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【雑文】マジカル・ゴッドハンド

 
 僕の仕事は営業職で、基本的には車で客先を回ることが多い。だが最近は、コロナウイルスの影響もあって、あまり外回りができないので、デスクワークをしている時間が増えているように思う。
 
 そのせいなのかどうなのかは分からないけれど、最近たまに肩が痛むことがある。肩から首にかけて筋肉が突っ張ったような感じがして、可動域が狭まったように感じるのだ。
 
 座り姿勢に気を付けていたり、たまに思い出したようにストレッチをしたりすると改善されるので、今のところ大した問題にはなっていないのだけれど、これまで僕は肩こりというものを経験したことが無かったので、これが肩こりか、と少し新鮮な思いをしている。

 人生において、マッサージ店的なものに行ったことは一度しかない。
 何が理由だったのかはもう忘れてしまったのだけれど、以前腰とふとももにかけて激しい筋肉痛に襲われたことがあった。階段の上り下りすら満足にできないありさまで、少しでもマシになればと思ってマッサージに行くことにしたのだ。
 
 街にはマッサージ店があふれている。整体整骨、鍼灸、タイ式、中国式にスポーツストレッチ ,etc...
 見渡す限りこの世には多種多様なマッサージ店がある。
 
 中にはマッサージ店の体をとって性的なサービスを行うお店もあるのだろうけれど、そうでない健全な店でも、ちょっと大きめの街にいけばいくらでも見つけることができる。
 しかもそのどれもが似たような文言で、「首肩腰の痛みは当院にお任せ!」みたいなことを言っていて、その手の店を未経験な僕からしたら、一体どこがどう違うんだよ! と余計に戸惑ってしまう。
 
 結局そのときはどこに行けばいいのかわからなくて、30分1980円みたいなファストフードマッサージに行ったのだけれど、特に効果が感じられないまま、一度行ったきり放っておいたら自然に痛みが無くなっていた。
だから今でも、マッサージの効果は実感できていないままだ。

 筋肉をほぐすようなマッサージや整体はまだなんとなくわかる。姿勢やストレスによって筋肉が凝り固まることはあるだろう。それを押したり揉んだりして解すことで回復を促す、というのは納得感がある。
 
 だがその一方で、針やお灸やツボ押しといった施術は、本当に効果があるのかとどうしても思ってしまう。
 肩や腰といった広範囲の不調が、そんなピンポイントな部分をどうこうしただけで変わるのだろうか? と。あるいは漫画によくありそうな表現だけれど、ゴッドハンド的なマッサージ師が、とあるツボを押すだけで痛みが劇的に消えた、というような演出を見た時にも同じ気持ちを抱く。
 
 僕が思うのは、その施術によって痛みが無くなったり回復したりしているわけではなくて、実際には「痛くない感じ」にしているだけではないのか、ということだ。
 
 つまり針やお灸は、痛みを伝える神経を的確に麻痺させて、痛く感じないようにしているだけではないだろうか。
 施術を受けた後、患者は痛みが消えたことを喜んで、普段通りの生活に戻っていく。
 けれど依然身体は痛みを訴え続けていて、それなのに神経はその警告を受け取ることができないのだとしたら……。
 マッサージには、揉み返しというものがあるらしい。もしかするとそれは、身体を騙した副作用が現れてきたものなのかもしれない
 
 決してこうした施術がインチキだ、と言う気はないが、いまいち信用しきれていない自分がいる。これを払拭するには、自分自身で効果を実感してみる他ないのだろう。
 
 
 

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