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【雑文】海の広さを知る人よ

 
 何日か前にツイッターのトレンドに「P-MODEL」が入っていた。
 P-MODELというのは、もう20年ほど前に活動を休止した伝説的音楽グループなのだけれど、なぜそれが今更話題になっているのか、と驚いた。
 
 詳しく見てみると、それはアイマスというゲームのとあるキャラクタが歌う曲の話題だったのだけれど、その曲がP-MODELっぽいということのようだった。
 それをみて僕は、ああ、こういう展開の広がり方もあるんだな、とそんな新鮮な気持ちになった。
 
 アイマス自体は知っている。といっても僕自身はゲームをプレイしたことは殆どない。
 フォロワーさんが話題にしていたりするので、軽く漏れ聞こえてくる情報を見聞きするくらいで、特定のキャラがどんな性格をしているのかとか、誰と誰がどんな関係性を持っているかとか、そんなことはあまり知らない。
 
 それがこうして、P-MODELを通じて異なる文化圏が混じっている様は、なんだか面白いな、と思う。

 オタクの用語で、特定ジャンルにはまり込んだ状態を「沼にハマる」と言う。あるいは、そのジャンルそのもののことを端的に「〇〇沼」と呼んだりする。
 趣味に夢中になって抜け出せない様子を、底なし沼に入り込んでそこから抜け出せない様に例えた言葉だ。
 
 だが僕の考えでは、この世には「沼」と呼ぶよりは「海」と呼んだ方が適当なものも多いような気がする。
 
 僕が感じている限りでは、古くは東方プロジェクトが海だった。今なら、上にもあげたアイマスと、最近ではVtuber界隈が海だと思う。
 つまりそれは、近づく前からその界隈の広さがわかりきってしまうので、安易には漕ぎ出せないような類のものだ。
 
 沼は、遠くから見てもおおよその広さが予想できたりする。
 だからものによっては、怖いもの見たさでそこに足を浸してみようという気になることもある。
 中にはそうして気軽に踏み出した結果、ただの沼だと思ったものが、沼の底で他の沼と複雑につながって巨大な地底湖を形成していたりすることもあるのだけれど。
 
 広大なオタクの世界に漕ぎ出してみれば、きっとそこには楽しい水平線が広がっているのだろう。
 
 けれど僕には、それが恐ろしい。
 一度漕ぎ出したが最後、遭難して永遠に返ってこられない、というケースはいかにもありそうなことだ。
 
 オタクは昔から、キモイキモイと揶揄されがちな存在だ。
 だが、海に生きる彼らは、水平線の彼方を目指す冒険者だ。自ら望んでそこへ漕ぎ出した、その勇気には経緯を評するべきだと思う。
 
 もっとも、海水浴をしていたら離岸流に流されて沖から帰れなくなった人もいるだろうけれど。
 
 彼らはいつか未知なる楽園にたどり着けるだろうか。そうなることを、心から祈っている。
 
 
 

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