牛丼と寿司は本質的に同じ

 本当の頭の良さとは何か、という話は誰もが若いころにしたことがあると思う。
 記憶力や発想力であったり、論理的な思考力であったり、あるいは単純に偏差値のことであったり、人によってその答え方は様々だろう。

 そのどれもが一面では正解だし一面では不正解なのだと思う。これが唯一の正解だと言えるような答えは、きっと無い。
 だがあえて答えるのなら、僕が思う頭の良さとは、『物事の本質を見抜く力』のことではないかと思う。
 
 本質を見るとは、物事を要素に分解して、異なる物事に共通する要素を見つけ出すことだと思う。表面的に見えている物事をそのまま捉えるのではなく、その裏側に隠れている意図や目的を見つけ出す力だ。

 例えば、僕も小説を書くときに参考にしたりするのだけれど、物語の世界には『物語論』というものが存在する。物語論とは、フィクション作品に頻出するパターンを分析して、物語の構造や形式を研究しようとする論のことだ。
 物語論に従えば、プロットに詰まった時の参考にできたりする。
 
 その中でも最も王道で、最も有名なものは『ヒーローズ・ジャーニー』だろう。ヒーローズ・ジャーニーは、ハリウッド映画にも多数採用されている類型で、ヒットを生み出す法則などと呼ばれることもあるらしい。

 詳しくは各自でググってもらえれば詳しい説明がすぐに見つかるはずだけれど、かいつまんで説明すると、ヒーローズ・ジャーニーの物語とは、『主人公が非日常の世界へ旅立ち、試練をクリアして、報酬と共に日常へ帰還する』お話なのだという。
 
 これを物語の本質なのだと仮定すれば、日本神話もスターウォーズも、桃太郎も君の名はも千と千尋も、本質的にはすべて同じだということになる。
 確かにそうした視点で見れば、これらの物語は似た構造を持っていることになる。
 
 もちろん、ヒーローズ・ジャーニーは数多くある物語類型の中のひとつにすぎないので、これに当てはまらない物語もあるし、他の類型で分類した方が適切な場合もあるだろう。あくまでこれは、物語のひとつの本質にすぎない。

 ところで、最近気づいたのだけれど、牛丼と寿司は本質的に同じものなのだと思う。
 
 どちらも料理であり、米の上に動物タンパク質を乗せて、塩気のある液体によって味付けして食べる。この点で言えば、二つの料理はほぼ同じものだと言える。
 あるいは、米を炭水化物にまで分解すれば、ハンバーガーも同じものだと考えることもできる。
 
 だが、寿司は高級品ぶって日本が誇るジャパニーズカルチャーみたいな顔をしているのに、一方で牛丼の方は、いかにも安価でファストな、THE男メシという扱いを受けている。
 一体この差はなんなのだろうか。
 
 僕はまだその答えをまだ見つけられていないが、少なくとも牛丼はもっと怒っても良いと思う。
 
 あるいは、もしかすると回転寿司の誕生は、寿司と牛丼の地位を釣り合わせようとする牛丼陣営の苦肉の策だったのかもしれない。
 
 

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