余計に見かけないのだけれど、その前からそんな傾向だったように思う。
多分それは、効果が見合わないからやらなくなったのだろう。
僕がよくティッシュを貰っていたようなころは、消費者金融やコンタクトレンズ、求人サイトの広告が多かったように思う。
だが冷静に考えて、ティッシュに挟まった小さな広告をみて、それらのサービスを利用しようと考える人がどれほどいるのだろう。
きっと相当少ないのではないだろうか。少なくとも、僕は一度も利用したことはない。
僕が住むアパートの郵便受けにはよくチラシが入れられているが、ああいうポスティングなんかも似たようなものだろう。
飲食店の新規オープンを知らせるチラシなら「おっ、こんな店が出来たのか。今度行ってみようか」となるのも分からなくはないけれど、建設中の高層マンションのチラシが入っていたとして「おっ、これはいい物件だ。今度買ってみようか」とはならない。
まあマンションの方は、1件あたりの実入りがあまりにも大きいので、率が低くても数打てば当たる理論が成り立つのかもしれない。
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ティッシュ配りと似たような事例で街中でたまに出くわすのが、食べ物の売り歩きをしている人だ。
有名なところだと、幻のクリームパンなんてものがテレビで取り上げられていたことがあって、僕も街中で何度か遭遇したことがある。
他にもメロンパンだったり饅頭だったり果物だったりすることもあるけれど、まあ同じようなものだろう。
あれも相当打率が低い販売方法だよな、と個人的には思う。
スムーズにあの商売が成り立つタイミングというのは、パンを食べたいと思っているときに、たまたまパンの販売員と出くわしたときだけだ。
だがそんなことがあり得るのだろうか。
もしどうしてもパンが食べたいと思ったなら、コンビニか近所のパン屋にでも買いに行くだろう。
販売員に話しかけられたタイミングと、自分の需要とがピッタリ合致することなんて、まず無いだろう。
だからあの商売が成り立つためには、特別需要を持っているわけでもないお客さんに欲しいと思わせるセールストークが必須になる。
基本的には断られることの方が多いだろうし、買うとしても、断るのも悪いし1個買うか、とか、まあ高いものでもないし買ってみるか、みたいな感じに落ち着く。
聞いた話ではあれは、新人社員研修の一環としてやらせている場合もあるのだとか。
僕が確かめたわけでは無いので実際のところどうなのかは分からないけれど、確かにセールスの練習としてはとても良い事例だろうと思う。
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ところでこうした販売方法で上手いなと思ったのは、夜の歓楽街で売り歩くことだ。
以前バーテンダーをしていた時にはたまに見かけたのだけれど、夜の街にはこういう販売員がたまに現れる。
僕は買ったことは無いけれど、見ていると案外買っている人も多くて、打率としては相当なものだったのではないだろうか。
というのも、酔っぱらいは財布のひもが緩くなるということもあるけれど、それ以上に、こういう物はお姉ちゃんのいるお店に行くときのお土産にちょうど良いのだ。
それほど高くないから相手に気を遣わせることもない。食べたらなくなる「消え物」で、しかも「〇〇金賞受賞」だとか「〇〇のシェフが監修」だとかがあれば、ちょっとした話のタネにもなりやすい。
本当に上手いこと考えたものだ。
もしマッチ売りの少女も酔客を狙って声をかけていれば、凍えることもなかったかもしれないなと思う。
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