【雑文】睡眠について考える

 
 人間をことさら高尚な存在だと考えるつもりはないが、生物としてみたとき、人間はかなり複雑に進化した種族なのだと思う。
 ミジンコやミドリムシとは比べるべくもないが、哺乳類から類人猿、そして人類へと着実に進化を重ねてきたわけで、進化を重ねるたびに生物として洗練されてきたはずである。
 
 だが、そんな進化生物であるところのホモサピエンスにも、まだまだ納得がいかないなと思うことは多い。

 まず思い浮かぶのは「睡眠」についてだ。
 
 睡眠は脳を休めるために必須の機能ではあるのだろうけれど、その間は無防備を晒すことになるわけで、野生の世界では致命的なはずだ。だから生物たちは様々な方法でその危機を回避しようとする。
 
 有名なものでは、マグロは生涯泳ぎ続けるということが知られている。マグロは特殊な呼吸法をしているので、泳ぎ続けていないと窒息してしまうからだ。だから完全に眠ることはなく、代謝を小さくしてゆっくり泳ぐことで休息の代わりとしているのだという。
 他にも、渡り鳥の中には熟睡をしながら飛び続けることができるものがいるという。それどころか、数百キロの飛行の間一度も眠らない鳥もいるそうだ。
 
 人間も、どうしてそうできないのか。
 毎日決まったルートで会社と自宅の間を往復しているのだから、その間くらい眠りながらでも自動的に通うようにできるべきではないか。
 現状の僕たちでも、深酒をしたとき意識はまるでないのに無事自宅にたどり着けていたりする。そうであれば、同じく意識がなくても通勤くらいはこなせるべきだと思う。
 
 あるいは、どうしても現状の形で眠らないといけないとすれば、意識のON/OFFスイッチを搭載しておくべきではないかと思う。
 寝ようと決意した瞬間に即座に入眠できて、あらかじめ決めておいた時間で自動的に目覚める。寝ぼけることもないし、起きた瞬間から全力で活動ができる。外敵があらわれたり、不測の事態が起こった際にはすぐ覚醒することができる機能も必要だろう。
 
 ここ最近、昼間はとても暖かくなって、車の運転中に眠くなることも多い。
 もし上に書いたようなことができれば、仕事中にウトウトしてくることもない。船を漕いでいて先生に怒られることも、居眠り運転もなくなるだろう。
 
 きっと、これほど睡眠について問題を抱えている生物は人間くらいのものではないだろうか。
 無防備に眠ることも珍しいし、不眠症や過眠症といった睡眠障害を抱く動物は多分野生の世界にはいないだろう。

 そういえば特定の生物の中には、半球睡眠という方法を取っているものもいるらしい。
 
 半球睡眠とは呼んで字のごとく、左右の脳を片方ずつ順番に眠らせる睡眠法のことだ。そうした生物の脳波を測定すると、片側は睡眠状態なのに、もう片側は覚醒状態になっているのだとか。もちろんその間も身体は活動しつづけている。
 
 せっかく脳が左右に分かれているのだから非常に合理的な方法だと思う。パフォーマンスは半分になるかもしれないが、いちいち無防備を晒すこともないのだから生存率も上がるだろう。
 とはいえ、僕たちは高度な知能を有する人間だ。そう易々と知能が半分の無様な姿を見せるわけにもいかない。
 
 ではどうするか。
 僕が思うに、答えはPCの世界にあると思う。
 
 PCの頭脳と言えばCPUなのだけれど、現行の技術では一定水準以上の性能を実装することはできないらしい。
 そのため最近のPCでは、性能を上げるために複数のCPU(のコア)を並列に繋いで処理をするという方法をとっている。
 
 1つで足りないなら2つ。2つで足りないなら4つ。それでも足りないなら、もっと増やせばいい。
 
 今の人間は左脳と右脳の2つだが、もし脳を4つに増やすことができたなら、半分を眠らせていてもパフォーマンスは今の状態を維持できる。
 
 
 もし今後人類に進化が訪れるときがきたら、この辺りをもう少し考えたデザインにしてもらえたらと思う。
 つまり脳が4つに分かれた、クワッドコア人間こそが、未来人の姿なのかもしれない。
 
 

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