雑文:魔法を信じ続けるかい?
マジックが好きだ。
マジックとはもちろん手品のことである。演技を見ることも好きだし、自分で演技を練習することも同じくらい楽しい。
中でも僕が一番好きなのはクロースアップのカードマジックだ。華麗な手つきでカードを操るマジシャンの姿には憧れを抱いてしまう。
僕も一時期は熱心にマジックを練習していたから一通りの演技はできるようになったけれど、持ち前の不器用さと堪え性の無さのせいで、憧れたマジシャンたちのレベルになることは出来なかった。
マジックとは、言葉通りの意味ならば、魔法のことである。
その言葉通り、手品ではおおよそ常識では考えられないような不思議な現象が起こる。
持っていたはずのカードが消えたかと思えば、また何もない空間から出現する。伏せられたカードの中身を予言し、相手が引いたカードを見もせずに当ててしまう。
マジシャンの華麗な手さばきも相まって、まさに魔法にかけられたような気持ちになる。
僕は自分でも教則本を買って練習をしていたので、マジックのタネは普通の人よりは知っているつもりである。バラエティ番組でマジシャンが演技をしていても、なんとなくタネがつかめたりもする。
世の中には、マジックにおいて重要なのはタネそのものであり、タネを知ってしまえばマジックの面白みは無くなってしまうと考えるひとがいるようである。
だが僕は、タネを知っていることと、マジックを楽しむことは全く矛盾しないと思う。むしろタネを知っているからこそ、予想を軽々と超える現象に驚き、それを可能にするマジシャンの技術に敬意を抱いてしまう。
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マジック界には、サーストンの三原則という言葉がある。マジシャンの心得を端的に表した名言だ。
1.マジックを演じる前に現象を説明してはいけない。
2.同じマジックを2度繰り返してはいけない。
3.マジックのタネを明かしてはいけない。
マジシャンならばマジックのみで観客を楽しませるべきで、そのために最大限の努力をするべきだと思う。
演技前に「これからカードが消えて、また出てきます」などと説明してしまえば新鮮な驚きが無くなってしまう。2度繰り返すのも同じことだ。
そして同じように、タネを明かすことも観客の驚きを奪うことになる。
だがこの原則の3番は、正直に言えば現代においては守られることは少ない。
youtubeなどでマジック動画を探せば、すぐさまタネの解説動画に行き当たってしまう。
マジック界には、そのような解説動画を批判する向きもあるそうだ。三原則に違反しているのだから、その気持ちはわかる。
僕もわざわざその手の動画を見ることはない。だが、世の中に解説動画があること自体は、別に構わないと思う。
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魔術、魔導、呪術、精霊力など、呼称は様々だが、ゲームや漫画の世界には魔法と呼ばれる技法が頻出する。
作品によって原理はいろいろにあるだろうが、大きく分けて魔法は、2系統に分別されると私は思う。
ひとつは杖や指輪といった魔法のアイテムを利用して魔法を起こす方法。
もうひとつは、自身の内にある魔力といった力を行使して、スキルとしての魔法を起こす方法。
僕はマジックにおいても同じことが言えると思う。
タネを知るということは、前者。一方で、一流のマジシャンが演じるマジックは、後者だ。
あえて強い言い方をするならば、前者の方法はアイテムの力を借りているだけで、それは自身の力ではない。
杖が無くなればもう魔法を使うことは出来ない。それでは本当の意味で魔法を使えているとは言えない。
一流のマジシャンは磨き上げた技術で不思議を起こす。それはタネを知ったところで容易に真似できるものではないし、感動が無くなるわけでもない。
魔法はどこまでいっても、マジシャンが起こすもの。
だからこそ、マジックは面白いのだと思う。
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